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第4話 ④

 私が降り立った東京駅の場所は日本橋口と呼ばれるところで、高い高層ビルが四方を囲むようなところだ。


 正直、こんなに高いビルを実際に見るのは、初めてですごく戸惑ってる。


「ここが、東京」


「ほらほら、照子、気を取られてないで、行きましょ」

 私が呆然と立ち尽くしていると、葵ちゃんが私に声をかけてくる。


「葵ちゃん」


「照子、驚くのも無理はないけど、先を急ぎましょ」


「うん!! そうだね」


 私は葵ちゃんの後をついていく。


 私と葵ちゃんは東京駅と書かれた大きな看板がある建物に入っていく。


 建物の中に入ると、待ち合わせ場所なのだろうか。

 そこには、大きな空間が広がっていた。


 すぐ前を見ると、東海道・山陽新幹線のりば・日本橋口と書かれている表示が目に入る。


 ここから新幹線に乗れるのだろうか。


 すると、葵ちゃんはその表示の下にある通路を歩いていく。


 私も葵ちゃんの後に続く。


 通路の横にはお土産屋さんやコンビニ、スイーツのお店などが立ち並ぶ。


 ふと、私は自分の周囲を見ると、サラリーマンやお年寄り、外国の人、いろんな人が各々の目的地を目指しているようだった。


「葵ちゃん、人、多いね」


「そう? まだまだこんなものじゃないわよ」


 えっ、どういう意味だろう? 確かに東京駅のこの人の多さは、私の村に比べて多いのは分かっていたけど、まだまだこんなものじゃないって。


 私は、この葵ちゃんの言葉の意味を知ることになる。


 私と葵ちゃんが歩いていると、突然、葵ちゃんが足を止めた。


「照子、手を繋いでくれる?」


「えっ!? いいけど。どうかしたの?」


「ここから人がさらに多くなるから。はぐれないようにと思って」


「さらに人が多い?」


「そう、向こうを見て」


 葵ちゃんが指差す方向を見ると、通路の通り道から横方向に人がどんどんと歩いているのが見える。

 確かに、葵ちゃんの言う通り、人が多そうだ。

 私がはぐれないように手を繋ごうとするのも分かる。


「あそこは、東京駅の北と南を繋げる北自由通路で、ここより人が多くなるの」


「大丈夫だよ、葵ちゃん。確かにさっきより人は多そうだけど、気をつけていれば問題ないって」


「そう、それならいいんだけど」


「なんなら、私が行って、私1人でも大丈夫か確かめてくるよ。それなら、葵ちゃんも安心でしょ」


「照子が言うなら、でも無理はしないでよ」


「もう葵ちゃん、大丈夫だって、じゃあ、いってきます——」


「あっ、照子!!」


 もう葵ちゃんは心配性だな。

 確かに人混みがすごそうだけど、私はタタリ神の大群だって対処できたんだよ。

 攻撃してくるタタリ神とは違って攻撃の意思のない普通の人が多くても大丈夫だよ。


 私はそう思いながら、意気揚々と中央通路に入る。

 早速、人混みに慣れてしまおうと思い、人々が次々と歩いてくる方向に目を向ける。


 あれ? あれれれ!?


 周りを見ると、人、人、人。

 私の目には人々がひっきりなしに次から次へと速歩きで歩く人々が目に入る。


 うそ、うそ、嘘、嘘!!

 タタリ神の大群よりも多い。


 それにタタリ神なら私に対して攻撃の意志があるのが分かるから対応しやすいけど、今歩いてきている人達は私のことなんて一切気にしない。


 戸惑っている私をすらりも避けて速歩きで目的地を目指していく。


 さらに、人混みばかりかと思えば、突然、人がない空間ができたり、横方向や斜め方向に人が現れる。


 私は常に変わる状況に対応できない。


 これが東京。


 私はこの未知の世界に圧倒されていた。


 でも、いつまでも道の真ん中にいて、人に迷惑をかけてしまうのは、申し訳ない。

 早く、邪魔にならないところに移動しないと。


 私が移動しようと思った束の間、突然、人が現れる。


 じゃあ、別の方向に。


 そう思うと、また別の方向から人が。


 なら、また別の方向に。

 それでも、また人が現れる。


 どうしよう、あれ?

