第4話 ②
「いいよ、2人で東京に行っても」
「本当にいいんですか!?」
私は、千鶴さんが快く承諾してくれたことに、思わず感嘆の声を上げてしまう。
「うん。2人とも頑張ってくれていたからね」
「ほら私の言った通りでしょ」
葵ちゃんは嬉しそうに私の耳元に小声で呟く。
「うん、良かったよ」
私も葵ちゃんに笑いかけた。
カレーを食べた次の日の朝、私と葵ちゃんは千鶴さんに東京に行く許可を取るために、千鶴さんと話をしていた。
「でも、いいんですか? 千鶴さんにひなたのことを頼んでも」
「いいよ、いいよ。気にしないで、楽しんでおいでよ。それに、遊んでおける時に、遊んでおかないと、イザミとの戦いでみんな、どうなるか分からないんだからさ」
「確かに、そうですね」
葵ちゃんは千鶴さんの言葉に同意する。
「東京のどこに行くの?」
「高速バスで東京駅に行ってから、東京駅近くで服を買いに行こうと思っています。買い物の後は、東京電波塔を見に行こうかと」
「東京電波塔か。それなら、東京電波塔に行くついでに、私からの頼み事聞いてくれるかな」
「いいですよ、何ですか?」
「この手紙を東京電波塔の近くにあるお寺に届けてほしいんだ」
「手紙?」
「ちょっとね。郵便で出すと、足が着いちゃうんだよね。葵から聞いたけど、偵察用のタタリ神がいるみたいだし。情報漏洩を防ぐためにも、直接届けてほしいんだよね」
「分かりました。絶対に届けますね。ちなみに手紙にはなんの手紙なんですか?」
「ごめんね、照子ちゃんや葵に言えないんだ」
千鶴さんは両手を合わせながら、少し申し訳無さそうな表情でそう言った。
「私にも言えないんですか?」
すると、葵ちゃんは千鶴さんに問いかけ始めた。
「うん、ごめんね、葵。それだけ大事な手紙なの」
「そうですか。それは責任重大ですね」
葵ちゃんは少し難しそうな表情になってしまう。
「千鶴さん、そんな大切な手紙を私が預かって大丈夫なんですか?」
私は千鶴さんに問いかける。
「大丈夫だよ、照子ちゃん。君は十分強いよ。それを見込んで頼んでいるんだから」
「照子、心配しなくても私がついているわ」
すると、葵ちゃんも私に励ましの言葉を言ってくれた。
「少し不安ですけど、2人がそう言ってくれるなら、私やります」
「ありがとう、照子ちゃん。それはそうと。照子ちゃん、スマホ持ってなかったよね。この際だから、照子ちゃんもスマホ持とうよ」
「スマホですか!?」
「そう、スマホ。葵と一緒に東京に出かけるんだったら、通信手段がないと困るよ。お金のことなら、私が出すからさ。まあ——、政府から情報漏洩を防ぐために、選べるスマホの種類は少ないことと、スマホの情報が定期的に政府に見られちゃうことがあるんだよね」
「情報を見られる」
私は千鶴さんの話す事実に少し呆気にとられてしまう。
正直に言うと、私はプライバシーを誰かに見られてしまうのは、少し抵抗感があったからだ。
「どうしてもね、私達の行動を政府が把握しておきたいみたいだからね。スマホで誰かとやり取りする時は、誰かに見られているっていう意識は持っていて」
「はい」
「正直に言うと、常に誰かにスマホでのやり取りまで見られるのは気持ち悪いでしょ。だから、どうしても見られたくないことは、この手紙みたいなアナログな方法が多くなっちゃうんだよね」
「工夫しているんですね」
「うん。で、どうする照子ちゃん? スマホが見られちゃうのが嫌なら無理とは言わないけど」
「そうですね。でも、スマホがあれば、いろいろと便利ですし、それに千鶴さんもいろいろと対策しているみたいですから、私もスマホ持ちます」
「オッケー、いい返事」
「それと千鶴さん。スマホのお金の件なんですが、このスマホのお金は私が払います」
「もうー、気を使わなくてもいいのに。でも、わかったよ、照子ちゃん。スマホ代は照子ちゃんのお給料から天引きしておくね」
「はい、お願いします」
「じゃあー、この中から選んで」
千鶴さんは私にカタログのようなものを見せてくれた。
