34.ヨリミチ
サイドワインダーが舎人校の寮へ戻るのにあわせて俺も研究室へ顔を出した。せっかくの獲りたて新鮮なワニだ、校内のデカい処理場できれいに捌いて素材と可食部に分別したい。いつもは家で捌いているので素材を放り出しがちなのだが、それがきちんと採取されて当たり前に納品されたことを一番喜んでいるのは、俺の担当講師である高科先生である。
「いつもこうやってすぐに置いてってくれたらいいんですけどね。
今後は毎回こうして寄って行ってくれませんか?
僕も君も助かって損する人は誰もいない、まさしくウィンウィンってやつですよ?」
「確かにそうかもしれないですけど……
大学に立ち寄ると色々と時間がかかるんですよね。
この間も四谷先生に捕まって資料整理させられたんですよ……」
「ははは、君はあまり顔を出さないからですよ。
みんな優秀な学生を見かけると、ついつい何かさせたくなってしまう。
すでに卒業後に向けての囲い込みは始まっていると言うわけです。
残念ながら僕の研究室に残ることはないでしょうけどね」
「まあそうですね、方向性が大分違いますし。
でも探索続けていくなら大学に残らないといけないのか。
もっといい進路があるといいんですけどねぇ」
「営利目的での探索となると難しいかなぁ。
研究目的だとしてもどこかの省庁の直下でないと許可されないでしょう。
未発見の資源が見つかる可能性があるうちは自由な探索は無理。
つまり永遠に解放されることはないと思った方がいい」
「ですよね、それならまあ大学職員ってことになるのかな。
今と同じように制限がほぼ無いなら先生の研究室に残ってもいいですよ?
たまに素材に関して実験して研究論文を書けばいいんですよね?」
「ざっくり言えばその通り。
でもバカにしたもんじゃない、素材研究は楽しいですよ?」
「全然バカになんてしてないですよ、むしろ興味はありますからね。
ただそれよりも未到達階層の探索が好きなだけなんです。
舎人だってまだ下はあると思うんですけど、もう一年以上見つかってませんからね。
そんなの燃えるなと言っても無理じゃないですか」
ダンジョン探索後は早く帰りたいと言っておきながら、結局こうやって長々と話し込んでしまい、家に帰りついたのはもう暗くなってからだった。もちろん紗由は早く飯にしろと騒いでいるが、腹が減ったことよりもさっさと飯を食い終わり、今日の配信についての話がしたいらしい。
どうやら紗由の目に叶う素晴らしい結果が得られたようで、俺も楽しみにワニ肉を煮込み始めた。




