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40.トシウエのコウハイ

 失礼なことだとわかっているけど、それでも見比べずにはいられない。研究室へ入ってきたこの二人はそれほど似通っていた。


「えっと、虹子の姉ちゃんとかじゃないよな?

 お前ひとりっ子だったはずだし。

 でも親類とかでも無くてまるっきり赤の他人なのか?」


「ちょっとリクったらあんまり失礼なこと言わないでよ。

 彼女は鶴城美菜実(かくじょう みなみ)さん、同級生なの。

 もちろん親類じゃないけどやっぱり似てるかな?」


「おう、なんと言うか雰囲気がそっくりだよ。

 髪型や背格好のせいなのかな。

 目元は鶴城さんのほうがパッチリしてるけどさ」


「そんな…… 私なんて虹子ちゃんに比べたら全然かわいくないし……

 才能ないので十七でようやく入学できたし、比べてもらえるだけで光栄です。

 綾瀬君にはこれからご指導よろしくお願いしますね」


 鶴城美菜実と名乗った虹子の同級生は、とにかく虹子によく似ているが性格は大分異なるようだ。雰囲気的には清楚で奥ゆかしい大人しい少女って感じか。だがパッと見で大きく違う点も有り、その一つである目元は空いているかどうかわからないような虹子と違ってパッチリしている。そしてもう一つは二歳年上なだけあってアレだ…… プロポーション的なところは大人っぽく感じる……


「綾瀬君は土曜日に友利君を連れてダンジョンへ入っているって言っていたね。

 それならうちの研究室では金曜日を指導日にしよう。

 週に一回、友利君と鶴城君を連れて指導すること。

 帰りには必ずここへ戻ってくるようにね」


「は、はあ、鶴城さんがいいなら別に問題はありません。

 虹子は二日連続になるけど体力的に平気か?」


「むしろ歓迎だよ。

 今まで週一だけだったから少なくてさ。

 実地講義でも入ってるけど、集団で三階層くらいまで行く程度だもん」


「あの、私も土曜日に同行してもよろしいですか?

 同じ一年生の中で出遅れているので早く慣れていきたいんです」


「でもなぁ、土曜は大学の管轄外行動なんだよね。

 あくまで虹子はうちのパーティーメンバーとして行動しているわけだからさ。

 まあ装備とかは支給品でも問題ないと思うけど、二十階層以上は潜るんだぜ?

 どうしてもと言うなら考えなくもないけど、最初からは無理だよ」


「そうなんですね、残念です……

 指導が進めばご一緒させていただけるようになりますか?

 聞いた話だと虹子ちゃんも探索歴二カ月程度らしいですよね?」


「そうだね、索検三球合格から入学まで二カ月ちょっとあったからな。

 週三くらいで潜ってたと思うよ。

 それくらい経験積めば同じくらい慣れてる頃だろうから同行も問題ないね。

 まずは十階層までで百時間が目安かな」


「はい、綾瀬君に認めてもらえるよう頑張ります!

 虹子ちゃんもいろいろ教えてね」


 そう言ってにっこりと笑った鶴城美菜実は、目が細くなるせいで虹子そっくりである。しかもワンランク上のかわいさと言ってもいい。その笑顔に思わず見とれていると、そのすぐ隣から注がれる視線が刺さるような感覚を覚えた。


「な、なんだよ虹子、なにか言いたいことでもあるのか?」


「べっつにー、なんでもないわよ。

 なんで男の子ってかわいい子見るとすぐにデレデレするのかしらね、ふんっ」


 どうやら俺がもう一人追加で指導するのが気に入らないらしい。まったく独占欲の強い奴だ。そんな俺たちの様子を見ていた鶴城美菜実の笑い顔へ再び目をやると、一瞬真顔になっていたように見えた。


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