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31.イチナンサッテ

 名も知らぬモンスターの攻撃範囲外に腰を据えて、いよいよどうにもできなくなったとにらめっこしてみるが解決策は思い浮かばない。仕方ないのでいったん休憩することにした。


「なあ紗由、こんなデカいのが今まで未発見ってどういうことよ?

 大学のデータベースには無いっていうけど、緊急報告は上げたか?」


『もしもしおにい? ついさっき連絡は入れといたよ。

 そんなことよりさ! 視聴者数が十人超えたんだよ!?

 コメントだってついてるしさ、すごくない? 今までで最高だね!』


「コメントってすげーとかなんだこれとかそんなのだろ?

 あまり嬉しいとは思えねえなぁ。

 それよりも俺は帰り道がふさがれている方が大問題だよ。

 はやく討伐隊が来ないかなぁ」


『あ、救援要請に返事が来た。

 なになに、えっとね、そいつは発見されたばかりの新種植物らしいよ。

 視線の通らないところで隠れてしばらくするといなくなるんだって。

 一度消えたら再出現までは相当時間がかかるって返事が来てる』


「なるほど、それじゃいっちょ隠れてみるか。

 配信も台無しだな」


『んにゃ、これはこれでいい絵が撮れたにゃー』


 紗由のやつ、何をとち狂ったかおかしなことを言っている。まあ俺は無事だし、本人が満足ならそれでいい。今この場では確認できないが、きっと配信画面では面白い絵面になっているのだろう。これまでのテスト映像もあまり見ていないため雰囲気がいまいち想像できない。今日無事に帰りつけたらゆっくり見てみることにしよう。


 十五分か二十分くらい経っただろうか。岩陰に隠れているうちに何やらゴゴゴゴと音が鳴り始めた。地鳴りと言うほどではないが軽い振動を感じる。数十秒で収まったので先ほどまであのヘンテコが陣取っていた辺りを覗いてみると、奴はさっきの情報通りに消え去っていた。


「おい! あのデカブツ本当に消えてくれたよ。

 どうやらこれで帰ることが出来そうで一安心だな。

 結局種類とかはわからないのか?」


『植物系モンスターで名前はまだ決まって無いみたい。

 ついこの間『足柄ダンジョン』入り口わきの地表で見つかって騒ぎになってるんだってさ』


「地表だって!? そりゃマジかよ。

 あんなのが地上にぽこじゃか出てきたら大ごとじゃねえか。

 なんでもっと早く周知してくれねえんだろうな。

 どうせまたお役所の擦り付け合いだろうけどさ」


『とにかく早く戻って来て。

 そんで十六階層まで戻ったら隠れてるやつがいるかもしれないから十分注意すること』


「おい、それってまさか……」


『想定外のことが起こるからまさかっていうんだよね。

 だから今回に関してはまさかじゃなくて悪い予感が当たった、ってこと。

 さすがおにいって感心するよ』


 どうやら今回も横須賀校からの遠征組がいて、そいつらが何者かに襲われていると言うことになりそうだ。今大ピンチを切り抜けてきたばかりだが、紗由が行けと言うんだから勝算があるんだろう、あるんだ、よな? と確認してみたのだが――


『ん? ちょっと通信状態が良くないかも』


 さすがだ、我が妹よ。ここまで清いと感心するしかない。俺は呆れ顔で先を急いだ。


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