47.オモワク
完全に消し炭となりつつある、未解明の植物型モンスターの死骸を見下ろして鎮火を待っていると美菜実が不思議そうに尋ねてきた。
「あ、あのシックス君? 今撃った銃って当たると爆発するの?
私はまだ銃火器の講義も実地練習も受けたこと無くて……」
「ああ、びっくりしちゃった?
これは普通の弾丸じゃなくて粉末水素弾って特殊なやつなんだよ。
普通の弾丸は金属弾を撃ちこむだけだけど、これは高燃焼剤が封入されているんだ。
着弾の衝撃で弾丸の中に入ってる粉末水素が爆発炎上するって仕組みなのさ」
「はあ、こう言うのも使えるようにならないといけないんですね。
私の能力が炎とか電撃とかだったら良かったのになぁ。
いつかはシックス君みたいな能力に頼らない戦闘できるようになりたいです」
「いやいや、トマトも十分凄いと思うよ。
トンファーはリーチが短いけど振り速度が早くて避けられにくいだろ?
俺の伸縮棍棒みたいにスタンガンを内蔵すると戦闘力が上がるからお勧めだよ。
そりゃ飛び道具よりは大変だけど、モンスターを殺すのが目的じゃないからね」
「なるほど、スタンガンですか。
そう言うのはどこで売ってるんでしょう、やっぱり手作りですか?」
「大学の装備開発課で相談すると手配してくれるはず。
俺のはイモウトが作ってくれたやつだけどね」
そんな話をしていたら、紗由が茶々を入れてきた。どうやらいらぬ心配を始めたようだ。
『おにい、その女の子もうちに入れるつもりなの?
白湯スープをハーレムにしたいの?
具無しじゃなくて豚汁みたいにしたいの?』
「何言ってんだよ…… 武装の相談してるだけじゃんか。
あんま変なこと言うなよ」
『今にもウチに作らせるって言いそうだからさ。
パーティーメンバーなら作ってあげてもいいけど、そうじゃないならマズいからね。
大学の規則に引っかかるんでしょ?
虹子のバックパックだってパーティー抜けたら返してもらわないとなんだよ?』
「大丈夫、忘れてないよ。
だから今は大学支給品でやってもらってるじゃんか」
『ならいいけどさ、くれぐれも注意しなよ?
それともし入れるならその前に相談するって約束して。
間違っても虹子を泣かせるような真似はダメ、許しません!』
「なにを許すとか許さないとかは知らねえけど、勝手にはしないよ。
俺だって戦力になるかどうかくらい見極めて声かけるに決まってるんだろ。
虹子は幼馴染で一緒に潜るって決めてたから特別だよ」
『いまウチはおにいにビンタしたくて仕方ないよ。
ほーんとそういうとこ、わかってるのにそーいうとこ、ダメダメだ』
「公私のけじめをきっちりつけてると言ってもらいたいもんだ。
パーティーなんて本当はあんまり仲良くないくらいが丁度いいんだからさ」
俺が正論で返すと紗由は無造作に通信を切ってしまった。あいつはどうしても俺と虹子をくっつけたくて仕方ないのだが、今よりも関係が近くなることを俺は望んでいない。そんな深い関係になってしまった場合、もしもの時に虹子が俺を見捨てられず、ダンジョン内で一緒に命を落とすなんてことになって欲しくないのだ。




