表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/21

 20 呼ばれてないやつー



 昨日、2025年の年の暮れに、ちょっとうれしいことがありました。


 Xでもご報告しましたが…… なんと!?


 WIN5が、初めて当たりましたーー!! パチパチパチー!


 WIN5(ウインファイブ)とは、JRA(日本中央競馬会)が行っている重勝式馬券の一つです。


 指定された5つのレースすべてで、1着になる馬を当てると的中となります。


 つまり、5レース連続で勝ち馬を的中させなければならないという、非常に難易度の高い馬券です。

 

 的中者が少ないほど払戻金額は大きくなり、数百万円から数千万円…… いえいえ、過去には数億円の払戻金もたびたび出ております。まさに夢の馬券です!


 今回私が当てた金額は28万円ほどで、億とかと比べれば小さな金額でしたが、それでも初めての的中でしたので嬉しかったです。



 

 話は変わりますが、みなさま、奈良県にある神社で、正式名称を「天河大辨財天社」、一般には「天河神社」と呼ばれている神社をご存じでしょうか。


 その天河神社は、芸能や音楽の神として知られる弁才天を祀る古社で、多くの芸術家や表現者が訪れる場所です。

 山深い吉野の地にひっそりと佇みながらも、不思議と心を澄ませるような清らかな空気が流れています。


 そして、この神社には、こんな言い伝えがあります。



 天河は、呼ばれた者しか行けない神社…… 



「ゴゴゴゴ……」(ジョジョ風効果音)




 山々を越えた先にあるその社へは、思い立ってすぐに行けるような場所ではありません。道中の天候や予定が不思議と整ったり、逆に、何度も行こうとして行けなかったり。そんな経験をする人が多いことから、神様に呼ばれた者だけが辿り着けると言われるようになったそうです。


 もっとも、それは昔の話で、いまでは道も整備され、車でも容易に行けるようになりました。けれど、この呼ばれる(・・・・)という感覚は、今も多くの人の心に残っています。


 私も以前から天河神社を訪れてみたいと思っており、どうせ行くならその言い伝えにならって、呼ばれた(・・・・)と感じた時に行こうと決めていました。




 それは、今年、2025年の7月のことでした。

 

 私は当時、会社との関係があまりうまくいかず、仕事を辞めようかどうか悩んでいました。さらに、数日前にはクレジットカードが不正利用されそうになり、急きょ利用停止に。おまけにメールまで乗っ取られてしまい、本当に踏んだり蹴ったりの時期でした。


 そんな折、ちょうどまとまった休みを取れることになりました。もちろん、有給休暇です。


 気分転換を兼ねて、どこか近場へ旅行でも行こうかと考えました。


 そのとき、頭に真っ先に浮かんだのは天河神社でした。

 

 以前からずっとずっと訪れてみたいと思っていた場所です。


 けれど、当時は退職の可能性も視野に入れており、先々の生活を思うと、どうしても贅沢はできませんでした。旅費や宿泊費を考えると、今は控えるべきかもしれない。そんな思いが、私の背中をそっと引き止めていました。


 それでもせっかくの休日です。何か、心を少し軽くすることをしたくて、私は、趣味で続けている競馬でもとネットで遊んでいました。


 といっても、高額な賭けができるわけではありません。

せいぜい一口は100円から1000円ほど。GIの時で、ようやく1万円ていどです。

 1〜2レースを買うか、WIN5を少し楽しむ程度の、ささやかなものです。


 その日、私は3連単(1着・2着・3着をすべて当てる馬券)のBOXを購入しました。


 BOXというのは、選んだ複数の馬の着順の並び順を問わず、その中で1〜3着に入れば当たりになる買い方です。

 たとえば3頭の馬を選べば、その3頭がどの順番でゴールしても的中となります。

 

 私は、その3連単を一口100円で購入しました。3頭を選んでBOXで買うと6通りの組み合わせになりますので、全部で600円の購入です。


 その日は横になりながら、なんとなく気だるい気持ちのまま、スマートフォンで競馬中継を眺めていました。すると、ゴール前の直線で、私が選んだ3頭が先頭争いをしていることに気付いたのです。