 さっきの場所に空間が。

 そう思った瞬間、また人が。


「すみません、すみません」


 私は近くを通る人に軽く頭を下げながら、謝ってしまう。


 うわあ——ん、どうしよう、葵ちゃんに大丈夫って言っちゃったよ。早く、早く抜け出したいのに。


「だっ、誰か、助けて!!」


 私は思わずに叫んでしまう。


「照子!!」

 すると、突然、葵ちゃんの声が私のすぐそばに聞こえてきたのだ。


「葵ちゃん!!」

 私は思わず、葵ちゃんの両手を掴んでいた。


「照子、こっち」

 葵ちゃんは私の手を引きながら、私を人混みの少ないところに向かいながら、歩いて行く。


「あっ、ありがとう、葵ちゃん」


「照子、良かったわ、なんともなくて。ごめんなさい、私が照子にちゃんと伝えておけば良かったのに」


「うんうん、元はと言えば、私が飛び出して行っちゃったんだし。でも」


「でも?」


「私、さっきので絶対、田舎者だと思われたよ」


「大丈夫よ、照子。みんな、先を急いでいるし、そこまで気にしていないわ」


「そうなんだけど、私が気にするの。叫んじゃったし」


「助けを呼べるだけでも上出来よ。それに見てほしいところのがあるの」


「見てほしいところ?」


「こっちよ」


 私は葵ちゃんに手を引かれながら、歩いて行く。


 私は葵ちゃんに手を引かれて行くと、ある場所に着いていた。


「えっ!?」


 私の目に入ってきた景色。


 それは、8本の柱に支えられた八角形のドーム状の建物の天井だった。


 まるで現代から一気に明治・大正の世界にタイムスリップしたみたい。


「ここって」


「そう、ここは丸の内北口改札。まさに東京駅といえばこの景色よね」


「ありがとう、葵ちゃん」


「まだお礼を言うのは早いわ。こっち」


 私は葵ちゃんに誘われる形で、葵ちゃんの後に続いて、東京駅の外に出る。


 すると、東京駅の姿が私の目の前に広がっていた。


 東京駅の建物は、私が見ていた八角形のドームとさらにもう2つのドームの計3つから構成されていて、非常に大きな駅だ。


 特に東京駅の外観で、印象的なのは、朱色でできた赤レンガで、壁いっぱいに敷き詰められている。


 これが今より100年前にあったと言うのだから、驚きだ。


「すごい、すごいよ!!これが東京。本当に来て良かった」

 私は東京に来れたことに感激していた。


「照子、はしゃぐ気持ちは分かるけど、東京に来た目的は忘れてない?」


「大丈夫。忘れてないよ。服を買いに行くことと手紙を届けることだよね」


「その通り。じゃあ、その目的の1つを達成するために、あそこに行きましょ」


 葵ちゃんはどこかを指差す。


 私は葵ちゃんの指差した先を見ると、そこには東京駅とは対照的な白い外観をしたビルが目に入る。


 あのビルこそ、私と葵ちゃんが服を買いに行くお店があるビルだ。


「それもそうだね」

私は葵ちゃんに同意し、すぐにそのビルに向かうことに。


 私と葵ちゃんは、ビルの中に入り、目的のお店を目指して、エスカレーターに乗る。


何階かのビルのフロアを登ったあとに、その目的のお店があった。


店内はというと、すごくおしゃれな内装をしていて、10代の女の子や若い女性向けの服が多くあった。


「照子、まずは、今の季節にあったコーデで選んでいこうかしら」

葵ちゃんが右肩を回しながら、私に話しかけてくれた。


「うん、お願い、葵ちゃん。私、ファッションに疎くて」


「別にいいわよ、いつも美味しいご飯作ってくれているんだし。それに私も照子のためになることしてあげたいから」


「ありがとう、葵ちゃん」


すると、葵ちゃんはすぐに店内ある服を選んでいく。


葵ちゃんが選んできた服は、ロゴのない真っ白なTシャツと明るいベージュ色のスカート、薄ピンクのカーディガンの3つ。


「まずは、こんな感じかしら。照子、これを試着してきて」


「うん」

私はすぐに試着室で着替え後、カーテンを開ける。


「どう? 葵ちゃん」


「っ!?」


