表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/27

忍び寄るゴブリン

ご覧いただき、ありがとうございます!

「調査結果だ。それと、今すぐミロク村に冒険者を派遣したほうがいい」


 リトミルの街に戻ってきた俺は、すぐにギルドへ向かうと報告と共に冒険者の派遣を進言した。


「す、すぐにギルドマスターに確認してきます!」


 事態の重さに気づいた受付嬢は、慌てた様子でギルドの奥にある部屋へと飛び込んで行った。

 しばらくすると、部屋の中から受付嬢が出てきて、こちらへと戻ってくる。


「ギルドマスターが詳しく事情を聞きたいそうですので、どうぞこちらへ」


 中へと通され、俺はギルドマスターの執務室へと入った。


「この街のギルドマスター、“ミラン=コレル”だ。それで、大規模なゴブリンの集落を見つけたとのことだが……」

「ああ。生活規模などから考えて、ゴブリンの数は百匹以上はいるかもしれん。それに……奴等のリーダーは恐らくトロールだ」

「っ!? それは本当か!?」


 驚くギルドマスターに、俺はゆっくりと頷いた。


「だ、だとすれば、今すぐにでも冒険者を……少なくとも二十人以上は必要だぞ! おい! 緊急クエストだ! 冒険者を募ってミロク村へと向かわせろ!」

「「「は、はい!」」」


 ギルドマスターは部屋から飛び出て大声で指示を出すと、ギルドの職員達が慌ただしく動き出した。

 また、ギルド内でのんびりしていた冒険者達も、ただならぬ雰囲気を感じ、表情を険しくする。


「それで、ええと……「“ディートリヒ”だ」……ディートリヒ、君も一緒にミロク村に向かってくれるか」

「分かった」


 それから一時間、たちまち確保できた冒険者十人とギルドマスター、それに俺を加えた十二人で、ミロク村へと向かった。


 ◇


「おお! 来てくださいましたか!」


 村の前までたどり着くと、俺達の姿を見つけた村長が飛び出し、安堵の表情を見せながら駆け寄ってきた。


「ギルドマスターの“ミラン=コレル”だ。今のところ村への被害はないな?」

「は、はい……ですが、いつもは二匹しか来ないゴブリンが、さっきは五匹もやって来まして……」

「そうか……」


 ゴブリンが五匹……つまり、今日明日にはこの村を襲撃するつもりだな。


「ふう……どうやらギリギリ間に合ったみたいだな……これも、君の調査のおかげだ」

「いや、まだゴブリン達を根絶やしにしたわけじゃない。それに、この後も追加で冒険者が派遣されてくるとはいえ、それまでこの人数で持ちこたえないといけないんだ。気は抜けない」

「そうだな……」


 俺の言葉に、ギルドマスターが頷く。


「それで、どうする? さすがにこの人数でゴブリンの住処を襲うには厳しいぞ?」

「うむ……後で来る冒険者達と合流するまではこの村で待機し、合流次第、ゴブリンの集落を襲撃することにする」


 そう答えると、ギルドマスターは冒険者達に次々と指示を出す。

 どうやらゴブリンから村を守るための準備をするようだ。


「さすがにいつもゴブリン討伐をしているだけあって、準備の手際も見事だな」


 テキパキと作業を進める冒険者達を眺めながら頷いていると。


「た、大変だ!? “ハナ”がどこにもいないぞ!?」


 村人の一人が慌てながら村中を探し回っていた。


「“ハナ”というのは?」

「っ! あ、ああ! 俺の娘だ! うちで飼っているワイルドカウを放牧しに行って、まだ戻ってきていないんだ!」


 ……嫌な予感がする。

 最初に俺がこの村に来た時、村長を呼びに行ってくれた女の子……確か、一匹のワイルドカウを連れていたな……。


「……それで、どこに放牧に行ってる?」

「ひ、東の牧草地だ!」

「そうか」


 俺は短く答えると、今も指示を出しながら忙しそうにしているギルドマスターの傍に行く。


「ギルドマスター、この村の娘が一人、ワイルドカウの放牧に出たきり戻っていないらしい。少し様子を見てくる」

「分かった。気をつけてな」


 ギルドマスターにそう伝え、俺は東の牧草地へと向かった。


 だが。


「いない、な……」


 そこには娘の姿もワイルドカウの姿もなかった。

 しばらく、牧草地の周囲を見回す。


 すると。


「……これは」


 草の一部に付着している、血の(あと)

 ……どうやら、既に襲われた後のようだ。


「急いで戻らないと!」


 俺はすぐにそこから駆け出して村へと戻り、この事実をギルドマスターに伝えた。


「そうか……なら、もうその子は諦めるしかないな……」

「そ、そんな……」


 俺が戻ってきたのを見た娘の父親が、俺とギルドマスターの会話を聞いて膝から崩れ落ちた。

 ここで騒ぎ出さないのは、この父親もゴブリンの特性を知っているからだろう。


「……なんの慰めにもならないかもしれないが、ゴブリンは女をすぐに殺さない。冒険者が揃えば奴等の集落を襲撃するから、その時に助け出してみせる」


 ただし……散々(なぶ)られた後、だろうがな……。


 それから、重苦しい空気の中、黙々とゴブリン共を迎え撃つ準備を進める。


 そして。


「よし……これなら、少なくとも明日の朝までは持ちこたえることができるはずだ」


 ようやく準備を終え、ギルドマスターと冒険者達は一息吐いた。


「見事なものだな……」


 冒険者達が(ほどこ)した準備……ゴブリンの集落へ向けた方角に防御柵を張り巡らせ、その両脇に冒険者を配置することで各個撃破することで、集団での乱戦という状況は防げる。


「それで、ゴブリン達は……」

「当たり前だが、来るのは夜だろう」


 ギルドマスターと頷き合い、防御柵の裏で待つこと数時間。

 月が夜空に明々と輝く、その時。


 ――暗闇の中から、ゴブリンの集団が姿を現わした。

お読みいただき、ありがとうございました!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、

『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!


評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