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試験を終えて

 ソウルは見慣れないベッドの上で目を覚ました。


 周りはカーテンで囲まれており、外の様子は伺えないが試験に来たであろう人の声が聞こえる。恐らく医務室か何かだろう。


 勝利を得たものの、身体中引き裂かれているらしい。体を動かすたび全身に激痛が走る。


 だが、それよりも勝利の余韻がまだ尾を引いていた。


「よし、やってやったぞ」


 ソウルは布団の中でガッツポーズをとる。十分力は示したはず。これでついに俺も騎士に……。


「ええ、やってくれましたね。大怪我を」


 すると、突然女性の声が聞こえ、ソウルはびくっとする。


 見ると、そこには茶色い髪に白いバンダナ.......先程の受付嬢がカーテンを開けて立っていた。


「全く、あんな無茶な戦い方をするなんて、命がいくつあっても足りませんよ。もっと自分を大切にしてください」


 彼女はそう言って傍の椅子に腰かける。


「いやぁ……でも、ああしないと勝てる気がしなくて」


 ソウルは困ったように頭をガシガシとかく。悔しいがあれ以外にルシアスに勝つ手段が見つからなかった。


「そんな戦い方だとすぐに死んでしまいますっ」


 しかし受付嬢は指を立ててピシャリと言う。


「あなたがたくさん長生きして、そしてたくさんの人を救ってあげた方が世の中の人は助かるんじゃありませんか?」


「うぐっ」


 その通りだと、ソウルは素直に思った。


「すいません……今後は気をつけます」


 ソウルは肩を落としながら謝る。


 受付嬢はその反応が意外だったのか目を丸くしてソウルを見つめ、やがて優しく微笑んだ。


「全く、しょうがない人ですね。」


 そう言うと、彼女はソウルの手を握った。


「え、いや、あの!?」


 ソウルは慌てて赤面していると受付嬢はそっと目を閉じて詠唱を始めた。


「【地霊】のマナ……【アースキュア】」


 優しい光がソウルを包み込む。そしてソウルは体の痛みが和らいでいくのを感じた。


「これって」


 ソウルはこの感覚に覚えがあった。6年前に幼なじみの少女が怪我をしたソウルによくかけてくれた優しい力の波動に似ている。


「……私の魔法です」


 受付嬢はそっと目を開くとソウルの手を離した。


「本当は隠してるんですけど、ソウルさんにならいいかなって。みんなには内緒ですよ?」


 そう言って彼女は悪戯っぽくソウルにウインクする。その可愛らしい様子にソウルは気恥ずかしくなって目を逸らす。


「さっきの仕返しです」


「な、なんのこと?」


「なんでもありませんっ」


 受付嬢はプイっとそっぽを向いてしまった。


 そしてしばし沈黙。お互いに自然と笑いがこみ上げてくる。


「私、オリビアって言います」


「おれはソウル.......ってもう知ってるか」


 あははと笑いながらソウルも答える。


「よく城の方に働きに出てるんで、見かけたら声をかけてください」


 オリビアはそう言うとカーテンを開けた。


「いくら私がいるからって、自分を大事にしない人には魔法をかけてあげませんからね?」


 カーテンから顔だけ覗かせたオリビアはジト目でソウルに忠告する。


「き、気をつけるよ」


「よろしい」


 笑顔になったオリビアはそのままどこかへと出ていった。


 ソウルは再びゴロリと横になると疲れた体を投げ出してそのまま目を閉じるのだった。

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