13.オサナナジミ
まずは山積みになっている書籍と投げ捨てられている衣類を片付けはじめた。それから飲食のゴミもそうとう溜まっているし、持ち帰ってきた未整理のドロップ品もあちらこちらに散らかしっぱなしだった。
とりあえず洗濯物を全て洗いに出してから布団をはたいてみると、埃なのか砂なのかわからないが、宙に舞ったゴミが目に入ってしまった。これはそろそろ掃除屋を呼んだ方がいいのではないだろうか。俺の部屋でこんなだと、引き籠りの紗由の部屋はもっとヤバいことになってそうなのだが、意外にもそれほど散らかっていないのが不思議だ。
十五時を過ぎてしばらくしたころに横須賀校の講師から連絡が入り、同じパーティーなら同行者は構わないが部屋は一つしか用意できないと言われてしまった。虹子のやつはうちで一緒の部屋に泊まるだけであれだけ騒いでいたくらいだし、初めて行く横須賀校の寮で同じ部屋なら行かないと言うかもしれない。
まああとで聞いてから決めればいいだろうと、今度は洗い終わった洗濯物を出してから布団を洗濯機へと押し込んだ。その間に部屋の掃き掃除を始めると、やはり砂がいっぱいでひどいありさまだ。
苦労の甲斐あって、ダンジョン内で寝るよりはマシなくらいには整った部屋を眺め満足していると虹子が戻ってきた。どうやらその音で紗由も目が覚めたらしい。
「おにい、お腹すいたぁ、オムライスぅ」
「まだ四時だぞ? おやつにしておいた方がいいんじゃないか?
今はケーキでも食って後でまた飯にしようよ」
「どうせ何食べたってフードベースなんだからいいよ。
そんなことより横須賀のお土産楽しみにしてるからね。
本物の魚なんて久しぶりだもん」
「絶対手に入るとは限らないんだから期待しすぎないようにな。
どっかで買えるようならいいんだけどさぁ。
こう言うのって大体期待通りに行かないもんだろ?」
「今からそう言うこと言わないでよ。
私だって楽しみにしてるんだからさ」
「なんだよ虹子、あれほど緊張してるだなんだ言ってたのに。
ああそうだ、先方からはちゃんと許可が下りたからな?
でも一点問題があってさ……」
「来てもいいけど部屋はない、なんて言わないでよ?
私はもう行く気満々でちゃんと用意してきたんだからね」
「いやあお前、いい勘してるよ。
実はさ、寮は二人部屋だから一つしか用意してもらえないんだよなぁ。
しかもよく考えてみれば、虹子はまだ能技大の学生じゃないしさ。
来ていいって言ってもらえるだけマシだと思ってくれよ」
とりあえず事実をさらっと伝えてみたところ、予想に反して虹子から嫌がるそぶりはなかった。それならまあ気にしないでいいかと思ったんだが、今度は紗由の様子がおかしい。
「紗由? なんか様子おかしい気がするけど、やっぱり自分も行きたいなんて言い出さないよな?
今更もう一人追加は言い出しにくいから勘弁してくれよ?」
「はあぁ、まったくおにいはこれだから困っちゃうよね。
目の前にいる虹子の様子を見てなおそのセリフ、ウチは妹で良かったよ」
「なんだよ変な言い方してさ。
俺だって紗由が妹で良かったと思ってるってば。
それともアレか? 虹子が俺のこと好きだから一緒の部屋を嫌がってるとでも言いたいのか?」
「おお、おにいってば鈍いんじゃなくてちゃんとわかってたんだ。
それなのにここでそう言うこと言いきっちゃうのもスゴイよね、悪い意味で。
虹子はこんなんでいいわけ?
これからもっといい人と出会うと思うよ?」
「う、うん…… でもやっぱりね……」
「周りに同年代の男の子がいないのが悪いんだってば。
きっと気の迷いだからあまり考え込まないようにね。
横須賀にもっとカッコいい男子がいるかもしれないでしょ?」
なんだか我が妹はずいぶん失礼なことを言ってのける。その横では虹子が顔を赤くしてうつむいたまま固まっているし、こんなんじゃせっかくの遠征がうまくいくか心配だ。
俺はため息をつきながらテーブルにオムライスとケーキを並べていた。
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