「あ、あれ……」


 思わず、心の中で声が漏れました。


 そのまま3頭は並ぶようにしてゴールへ。

 結果を確認すると、私の買っていた3連単が、見事に的中していました。


 ちなみに、この3頭を選んだ理由ですが、それは名前です。


 はい。戦績のデータも、展開予想も、いっさい見ていませんでした。


 ただ、なんとなく心に引っかかった名前だけで選んだ3頭が、そのまま一着から三着までを占めたのです。


 その時の配当は8万円ほど。


 大金とは言えないかもしれません。それでも、当時の私にとっては、胸の奥に静かに灯がともるような出来事でした。


 そして私は、ふとこう感じてしまったのです。


「こ、これは…… 天河神社に呼ばれているのではないか!?」と。


 今になって振り返れば「いや、なんでやねん!?」と、突っ込みたくもなります。


 けれど当時の私は、どうしても天河神社へ行きたくてたまらず、会社とのトラブルで休みを取ることになり、しかも何気なく名前だけで選んだ馬券が的中した。


 その出来事が一本の線でつながったように思えたのです。

 ああ、これはきっと呼ばれているのだ、と。


 そう感じたあとの私は、自分でも驚くほど行動が早かったのです。


 まず近くのオートバックスへ行き、車の簡単な点検をお願いしました。

 その待ち時間のあいだに、スマホで往復の高速料金を調べ、宿泊先のホテルまで予約してしまっていました。


 車はオイル交換をしてもらい、その他に問題はありませんでした。私はいったん家に戻ると、必要な荷物を手早くまとめ、車に乗り込みました。馴染みのガソリンスタンドでガソリンを満タンにし、いよいよ高速道路へ向かったのです。


 車の運転があまり得意ではない私は、緊張しながらハンドルを握り続けました。

 それでもどうにか走り続け、数時間後には大阪に到着しました。大阪は以前住んでいたこともあり、友人もいて、土地勘も多少はあります。


 ですが、そもそもその当時は車を使っていなかったので、高速道路のジャンクションを走った経験など、友人の車を私が運転して一度か二度ある程度でした。複雑に入り組んだ道路網は、まるで迷宮のように感じられました。カーナビがなければ、間違いなく迷子になっていたことでしょう。


 私は高速道路を湊町で降り、そのまま南堀江にある友人宅へ向かいました。

 せっかくなので驚かせてみようと思い、事前の連絡はしていません(笑)


 オートロックのインターホンを押すと、モニターに映った私の姿を見て、すぐに声が返ってきました。


「えっ、あんた!? なんでおるん!?」


 モニター越しに友人の驚いた声が響きました。その声を聞きながら、私はひとり得意げに笑っておりました。


 その友人の職業はキャバクラで働く、いわゆるキャバ嬢です。見た目も私とは正反対で、とてもとても華やかな雰囲気の女性です。


「えー、あんた何してんの?」


「いや〜、実は仕事を辞めようか悩んでて……」


「辞め辞め。うちの店においで」


「できるかー!」


 そんな冗談をかわしているうちに、胸の中の重たいものが少しずつ溶けていくのを感じました。


 その後、私は友人を誘い、久しぶりの大阪の街を一緒に歩いて回りました。


「どこ行きたいん?」


「串カツ♪ 551♪ たっこ焼きぃ♪」


「食いもんばっかりやん!」


 そんな他愛もない会話をしながら、大阪らしい味と空気を満喫しました。大変楽しい時間を過ごしたあと、友人と別れ、私は予約していた奈良のホテルへ車で向かいました。


 そしてその夜、ベッドに横になっていると、ふと不安が押し寄せてきました。

 

 本当に、呼ばれているのだろうか。

 ちゃんと辿り着けるのだろうか。


 そんな思いが、静かに胸の中に浮かんできたのです。



 明くる日……


 泊まったホテルから天河神社までは、車で1時間かかります。


 7時30分からの朝拝(ちょうはい)に参加する為、余裕をもって6時前にはホテルを出ました。


 山道ではありますが、道路はきれいに整備されており、中央線のある片側一車線の道でした。工事用のダンプカーが多く走っていて、運転に不慣れでスピードの出ない私は、急いでいるダンプカーにあおり運転をされながら進むことになりました。


 後ろからダンプカーが迫ってくるたびに路肩へ寄せて先に行かせ、そんなことを何度も繰り返しながら走っていました。ナビを確認して「もうそろそろ着く頃だな」と思っていたのですが、走っても走っても目的地に到着しません。


 さすがにおかしいと感じて、いったん路肩に車を止め、ナビを確認しました。すると、天河神社はとっくに通り過ぎていたのです!


