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 19 三毛猫がやってきた



 みなさま、ごぶさたしております。


 いすぱるです。


 年末、いかがお過ごしでしょうか。

 私はイブの日に、今年も同じ型でケーキを焼きました。

 手慣れているはずだったのですが…… 


 はい、失敗でした。


 食感がぼっそぼそ……


 おかしいな~。どこで何を間違ったのかな……


 まぁ、ケーキは失敗してしまいましたが、鳥足などは美味しく焼けましたし、シチューも大変美味しかったです。

 

 さて最近、私はXで猫の写真を載せています。

 写っているのは、引っ越し先の近所を縄張りにしている三毛猫ちゃん。

 避妊手術後の印で、耳が少しカットされています。


 新しい家には畑が付いていましたが、まさか猫まで付いてくるとは、夢にも思っていませんでした。


 この子がもう、とてもかわいいのです。


 いえ、正確にはこう言うべきでしょう。


「かわいくてたまりませんでした」


 と言っても、心配はいりません。今も、ベッドの真ん中で気持ちよさそうに寝ています。

 

 ところでみなさま、猫ってみんなこんな感じなんでしょうか?


 

 というわけで、三毛ちゃんとの出会いを少しお話ししますね。


 この三毛ちゃんとの出会いは、私が引っ越してきて1週間ぐらいでしょうか。近くの水路からホースで畑に引く水を準備している時でした。

 作業をしている私の背後から「ニャーニャニャニャーニャニャーニャニャー」と、最後まで一度も途切れない大変長~い鳴き声が聞こえてきました。


 驚いて振り向くと、そこには三毛猫ちゃんがおりました。

 姿勢を低くして、困ったような仕草をしておりました。


 まるで「あなたは誰なの? どうしてここにいるの?」

と語りかけているようでした。


 以前のマンションの近くにも地域猫が沢山いまして、私は大変可愛がっておりました。その地域猫と別れたばかりで憔悴していた私は、嬉しくて当然その三毛猫ちゃんに話しかけました。


「どうしたの? こっちにおいで」


 ですが三毛猫ちゃんは、ミャミャーとまるで何かを訴えるように鳴くばかりで、全く近づいてきてくれません。


 しばらく見つめ合っていましたが、三毛猫ちゃんは私から離れていきました。


 せめて…… せめて一撫ででもしたいと思った私は、後をつけて行きました。


 すると、私が後をつけてきているのを知った三毛猫ちゃんは、振り向いて近づいて来る私を確認すると、尻尾を何倍にも膨らませて、全力で走って逃げたのです。


 追いかけましたが、とても追いつくようなスピードではありませんでした。


 でも、どうやら家の敷地は縄張りの一部らしく、ときどき姿を見せてくれていました。


 そんなある日のこと。


 庭の手入れをしていると、三毛ちゃんが4メートルほど先に姿を見せました。


 ち、近い…… こんなに近いのは、初めて会った時以来だ。


「み、ミーちゃん。おいで」


 そう優しく声をかけましたが、三毛猫ちゃんはまだ警戒しているようで、こちらをじっと見つめています。


 うむむ、何度も会ってるのにまだそんな敵意を持った目で私を……

 

 ちょっとしょんぼりしつつ、私はこの時のために忍ばせていた秘密兵器を、ゆっくり取り出しました。

 

 それは……


「ちゅ~る~」(ドラえもん風)


 そうなんです。三毛猫ちゃんと仲良くなりたかった私は、いつもちゅ〜るをポケットに忍ばせていたのです。


 私が手にした秘密兵器ちゅ~るを、三毛猫ちゃんはじっと見つめていました。


 むむ、これはいける!


「ミーちゃん。ちゅ~るだよ」


 そう声をかけながら、アピールするようにちゅ〜るを軽く振ってみました。


 ですが、それでも三毛猫は離れてしまいました。


  

 ちゅ、ちゅ~るでも…… ダメなのか……



 この時の私は、(ゼロ)でも決定的なダメージを与えることができなかったネテロのような気持ちでした。(ハンター×ハンター)


 そう思ったその時です。いつもなら走って逃げる三毛猫ちゃんが、少し離れた場所から、まだこちらを見ていたのです。


 私は、思い切ってちゅ〜るを開ける動作を、少し大げさに見せてみました。


 すると、三毛猫ちゃんの目がきらりと輝き、上を向いて鼻を小さくひくひくと動かしていました。



 むむむ、こ、これは……



 私は、開けたちゅ〜るの中身を、地面にポタポタと落としてみました。


 そして、そろそろと後ろへ下がります。


 次の瞬間。


 三毛猫ちゃんは、ちゅ〜るを落とした場所へ一直線。

 

 まるで、カイトを見つけたネフェルピトーのような勢いで飛んで来たのです。(ハンター×ハンター)


 地面のちゅ〜るを舐め終えると、なんということでしょう。


 今度は私の方へまっすぐ近づいてきて、足に頭をぐいっと押し付け、「ニャーニャー」と甘えてきたのです。


 あれほど私を拒絶していた三毛猫が、こうもあっさりと……


 この時、私は思いました。


 ちゅ〜る、恐るべし! と……


 もうね、かわいくてかわいくて、三毛猫ちゃんの毛がすべて抜け落ちるぐらい撫でました。



 それからというもの、三毛猫ちゃんは、毎日のように私に声をかけてくれるようになりました。


 畑で作業していると、そっと忍び寄り、背後からお腰に頭をすりすり。

 はじめの頃は本気でドキッとして「ち、痴漢…!?」なんて思ったこともありましたが、今ではそれも嬉しい日課になっています。


 時が過ぎ、季節はどんどん寒くなっていきました。

 

 そしてついには、深夜や明け方には氷点下になるほどの寒さになりました。


 三毛猫ちゃんは毛並みもつやつやで、お腹もぽってり。

 地域猫ということもあって、ごはんには困っていないようです。


 ただ、寒さが厳しくなるにつれて、私は気になっていました。


 この子、どこで眠っているんだろう?


