表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/81

9.妹カシコスギル

 昨日は虹子の初ダンジョン探索に付き添っただけでなんの収穫も無かったが、それは紗由にとって好都合だったらしく、徹夜明けの妹は朝からテンションが高く上機嫌だった。


「おにい、昨日は結構いいデータが取れたよ。

 明日からでも使えるけど遠征でぶっつけになっちゃうかな」


「でも虹子が入ったから記録に保険掛けられるし、もしもがあっても平気じゃないか?

 それとも完成度に自信がないとか?」


「あ、そうだ、こっちから電気ショック流せるようにするの忘れてた」


「っと、紗由は天才だから完成度低いものなんて渡すわけないよな。

 慣れてないハードを俺がいきなり使いこなせるか心配してるってことだろ?

 うんうん、大丈夫だって、心配なしだぜ?」


「わかればよろしいノダ。

 新型のHMDRはさ、周辺地形をセンシングしてディジタル表示するんだよ?

 名付けて『Dungeon(ダンジョン) Landscape(風景) Simulator(シミュレーター)』って感じ。

 こっちのコントロールターミナルでデータを受信して3D表示するの」


「DLSなんて言って、Distorted(歪んだ) Love(愛の) Sister()じゃないのか?

 それにしたって3D表示は今でもやってるじゃないか。

 あれってモンスター戦闘のグロ画像とか他パーティーの素顔晒し対策だから標準機能だろ?」


「ノンノン、同じようでも大分違うんだから。

 公認含めた従来型は頭のカメラを使った一人称表示でしょ?

 表示も簡略化された味気ない描画だしさ。

 DLSは背後もスキャンするから三人称表示が可能なんだよ!

 つまり! 初期のダンジョン配信で人気だったアバター表示ができるってわけ。

 これなら大バズり間違いなし!」


「マジかよ! それはすごいな。

 量産にこぎつけられたら相当売れるんじゃないか!?」


 初期のダンジョン配信にはドローンによる中継が大人気で主流だったらしい。今でも過去動画が人気になるくらいである。だが狭い洞窟内に多数のドローンが飛び回り衝突や破損で揉めたり電波帯が混信したりとトラブルが多く、バッテリー継続時間も課題となって結局は規制が入ることになったのだ。


 現在もアバター配信をしている探索者はいるが、両手と下半身の一部がチラチラと映るくらいなので好評とは言えない。それがドローンなしで似たような構図が映せるなら確かに画期的である。


 そんなすごいものを開発してしまうなんて、紗由は本当に天才発明家だ。妹だからひいき目に見ているところがあるかもしれないが、身の回りで使うものからダンジョン探索に役立つものまで色々と作っては俺に持たせてくれている。


 以前は頭の出来を比べられる事もあったが、紗由がぶっちぎりで賢すぎることが判明してからは比較対象にあげてもらえることも無くなっていた。それはそれで少し寂しい気もするが、国内を見回しても紗由に匹敵するほどの天才はそうそういないだろう。


 その最大の理由、それはIQが高いのはもちろんだが、持って生まれた超能力による部分が大きい。なんと言っても紗由はかなりのレア能力である並列思考の持ち主なのだ。これは同時に二つのことを考えることができると言うものなのだが、紗由の場合はさらに拡張されており最大で四つの同時処理ができるらしい。


 この多列処理脳(マルチスレッド)が、紗由の高い知力を更に有効に使うことができている。つまりは脳を四つ同時に稼働させることができると言う事らしく、本人が言うには寝ている間にも二つは動いていてアレコレと考え続けているようだ。それでちゃんと睡眠がとれているのか心配になるが、逆に全部止めることが出来ず夢を見ることもないらしい。


 それでも今回の新型HMDR開発では多列脳をフル回転させているのだから、どれほどすごいものが出来たのか明らかだと言っても過言ではない。早く使ってみたくて胸を高鳴らせていたが、紗由はその直後にベッドへ入り、完全な熟睡モードへ入ってしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