「いやいやいや、ナビ! 何してたの!?」


 思わず、そんな言葉が口をついて出ました。これは本当の出来事で、きちんと天河神社をセットしていたにもかかわらず、ナビはまったく別の場所へと案内していたのです。


 そのとき、私はつぶやきました。


「ちょっと待って。カーナビがバグるなんて…… あ、これ、呼ばれてないわ。私の勘違いだったわ」と。


 先にも書きましたが、天河神社は芸能や音楽の神として知られる弁才天を祀る古社です。そんな神様に、私のような者が呼ばれるはずもない。そう思うと、急に自分がとんだ勘違い野郎のように思えて、自然と笑いが込み上げてきました。


 エンジンをかけたまま路肩に停車している車の中で笑っている女……


 我ながら、なかなかの狂気です。誰にも見られていなかったことを、心から願います。



 当然ここまで来て引き返すわけにはいきません。(……結果的にはUターンなので、引き返してはいるのですが)


 もう一度ナビをセットし直し、煽り運転のダンプカーなんて気にもせず天河神社を目指しました。


 道はほぼ一本道です。どうやら私は、バグったナビの指示に従うあまり、入り口を見逃してしまっていたようでした。そこで今度は、ナビだけに頼らず、自分の目でもしっかりと確認しながら走ることにしました。


 しばらく進むと、目の前に赤い欄干の橋が現れました。


「ここじゃないのかな?」


 そう思って近くの看板を見ると、そこには間違いなく天河神社の文字がありました。


 やったー! 着いた。やっと着いた! 呼ばれてなんかいなかったけれど、それでも押しかけて来てやったわ!


 そんな言葉を、私は心の中で叫んでいました。


 橋を渡ったあと、そろそろと車を進めていくと、駐車場を見つけました。そこへ車を止めた瞬間、安堵のため息が自然とこぼれました。


「ふぅー」



 まだ開始までは余裕があったので、まずは神社の周囲を散策して回りました。とても美しい場所で、天河神社の道向かいにある来迎院の境内には、空海がお手植えしたと伝えられている、樹齢1200年を超える大きな銀杏の木があります。たいへん雄大で、その姿を見ていると、不思議と心が癒やされました。


 そして、天河神社やその周辺には、一目でクリエイターや芸能人だと分かるような装いの方々が、数人いらっしゃいました。


 むむ。この人たちは、私とは違って本当に(・・・)呼ばれた人なのかな。なんとなくオーラ(イフト)を感じる…… なんて思ってました。

 

 そうした方々と、軽くあいさつなどを交わしているうちに、やがて開始の時刻が近づいてきたので、私は本殿へと向かい、朝拝に参加させていただきました。


 静かな空気の中で祝詞が奏上され、参列者それぞれが静かに頭を垂れていました。


 その厳かなひとときは、日常の喧騒から遠く離れた、心がすっと澄み渡っていくような体験でした。



 その後、朝拝の余韻に浸りながら、もう一度周囲を散策し、おみくじやお守りなどを授与所でいただいてから、天河神社を後にしました。


 そして、せっかく奈良県まで来たのだからと、明日香村にも足を延ばしました。のどかな田園風景が広がるこの地域は、地元の方々によって古い景観が今も守られている場所で、どこか時間がゆっくりと流れているように感じられます。その景色を楽しみながら散策し、石舞台古墳やキトラ古墳も巡ってから、帰路に就きました。


 一泊二日の強行日程。大変な冒険でしたが、とても楽しい旅でした。

  

 余談ですが、ホテルの近くでちらし寿司を買ったのですが、これまで食べた中でいちばん美味しいと感じました。あまりの美味しさに、奈良を離れる前にも、わざわざ立ち寄って買って帰ったほどです。

 

 残念だったのは、東大寺で鹿をなでなでしたかったのですが、時間の都合で立ち寄れなかったことです。


 天河神社に呼ばれたわけではなかったのかもしれませんが、奈良県には、また必ず訪れたいと思っています。


 そして、あの日の静かな記憶は、今も心のどこかに温かく残っています。



 ……と、綺麗に締めくくりたいところなのですが。


 私昨日、WIN5が当たった後に、2025年の競馬の収支を計算してみました。


 すると…… マイナス2万飛んで500えーん。


 はいチーン……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