 ある早朝、私のところへやって来た三毛猫ちゃんに触れてみると、体はすっかり冷え切っていました。

 しかも、体のあちこちにもみ殻がたくさん付いていたのです。


 どうやら、農作業用の倉庫で眠っているようなのです。


 不憫に思った私は、せめて寒い冬のあいだだけでも、家で寝かせてあげようと決心しました。

 大家さんにも連絡して、きちんと許可をいただきました。 

 そして、トイレも用意して、準備万端です。


 家に入れてあげると、三毛猫ちゃんは「ミャー、ミャー」と、まるで嬉しさを報告するかのように鳴いていました。

 それから、キョロキョロとあたりを見回し、鼻をクンクン。時間をかけて家の中を歩き回ります。縁側から私の部屋、廊下、押し入れ、トイレまで。さらには、なんとお風呂の湯船の中まで確認していました。


 そのあいだ、私は微笑みながら、そっと後をついて回りました。


 そして、すべての確認を終えると、三毛猫ちゃんは私のベッドへぴょんっと飛び乗り、毛布に体をすり寄せ、そのまま満足そうに眠りについたのです。


 なんという、なんという愛らしさ…… 

 

 完全に私のKO負けです。



 動物は大好きなのですが、これまでずっとマンション住まいでしたし、転勤であちこち引っ越す生活だったため、ペットを飼うことはできませんでした。


 だからこそ、こうして三毛猫ちゃんが家で眠ってくれることが、とても嬉しかったのです。


 仕事を辞めてまで、引っ越してきて良かった……


 三毛猫ちゃんの幸せな寝顔を見ながら、私はそう実感してました。



 ええ、この時まではね……



 というのも、この三毛猫ちゃん。


 深夜になるとむくりと起き上がり、氷点下の寒さの中「外に出る!」と言って聞かないのです。


「ミャー、ミャミャミャー!」(外に出るぞ、さっさと開けろ!)


 と、凄い音量で鳴きはじめるのです。 


 私が無視をしていると、「ミャー!」(開けないなら、こうだ!)と言わんばかりに、ふすまをバリバリと引っかき始めます。


「やめてー、借家なのにー!」


 はい、毎晩です。(深夜0時から3時頃)


 たまらず寝ぼけたまま、ふすまと窓を開けても、三毛猫ちゃんは何かを警戒してすぐには出ていきません。


「寒いから出ていくなら早く出てー」と言っても、顔だけ出して左右をギョロギョロ。


 なかなか出て行ってくれません。その間、私は寒さで震えています。


「ミャ~」(よし、クリアだな!)


 しばらくして、そう確認してからぴょんっと外へ飛び出していきます。


 ふぅー、これでやっとゆっくり眠れると思ったのもつかの間。


 1、2時間後、戻ってきて外から「ミャー! ミャミャー!!」(戻ったぞ! 開けろ!)


 そして網戸をバリバリバリ!



 いやいやいや、まてい! 酒飲んで深夜に帰宅してきた昭和の亭主か!? 



 熟睡してても、その大きな鳴き声と音でびっくりして飛び起きてしまいます。


 酷い日は、これを何度も繰り返します。深夜から朝にかけて、一晩中です。


 はい。私、毎日寝不足です。生活リズムは、すっかり崩壊しました。


 とても人懐っこくて、かわいい三毛猫ちゃん。だけど、私はここでひとつ確信しました。


 今まで誰もこの子を家に迎えられなかった理由を。


 おそらく、これまでも、どなたかが三毛猫ちゃんを家に入れてあげたことがあったのでしょう。

 その証拠に、ストーブなどにもすっかり慣れています。


 ですが、深夜の大騒ぎ。

 これがどうにもならなかったのだと思います。


 昼間、家に入れてあげると、私の足元でゴロンと寝転がり「ミャ~」(モフれや~)と甘えてきます。かわいくて自然と目が潤みます。


 ただひとつ、とんでもなく酒癖の悪い昭和の亭主属性を兼ね備えていたのです。


 みなさま、猫って、普通はもっと落ち着いているんですよね?

 ……ですよね?


 もし世の猫が全員このタイプだったら、可愛いどころの話じゃなくて、誰も飼えなくなってしまいますよね。


 冬のあいだ、夜だけでも面倒を見ると決めたので、いまさら追い出すのもかわいそうです。


 そんなわけで、私 vs 三毛猫ちゃんの深夜攻防戦、現在も絶賛継続中です。


  




 本年も残りわずかとなりました。

 年末のお忙しい中、お時間を割いて読んでくださり、ありがとうございます。

 日々の出来事や感じたことを文章にし、皆様と共有できることが、いつも大きな励みになっています。


 ここでひとつ、お詫びさせてください。

「オタヤン」の掲載が遅れており、楽しみにしてくださっている皆様には、ご心配をおかけしております。物語としてきちんとお届けできる形に整えたいと思い、少しお時間をいただいております。どうか温かく見守っていただけましたら嬉しく思います。


 新作の読み切り「僕の彼女は……」を公開しています。一話完結ではありますが、心を込めて書きました。お時間がありましたら、ぜひこちらも読んでいただけると、とても励みになります。


 来年も、日々の出来事や物語を丁寧に綴っていけたらと思っています。

 どうぞ、これからもよろしくお願いいたします。

 

 皆さまにとって、穏やかで温かな新年となりますよう、お祈り申し上げます。



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