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61.ナゾのマネキン

 結局十四階層で出会ったワニが一番の大物で、その他はすべて雑魚モンスターという想定通りの探索となって指導にはちょうどいい難易度だった。環境が悪いわりにはビーコンの欠落もなく、この間の触手モンスターみたいな新種や不法投棄も見当たらなかった。


 指導探索なので配信はしていなかったが記録はもちろんとって有り、あとから編集して探索動画としてアップするのだが、今日ははっきり言って見せ場ゼロである。代わりに学生二人はいい働きをしたのだが、さすがにそれをメインで仕立てることは出来ない。


 紗由的にはきっと退屈で物足りないことだろうが、それが指導探索と言うものなんだから仕方ない。あれから約束通りオペレーターを引き受けてくれているだけでありがたいと言うものだった。帰り道の八階層まで来たところで、その紗由から緊急連絡が入った。


『全員警戒、通路の先十メートルに人型の検知反応有り!

 識別信号が出てないからね、注意レベル最大で!』


「シックス了解、二人とも俺の後ろへ下がって。

 セブンは鉄格子を先行して飛ばして様子見てくれ。

 トマトの熱検知網膜(サーモグラフィー)でも確認できてるか?」


「ごめんなさい、私の熱検知範囲は三メートルくらいなの。

 もう少し近くなったら確認してみる」


「それじゃまずは私の鉄格子を近くまで寄せてみるね。

 シックスも近寄ってみるの?」


「うん、鉄格子をゆっくり進めてくれ。

 俺はその後ろから着いていくからさ。

 二人はさらにその後ろから、十分注意しながら来てくれよな」


 うなづいた虹子は砂鉄でできた鉄格子状の物体を磁力で浮遊させながら進ませていく。俺はその後ろから同じ速度でついていき、さらにその後ろから二人が歩いていくと言う布陣だ。視界を覆うHMDRにはセンサで検知した簡易的な人型がMR(複合現実)表示されている。


 その人型が映されている通路の曲がり角が目視できる辺りまで歩いてくると、その岩肌には確かに『人型』が存在していた。


「こりゃなんだ? マネキン?

 生き物でも死体でもない、悪質ないたずらなのか?」


「シックス? そのマネキンみたいなのにびっしりとついているの……

 この間のあれ、埋まってたやつと一緒で錆びみたいだよ?」


 そういって虹子が能力を使ってそのマネキンをゆらゆらと動かした。さらに美菜実がサーモグラフィーで確認すると、そのマネキンの中には熱源があるらしく、人肌に近いくらいに熱を帯びていることがわかった。


「嫌がらせやいたずらにしては随分と手が込んでるなぁ。

 とりあえず現場はそのままにして特殊捜査官(いぬ)へ連絡入れておくか。

 周囲になにかおかしいことはないか警戒しながら上に戻ろう」


「「了解!」」


 地上まではあと少しの道のりだが気は抜けない。紗由には地形異常を警戒してもらいつつ、三人で周囲を警戒しながら無事にダンジョンを出ることが出来た。



「先生、今日はワニを狩ってきたんですけど、上質な皮が獲れましたよ。

 あと良かったら肉をおすそ分けしていきますね」


「おお、ありがとう。

 さてどれどれ、うむ、これは傷の少ない上質な素材だね。

 いい値段がつきそうだよ?」


「やっぱり良さそうですか! 相変わらず出費が多いので助かります。

 それはともかくなんですけど、さっき帰り道の八階層に悪質ないたずらがされてたんですよ」


 俺はそう切り出して顛末を報告した。もちろん捜査官へ連絡済なので、いずれ能技大講師へは周知があるだろうが、担当講師へは事前に知らせておくのが筋と言うものだ。いったいあれが何だったのかはわからないが、捜査結果が出れば先生経由で連絡が貰えるはずだし、全体周知が必要なくらいの大ごとならそれはそれで知らされるだろう。


 こうして報告を済ませた後、三人での探索は終わりを告げた。


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