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一人ぼっちの邪神様② ※ベル=ゼブル視点

ご覧いただき、ありがとうございます!

■ベル=ゼブル視点


 地の底に封印されてから一千年を過ぎたある日。


 全てを諦めていたボクの元に現れた、たった一人の彼。


 夢かと思った。


 そんな彼に嫌われたくなくて、でも、絶対に嫌われることも分かっていて、地面で眠っている彼を、ただ暗闇の中で眺めていた。


 すると。


「んう……こ、ここは……?」


 むくり、と身体を起こし、彼はキョロキョロと辺りを見回す。


 どうしよう……このまま黙っていたところでこんな閉じられた穴の中じゃ、結局は彼に見つかっちゃう……。

 それでも、気付かれないように隠れようかとも思ったけど、ボクは意を決して声をかけることにした。


「あ……目が覚めた……?」


 ボクはできる限り不安な心を読み取られないように、表情を変えないようにした。

 だけど、ボクの胸は今にも張り裂けそうなほど高鳴っていて……。


「君は……? 何故、こんなところに……?」

「ボクは……“ベル=ゼブル”……ここはボクのたった一つ(・・・・・)の場所(・・・)……」


 う、うん……ボク、上手く自己紹介できたよね……?

 でも……うう、本当の名前を名乗っちゃったのは失敗だったかなあ……。


 そんなことを考えながら、ジッと彼を見つめていると。


「は、はは……まさか、な……」


 彼は口元をひくつかせながら、ボクを見た。

 ……やっぱり人族なら、ボクの名前を知ってて当然か……。


 それから彼は、ここから脱出するための出口を探すため、壁や地面をくまなく調べていた。

 時には真上と壁を交互に眺めているところを見ると、ひょっとしたらここをよじ登っていくことを考えているのかも……。


 その時、彼はカバンにおもむろに手を伸ばし、中から何かを取り出した。

 そしてそれをかじると、もぐもぐ、と口を動かし始めた。


「……食ってみるか?」

「い、いいの……?」


 まさかの答えが返ってきたので、ボクは思わずおずおずと尋ねてしまった。


「お、おう。ホラ」


 彼と同じものを手渡され、ボクも同じようにかじってみる。


「お、美味しい……!」


 ふわあああ……ボ、ボク、初めて人族の食べ物を食べちゃったよ……しかも、こんなに美味しいだなんて!

 ボクは夢中になってその食べ物を食べると、あっという間になくなっちゃった……。


「美味かったか?」

「うん!」


 ボクはその美味しさと嬉しさを伝えると、彼は頬を緩めた。

 えへへ……彼、こんな笑顔なんだ……。


「しかし……そんなに腹を空かせてたってことは、一体いつからここにいたんだ?」

「あ……うん……多分、一千年前(・・・・)から、かなあ……」


 彼のくれた食べ物を食べて気が緩んだのか、ボクはそんなことを言ってしまった。

 すぐに気がついてボクは顔を逸らしたけど、もう遅かった。


 だって……彼は震えた声を荒げ、少しずつ後ずさりしていってるもん……。

 やっぱりボクは、人族達の()でしかない、よね……。


 だからボクは、精一杯の強がりで邪神らしく振舞ってみせた。

 壁を砂に変えてみたり、高らかに(わら)ってみせたり……。


 本当は、彼と仲良くなりたいのに。

 もう……一人ぼっちは嫌なのに……。


 すると彼は、ついさっきまでの怯えた様子がなくなり、急にカバンの中からさっきくれた食べ物のほかに、三角の白みがかったものと銀色の武器? みたいなもの、それと丸めた紙を取り出した。


 丸めた紙を地面に広げるとそこには火の魔法陣が描かれており、発動して小さな炎が生まれる。

 そこに、銀色の武器のようなものにさっきの食べ物を刺して火であぶり出した。


「さっき食べた干し肉は、こうやって軽く火であぶってやると(あぶら)が溶け出してさらに美味くなる。ほら、熱いから気をつけるんだぞ」


 ボクの口元へと火であぶった食べ物……干し肉というものを、ボクの口元にずい、と差し出された。


「え……こ、これ、食べていい、の……?」


 彼の行動に、その表情に驚いたボクは、さっきまでの邪神らしい振舞いは忘れておずおずと尋ねてしまった。


「ああ」


 でも、彼はそう返事して、頷いて……。


 何度も彼の顔と干し肉を交互に見るけど、その干し肉から漂う香ばしい匂いに我慢できず、ボクは思いっきりかぶりついた。


「はむ……っ! ほ、本当だ! さっきもらったものよりも美味しい!」

「だろう?」


 そのあまりの美味しさに、どうしても頬が緩んじゃう……!

 彼も、そんなボクを見つめながら嬉しそうに微笑んでいたかと思うと、今度は白みがかった三角のものを銀色の武器のようなものに刺して、干し肉と同じように火であぶる。


 するとどうだろう。その表面がとろり、と溶け出した。


「これはチーズ。美味いぞ」

「う、うん……はむ……ほわあああ……!」


 差し出された三角のもの……チーズに、ボクはかぶりつくと……ほわあああ……!

 うん……こんな美味しい物を食べちゃったら、変な声が出ちゃったとしてもしょうがないよね!


 そして、そんなボクをやっぱり微笑みながら見つめる彼。

 ボクは彼のまなざしに……その優しさに胸がいっぱいになって……っ!


「ううう……うわあああああん……!」


 彼の胸に飛び込んで、大声で泣きだしてしまったんだ。

お読みいただき、ありがとうございました!


本日は四話投稿いたしますのでどうぞよろしくお願いします!(二話目)


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