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58.ミテルミテナイ

 予定通り火曜の夕方になって研究室で合流した俺たちは、美菜実を連れて帰宅することになった。家に帰りつくと当然のように紗由が待ち構えていたというか、監視カメラの人感センサで検知されたらしく先に声をかけられてしまった。


『おにいと理恵だけ入りなさい。

 虹子とトマトはそこで待つように』


 四つも年下の子供にこんなことを言われても、腹を立てず大人しく待っていようとするだけで悪い奴じゃないと思えるような気がするが、とにかく自分の感性しか信じない紗由にとっては何の判断材料にもならないようだ。


「二人ともおかえり。

 それじゃ理恵はこっちきてこのモニター見といて。

 トマトが映ってるのわかるよね?」


「トマトって美菜実おねえちゃん? 見えるよ。

 虹おねえちゃんも見える」


「虹子はどうでもいいの。

 それじゃトマトを見ている誰かがいるか確認してみて。

 いつも練習してるようにやってくれればいいんだからね」


 いつも練習? もしかして俺が探索へ出ている間に理恵の能力で何かをしているのか? その推測は当たっているようで、理恵は紗由の言葉に頷いてから目を閉じてわずかにうつむいた。俺が紗由へ目をやると、紗由は口に指を当てて黙っているようにという仕草をする。


「理恵、どう? 誰か見てる様子ある?

 もし何か感じたらすぐに教えるんだからね?」


「んとね、いま美菜実おねえちゃんを見てる人は虹おねえちゃんしかいないみたい。

 それもキョロキョロしてるからとぎれとぎれだけど」


「そっか、もういいよ、ありがと。

 ひとまず今は平気みたいだけど完全には安心できないし、少し泳がせておこうかな。

 おにいは完全に信用してるの?」


「完全にとは言い切れないから多少は疑ってる、隠してることがあるかもくらいかな。

 家系的に産業スパイが絡んでることは無さそうだけど、外部接触疑ったらキリがないしさ。

 かと言って俺個人に興味持つとも思えないよ」


「虹子が言うにはそれが全てって感じみたいじゃん?

 確かに高い戦闘力や派手な能力を持たないおにいを参考にってキモチは理解できるよ。

 あの子の能力はおにいと近いもんね」


「意外にもそんなに悪く言わないんだな。

 だったらなんでそんなに警戒してるんだ?

 理恵に何させたのかわかんないけど、なにかを調べたんだろ?」


「それはもう説明したでしょ?

 最初に偽って近づいてきたからだったば。

 明らかに裏がありますって言ってるようなもんじゃん!

 だからおにいや虹子に近づきつつ誰かがそれを監視してるか確認したの」


「ええっ!? 理恵はインターフォン越しでも能力使えんの?

 それで誰も美菜実さんのことを見張ってないことがわかったってことか」


「おにいのDLS-HMDRについてるリアカメラあるでしょ?

 あそこで撮ってる虹子をオペレーターモニタに映して試したら出来たっぽかったの。

 ダンジョン内からの送信映像でできるんだからインターフォンなんて余裕でしょ」


 なんかすごいことを考えるもんだ。本当にうまくできているのかどうかは理恵の申告次第だが、何度もテストして確認して信じられるだけの確信を得ているのだろう。賢いのか悪知恵なのか判断しづらいところだが、ひとまず美菜実への疑いが晴れたのなら良かった。


 だけどさっき紗由はおかしなことを言っていた。確か『泳がせておこう』だったか? つまり完全に信じたわけではなく、今後も監視を続けると言う意味で間違いない。


「そんでさ? 結局美菜実さんの指導はどうすりゃいいわけ?

 泳がせるってことは――」


「ちゃんとわかってるじゃん。

 見極めるには材料が足りないから継続ってこと。

 それでもいいならこれからもおにいが面倒見てあげなよ。

 完全に信用されてないのは嫌だっていうならバイバイね」


 そんな厳しい物言いに反論したい気もするのだが紗由の研究が盗まれでもしたら大ごとだし、そもそも俺は妹相手に強く反論できるほど肝が据わっていない。あとのことは虹子へ任せてしまおうかなどと情けないことを考えながら腕を組んで考え込んでいた。


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