行き着く先は……
ソウルは宿屋に着くと気さくな店主へと話しかける。
「おーい、おやっさん。一部屋余ってないか?」
「あー?おめえさんもう部屋は貸してやったろ?」
「いや、もう1人おれの連れが泊まれないかなって思って」
ソウルはシーナの方に視線を向けた。
シーナは深くフードを被り、髪と目を隠している。
「姉ちゃん、顔を見せな」
すると、気さくだった店主が険しい視線で告げる。
「悪い、おやっさん。こいつちょっと訳ありで」
ドキリとしたソウルが仲裁に入ろうとする。しかし、店主は譲らなかった。
「だからだよ。面倒事に巻き込まれるのはごめんだからな」
「……分かった」
しばしの沈黙の後、シーナはフードをとる。そしてフードの奥から綺麗な銀髪と深紅の瞳が現れた。
「そうか、おめえさん。【ジャガーノート】の」
店主は納得したように頷く。
「すまんが、他を当たってくれ」
「待てよ!別にこいつは何も……」
「……邪魔した」
ソウルは食ってかかるが、シーナはまた深くフードを被り宿を出ようとする。
「いや、おかしいだろ!シーナは何もしてねぇじゃねぇか!なんで門前払いされなきゃならねぇんだよ!!」
「兄ちゃん、おれにも家族がいるし生活がかかってるんだ。少しでも危険があるやつを置いときたくないんだよ」
「そんな……!」
シーナが何かしたのなら仕方がないかもしれない。でも、ただジャガーノートだってだけで門前払いされるのか?
そんな理不尽ないだろう。
「別に、慣れてる」
ところが、シーナは分かっていたかのようにそう言うと、踵を返して店を出ていった。
何でお前も何も言わないんだよ……!
どこか寂しそうなシーナの背中を見てソウルは胸が痛くなった。
「そうかよ、分かったよ!」
だったら、もういい!ソウルは八つ当たり気味にバァンとカウンターを叩いて店を飛び出し、シーナを追いかけた。
ーーーーーーー
「なんで着いてくるの?」
シーナは歩を緩めることなく尋ねてくる。
「別に。1人にしておけねぇと思っただけだよ」
ソウルは苛立ちながらぶっきらぼうに答えた。
「納得いかねぇよ。おめえが何かした訳でもないのに、女の子を1人で夜の街に追いやるなんて」
「あの人は当たり前のことをしただけ」
シーナはまるでいつもの事と言わんばかりに淡々と告げる。
「シーナ.......」
一体、これまでどんな人生を送ってきたのだろう。その小さな背中にどれ程重いものを背負っているのだろうと思うと胸が苦しくなった。
「早くどっか行きなよ」
シーナはソウルに告げる。その声はまるで氷のように冷たかった。
「いや、このままほっとけねえよ」
だが、ソウルも譲らない。ここまできたら何がなんでもシーナに野宿なんかさせてやるものか。
「本気で嫌なんだけど」
「さて、どうしたものか」
シーナの言葉は聞こえないフリをして夜の街を歩く。
宿を手当たり次第回るにしても、シーナにあんな一方的に拒絶されるような思いをさせたくない。
となれば、事情を分かってくれそうな知り合いにお願いするのが1番穏便だろうか。
だが、ソウルは今朝この街についたのだ。知り合いなどほとんどいないし、いてもその所在までは分からなかった。
ある1人を除いては。
「………………」
ソウルの頭を褐色の店主がよぎる。というか、それ以外に今所在がわかる知り合いがいない。
「ダメもとで行ってみるか」
「勝手に決めないで」
うんざりした様子のシーナだったが、それでも彼女は黙ってソウルについてくる。
もうすでに閉店の札がかかった店の戸を叩くと、の片付けをしていたマルコが出てきてくれた。
「あらぁ?ソウルちゃん、なにか忘れ物?」
「あー、実はその、折り入ってお願いが……」
「あら、なぁに?もしかして私に惚れた!?」
「断じて違う」
乙女のように目を光らせるマルコにソウルは即答で否定すると早速本題に入る。
「じ、実は……」
そしてソウルはシーナを店へ招き入れる。
「……あらまぁ」
マルコはそれで全てを察したようだった。




