旅立ち①
ソウルが孤児院のみんなのところへ向かうと、悲鳴が上がった。
「く、くるな化け物!」
「呪われる!」
「で、でていけよ!」
ソウルは一瞬混乱する。だが、すぐに状況が理解できた。
原因はソウルに目覚めた【召喚魔法】だ。
召喚魔法は生命を作り出すという神をも恐れぬ禁術、呪われた魔法だと伝えられている。その使い手も既にいなくなったと言われていた。
今の孤児院の子どもたちにはソウルが「孤児院の仲間」ではなく、「呪われた魔法使い」として映っているのだろう。
「ま、待てよ……俺は……!」
そう言ってソウルは近くの子どもの肩に手をやる。その子どもは「ひいっ」と怯えた悲鳴をあげた。
「…………あ」
たまらず、ソウルは肩に乗せた手をどける。
恐怖はすぐに周りの子ども達に伝染し、ソウルを見る彼らの目は残酷なほど冷たかった。
そうだ……。おれは何をやっているんだ。
硬く手を握りながらソウルは顔を伏せた。
ガストを守ることもできなかったおれが、こいつらに合わせる顔なんかない。何が騎士だ……何がみんなを守るだ!
1番守りたかったはずのガストすらも守れないおれが、何を偉そうに宣っていたんだ!
消えちまえ!こんなおれなんか!ガストを殺したのはおれだ!
「ま、待ってよ!ソウル兄!」
そんな声が聞こえたような気がしたがその声は今のソウルには届かない。
もう、ここにはいられない。
ソウルは孤児院を飛び出して夜の村を走る。
ガストと共に歩いていた時とは違い、辺りがひどく暗く感じる。
もう、帰れない。このまま村を出るしかないと思った。
獣に喰われるかも知れない。盗賊に捕まり、売られるかも知れない。もうそれでも、構わない。
ガストを目の前で死なせた。大切な人を、手の届く距離にいたはずなのに死なせてしまった。その事実がソウルの心を完全にへし折っていた。
こんな自分を消し去ってくれと心で叫びながら村の外へ飛び出した。