葵ちゃんは私を見て、なぜかドギマギと少し赤面しながら、うろたえる。


「葵ちゃん?」


「やっぱり、私の目に狂いはなかったみたいね。この服を買いましょう。それとお金は私におごらせてくれるかしら?」

葵ちゃんは軽くうなずきながら、そう口にする。


「えっ!? いいよ、そんな。葵ちゃん、無理しなくても」


「うんうん、いいの。むしろ、私が照子に着てほしいの。だから、おごられて」


「葵ちゃんがそう言ってくれるならいいけど」


「他にも何着か試してみましょ」


「そうだね」


そして、私と葵ちゃんは何着か服を試着してから、服を購入することに。


ちなみに、葵ちゃんが私に似合うと言ってくれた服は、試着が終わった後、そのまま着ることになった。


「いっぱい買ったね」


「そうね。ついでにコートも買っておきたかったけど、冬にはまだ早いし。もう少し季節が進んでもいいんじゃない」


「それにしても、これだけ多いと両手が塞がっちゃうよ」


「照子、私が持つわ」


「えっ!? いいよ。葵ちゃんも両手塞がっちゃてるんだし」


「それは大丈夫。いいから、貸して」

 私は葵ちゃんに言われるがまま、紙袋を手渡す。



 そう言うと、葵ちゃんは通路の角に移動する。

 どうしたのだろう。


「照子、私の隣に立ってくれる」


「うっ、うん、分かった」

 私は言われるがまま、葵ちゃんの隣に立つ。


「よし、誰もいないわね」


 葵ちゃんは周囲を見渡して、そう口にすると。


「八咫鏡」

 葵ちゃんは小さな声でそう呟くと、円を描くように指を動かす。

 すると、葵ちゃんが指でなぞったところから何やら空間のようなものが現れる。

 そして、そのまま、葵ちゃんは買い物袋たちをそのままその空間に入れてしまったのだ。


「えっ!? 葵ちゃん、今、何やったの?」


「何って、八咫鏡の中に買い物袋を入れただけだけど?」

 葵ちゃんは私が戸惑っている姿に少し意外そうな表情になっていた。


「ちょっと待って、八咫鏡の中に入れたってどういうこと?」

 私は葵ちゃんが言っている言葉の意味がわからず聞き返してしまう。


「あっ、そうだった、ごめんなさい。照子に伝え忘れてしまっていたわね。なんて言えばいいんだろう。八咫鏡がある世界に買い物袋を保管したといえばいいかしら。私達、巫女が持っている力というのは、本来、私達が住んでいる現実世界とは別の世界にあるの」


「へえ——」


「その巫女の力をその別の世界から持ってきて具現化させた時に、始めて私なら水になったり、照子なら、炎になったりするの」


「そうなんだ。私、力を使う時、そんな感覚なかったよ」


「まだ慣れが必要じゃないかしら。照子もそのうち照子の力が保管されている世界を認識できると思うわ。それに私、照子の前で八咫鏡の保管していたもの出していたわよ」


「えっ! いつ、やったの?」


「ほらバスに乗っていた時、ポッキー出したでしょ。あの時よ。スマホや財布もそこに入れているわ」


「そうだったの!? そういえば、葵ちゃんカバンなんて一切持ってなかったよね。そんなカラクリだったんだ」


「でも、なんでもかんでも入れられないの。八咫鏡に入れたものの重さをそのまま体で肩代わりにしたいといけない。だから、八咫鏡に入れるものは軽いものか自分の力で運べるものしか入れていないの」


「便利なところだけじゃないんだね」


「そうなの。重すぎると体力使っちゃうからね。でも買い物袋程度なら問題はないわ。それにこの通り、両手も空いて便利でしょ」

 葵ちゃんは私に空いた両手を見せながら、自信満々に言ってみせる。


 確かにすごく便利だと思う。

 だけど、それとは裏腹に私はある思いが出てきてしまう。


「なんか私、葵ちゃんが片付け苦手な理由分かった気がするよ」


「えっ、なんで!?」

 葵ちゃんは私の反応の理由に気づいていないみたいだった。


「もうそういうところだよ、葵ちゃん」


「えっ!? え————」

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