表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/81

44.ナゾのジョジ

 その幼児はマルリェと名乗った。見た目はまるっきり日本人だし、ダンジョンガス環境下で普通に行動できているのだから日本人で間違いないはずだが随分と洋風な名前である。年齢は両手の指を三本ずつ立てたから六歳なのか?


「それでマルリェちゃんはどこから来たんだ?

 なんであんなところにいたのか言えるかい?」


「えっとね、わかんない。

 パパとママはリェを逃がしてからどっかいっちゃった」


「じゃあマルリェちゃんはパパママとはぐれちゃったんだね。

 どっかっていうのはダンジョンの中? それとも外かな?

 誰かと一緒だったりしたかな?」


「ママたちはきっと奥に行っちゃった。

 でもリェは逃げてっていったから助けてくれそうな人を探したの。

 そしたらネコさんが来てくれたんだよ」


「そのネコさんと言うのは俺のことなんだよね?

 見ての通り普通の人間なんだけどなぁ」


「ううん、お兄ちゃんを見ている人には猫ちゃんに見えるんだよ。

 リェにはね、誰かを見ている人と同じのが見えるの」


 見ている人と同じものが見える? そういう能力持ちなのか? この場合の誰かは俺のことだろう。その俺を見ている別の誰かの視界と同じ物をこのマルリェは見ることができる? なんだかややこしい能力なのは間違いないが、ようは配信を見ているようなものだと推察できる。


「その誰かを見る能力と、助けてもらうのとはどう関係あるの?

 たまたま近くに俺がいたってことかな?」


「えっとね、いっぱいの人に見られてるのは強くて偉い人だから。

 だから歩いてきたお兄ちゃんがいいかなって。

 その時リェはヘビに見つかってたし」


 つまりあの時探索配信をしていた俺は、大して多いとは言えないがそれでも数十人かそこいらに見られていたことになる。普通はそんな大勢に見られている奴なんていないわけで、マルリェの能力に目を付けられて当然なのだろう。俺の姿がネコだったというのも、誰かが見ている配信画面を写し取ってみるような能力と考えれば不思議ではなかった。


「そっか、あの時はヘビから逃げて飛び出して来たってことか。

 というかどこから出てきたんだ?」


「んと、石の中かな?

 パパが出してくれたの」


「パパは石の中に入ったり出たりできるってことなのか、すごいねぇ。

 ママはなにか凄いこと出来る?」


「そうそう、パパはすごいんだよー!

 でもねママもすごいの。

 だってね歩いてるときに後ろからお水がいっぱいついてくるんだから」


 これはもしかして重要重大な証言なのではないだろうか。大量の水を運び、それを人知れず隠す能力の二つの使い道には心当たりがある。


 とにかく最優先なのはこの子の身元を調べることかもしれないが、在留外国人の能力者なんて存在するのだろうか。もしいるのなら簡単に該当者が見つかるだろうが、まったく存在しない、認知されていないとなると調査には時間がかかるかもしれない。


 隣の部屋で様子を見ている救護員や高科先生がしかるべき機関へ連絡しただろうし、警察か特殊捜査官(いぬ)あたりがすぐに調べ始めるはずだ。捜査が始まれば施設等で保護されどこかへ移動することになるだろう。


 俺は決して憐れんでいるつもりはなかったが、数年前の紗由と重ねあわせていた。それだけに放っておく気にもなれず、能技大で保護されているうちはちょくちょく顔を出すつもりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