36.キンキュウソチ
珍しく、本当に珍しいどころか初めてかもしれないくらいに珍しく、俺はダンジョンへ行く前に研究室へ立ち寄った。
「というわけで、炎が弱点のはずなのでなにか武器をお借りしたいんです。
火球ショットガンが良いかなと思ってるんですけどどうですかね?」
「報告は聞いているよ。
念のため今朝から講師の判断で入場制限をしているくらいだからね。
相手は植物系モンスターなのかい?
まだ未知のものってことらしいので、できればあまり傷を付けずに持ち帰って欲しいね」
「それって俺の無事とどっちが優先されますかね?
できればまだ死にたくないんですけど……
どうやら岩の裂け目から這い出て来て触手を伸ばすみたいなんです。
隠れていたらまた潜って消えてしまいました」
「それならばやはり今日のところはダンジョン閉鎖の手続きをしよう。
明日からは朝一番で討伐隊が入り、二十五階層まで行くよう手配するよ。
一般の入場は午後からと言うことでどうだろうか。
それでも遭遇してしまったら全力で討伐することを許可するよ」
「先生も思い切りと言うか割り切りがいいですね。
まあでも仕方ない、今日は持って来た素材を置いていくだけにしますよ。
珍しいものは多分ないけど量だけはいっぱいあるんで」
「はい、ご苦労様です。
新規にモンスタータグを付けたものがあれば報告を上げてね。
私から生体研究課へ伝えておきますから。
最近は倒してしまう学生が多いので助かっているよ」
「俺たちの本分を忘れないようにしないとですね。
後輩指導の機会があればちゃんと教えますよ。
うちのメンバーにも教えてますしね」
「ああ、今季入学したばかりの友利君ですね。
彼女は資源探索研究会に誘われているようですね。
超能力開発ゼミは断ったようですが、本当は君と一緒がいいのかな?
うちも覗きに来たくらいですから」
「ああ、うちの研究室は緩いから制限少ないって教えちゃったからな。
もしやってきたら面倒見てあげてくださいよ。
出来る範囲の指導は俺がやりますから」
「そうですね、ふふふ、心に留めておきます。
楽しみ、いや、今後に期待が持てますねぇ」
高科先生は含み笑いをしながら俺を送りだし、くれぐれも今日はダンジョンへ入らないようにと念押しした。それから数分後、全探索者に向けて本日の立ち入り制限が告知された。
その内容はほぼ先ほど言われた通りで、まずは討伐隊によるモンスター探索と討伐、空振りの場合でも午後からは入場可能だが、能技大の授業として行われている探索講義は中止とのことだ。
それと同時に、探索隊には各隊最低一つは火器の傾向が義務付けられ、必要訓練時間を満たしていない者も入場禁止となった。俺はもちろんどの制限にも引っかからないが、これは結構厳しめの制限であり、今回の事象が決して軽いものではないことを示していた。
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