カタログに写っていたのは、青色と赤色、白色のスマホだった。
「どれにする?」
「じゃあー、赤色にします」
「赤色ね、照子ちゃんにピッタリだ」
「確かに照子とピッタリですね」
「2人にそう言ってもらえるとなんだか嬉しいです」
「じゃあ、東京に行く前にスマホ用意しておくね。照子ちゃん、東京にはいつ行くのかな?」
「来週あたりに行きます」
「分かった。すぐに用意するね」
「ありがとうございます」
「気にしないで。照子ちゃんのためなら、なんだってしてあげるよ。千鶴さんに任せなさい」
「お願いしますよ、千鶴さん」
葵ちゃんは千鶴さんに話しかける。
「心配しなさんな」
千鶴さんは右手を胸の方に当てながら、自信満々にそう言った。
その後、すぐ私にスマホが届く。
私にとって生まれて初めてのスマホ。
正直に言うと、私は携帯電話すら持ったことなかったから、使い方がそこまで詳しくはない。
葵ちゃんに色々と教わりながら、スマホをマスターしていこう。
ということで、私は葵ちゃんと一緒に簡単なスマホの使い方を教えてもらっていた。
初めてスマホを手にして真っ先に思ったことは。
「四角くて、うすい」
「ふふ、そうね」
「ちょっと、葵ちゃん、笑わないでよ」
「ごめん、ごめん。つい照子の反応が面白くて」
「も——、私、真剣なんですけど」
でも、葵ちゃんがそう思うのも仕方ないかもしれない。
もしテレビがない時代の人がこの時代のテレビを見れば、私みたいな反応をしてもおかしくない。
私はスマホをよく見てみる。
スマホには電話と違って、ボタンというものがない。
どうやって、使うんだろう。
よく見てみると、スマホの側面にボタンのようなものがある。
電源ボタンだろうか。
試しにボタンを押してみる。
ボタンが押されると同時に、画面が光って画面に鍵のようなものが写し出される。
私はその鍵のボタンを押すと、突然、スマホのホーム画面が現れる。
「画面が変わった!!」
恐る恐る私は、スマホの画面に指を当てて、そのまま滑られる。
すると、スマホの画面は私の指に反応して、画面が滑らかに切り替わっていったのだ。
「すごい!! どうやって、反応してるんだろう?」
「ふふ、照子が楽しいそうでなりよりだわ」
葵ちゃんは私の興味津々な反応になんだか嬉しそうだった。
「照子、私のスマホの連絡先交換しましょうか」
「うん、葵ちゃん」
「じゃあ、右上にある四角い緑のアイコンを押してみて」
「うん」
「そうそう、その調子。そうしたら、ここにあるQRコードのボタンを押して。私に見せて」
私は葵ちゃんの言う通りの場所にあるボタンを押すと、白黒の斑点でできた四角いマークを葵ちゃんに見せる。
「OKね。じゃあ、私のスマホの画面に照子のスマホを近づけて来て」
「こう?」
私は葵ちゃんに近づく。
すると、私は自分の肩に葵ちゃんの肩に触れ合ってしまう。
「てっ、照子!?」
葵ちゃんが突然のことにビックリした声を上げてしまう。
「あっ!? ごめん、葵ちゃん。大丈夫?」
「うん、気にしないで、照子。ちょっと、驚いただけだから」
そう葵ちゃんは言ったが、なぜか葵ちゃんの頬が赤くなっていた。
「葵ちゃん、顔、赤いよ」
「えっえっ!! そうかしら」
「うん、赤くなってる。熱であるんじゃ」
「大丈夫、熱はないから。私、気が動転しちゃったのかしら」
葵ちゃんはすごく慌てた様子を見せていた。
「それならいいけど」
「あっ!! 見てみて、照子の連絡先、私のスマホに登録できたみたい」
葵ちゃんは私にスマホの画面を見せてくる。
無事に登録できたみたいだ。
「本当だ。これなら、葵ちゃんと連絡できるね」
「ふふ、そうね。あとは基本的な操作を教えていくわ」
「うん、お願いします」
そのあと、私はスマホの基本的な操作を葵ちゃんに教えてもらった。
これで、どこかで葵ちゃんと離れてしまっても、連絡がとれる。
そんなこともあったあと、私は東京に行く日の朝を迎えていた。




