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プロローグ

 ピンクの花に染まる山を見つめる青年がそこにいた。


 盗賊のような服装に身を包み、その上から黒いマントを被った青年は6年の修行の日々を思い出す。


「これで、最後……か」


「なに湿っぽくなってんだ。ガキ」


「い、いい加減ガキって言うのはやめろって言ってんだろ!?」


 18歳になったソウルはシナツに文句を言う。


「ったく、弟子の門出だってのにこの師匠は...」


「なぁにが弟子だ。勝手に6年金魚の糞みたいにくっついてきただけだろうが」


「誰が金魚の糞だ!?」


 何度も繰り返したくだらない言い合いをする。が、やがて2人でケラケラ笑い出した。


「ったく、これで最後だってのによ。相変わらずすぎるだろ」


「いいんだよ、こんなもんで」


 そう言ってシナツはこちらに向きなおる。


「おら。ここまで見送ってやったんだ。後は好きに行きな」


「分かったよ。ったく、ほんとに最後の最後まで……」


 そうぶつぶつと文句を言いながらソウルは13年前に魔導霊祭で訪れたイーリスト国の首都ウィストリアに向かって歩き始める。


「あー、ソウル」


 すると、珍しく歯切れの悪い口調でシナツが呼び止めてきた。


「今度はなんだよ」


 ソウルが振り返ると何かが飛んできた。


 飛んできた物体を受け止める。見てみるとそれはシナツの黒剣だった。


「え?」


 ソウルは目が点になる。


「持ってけ。選別だ」


 シナツは向こうを向きながら言った。


「で、でも、これ大事なもんじゃ.......」


 これはシナツが寝る時も肌身離さず身につけていた大切な物だったはず。


「いいから持ってけ。この6年の餞別だよ。それに、おれが持つよりおめえが持ってた方がいいだろうからな」


 ソウルが持っていた方がいいという理由はよく分からなかったが、シナツに認められたような気がして目頭が熱くなる。


「師匠!!」


 そしてソウルは叫び、頭を下げた。



「6年間、育ててくれて、ありがとうございました!!!!」



 そしてソウルはこらえていた涙が溢れて止まらなくなる。


「あー、るっせぇなぁ!とっとと行けよ!!!」


 シナツは叫ぶ。その声は少しうわずっていた。


 それだけで、シナツの気持ちが伝わった。いや6年間、ずっとそばにいてくれたのだ。それだけで全て分かる。


「いつか、騎士になったおれを見に来てくれよな!!」


 そう言ってソウルはウィストリアへと駆けだす。これ以上、ここにいたら進めなくなってしまいそうだったから。



「ソウル!」



 背中からシナツの声が聞こえる。



「おめぇと過ごした6年、退屈じゃあなかったよ!」



 ソウルは振り返ったが、もうそこにシナツの姿はなかった。


ーーーーーーー


「あーったくよ」


 シナツは空を見上げる。


 まさかこの自分がまた召喚術士を育てることになるとは思わなかった。


 だが、ソウルとの生活は悪くない日々だったとも思う。


「あいつになら、託してもいいのかも知れねぇな」


 シナツは晴渡る空を仰ぎながらそうつぶやくのだった。

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