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三人組とタルタルとソーセージ

ご覧いただき、ありがとうございます!

「へへ、また会ったな」


 聞き覚えのあった声がしたので振り返ると、ギルドで俺をパーティーに誘った、あの三人組の冒険者達だった。


「この街で美味いモンにありつこうってんなら、ここじゃなくて“(かし)の木亭”一択だぜ」

「そうなのか?」

「おうよ! ちょうど俺達も行くところだったし、何なら案内してやるぜ!」


 ふむ、地元の冒険者がオススメするんだ、これは絶対に美味いに違いない。

 となれば、これはついて行く以外の選択肢はないだろう。


「分かった。なら是非とも案内してほしい」

「よっし! じゃあ行こうぜ!」


[重戦士]の冒険者にガシッと肩を組まれ、俺達は一路“樫の木亭”へ向かった。


「ここが“樫の木亭”だ」

「ほう……」


 なるほど……こじんまりとしているが、中の賑やかな声が外にも漏れている。

 それに、店自体は結構古いようだが、建物やその周囲も小綺麗にしていて、店側のやる気が(うかが)える。


 間違いない、ここは絶対に美味い店だ。


「いらっしゃいませ!」


 店の中へと入ると笑顔の店員が元気に出迎えてくれて、俺達を席へと案内した。


「この国はエールが美味いってのもあるが、やっぱりワイルドブルのタルタルとソーセージだな」

「そうそう、ここに来たら絶対に食べないとね」


[剣士]と[魔法使い]の二人が嬉しそうに話す。


「ソーセージは分かるが、タルタルというのは何だ?」

「おう。タルタルってのは、ワイルドブルの生の挽肉(ひきにく)にみじん切りにしたタマネギやニンニク、ピクルスを混ぜたモンだ。それに鳥の卵の黄身を混ぜ合わせ、パンに乗せて食うと最高なんだぜ!」

「へえ……」


 駄目だ、説明を聞いているだけでよだれが出そうだな……。


「ということで、エールを四つにワイルドブルのタルタルとソーセージだ!」

「かしこまりましたー!」


 店員が嬉しそうに注文を受けると、早速エールを先に持って来てくれた。


「よし! せっかくだし乾杯しようぜ! 俺達の出会いと明日のクエストの成功に!」

「「乾杯!」」

「ああ、乾杯」


 ジョッキを合わせ、俺はエールを流し込む。


「ふう……美味い」


 エストライヒ王国のエールと違って色が黄金に近いし、何より、(のど)ごしの(さわ)やかさは格別だ。


「ふふ、気に入ったみたいね」

「ああ。これならいくらでも飲めてしまいそうだ」


 興味津々で俺の顔を(のぞ)き込む[魔法使い]に、俺はジョッキを上げて答えた。


「ワイルドブルのタルタルとソーセージ、お待たせしましたー!」

「お、きたきた! 早速食ってみろよ!」


 俺は勧められるまま、カットされたパンの上にタルタルを塗り、かぶりつく。


「っ! これは……美味い!」

「へへ、だろ?」


 俺の反応を見て、三人が嬉しそうに笑う。

 いや、だがこれは本当に美味い。ニンニクの香りと新鮮な生肉、タマネギの刺激やピクルスの酸味が、生卵の黄身で見事に合わさって素晴らしい味を奏でている。


「んぐ、んぐ……!」


 俺はたまらずジョッキをあおり、エールを流し込む。

 ううむ……最高の組み合わせだ!


「よし! 次はソーセージだ!」


 フォークでソーセージを刺し、マスタードを塗ってかぶりつくと、パリッという気持ちのいい音と同時に肉汁が口の中に広がる。

 ああ……このソーセージも最高だ!


「ははは! お前、本当に美味そうに食うな!」

「ホントホント! こんな食べっぷりのいい人、初めて見たわよ!」


 気づけば、三人が微笑ましそうに俺の顔を眺めていた。は、恥ずかしい……。

 だが、これは是非ともベルに食べさせてやりたいな。


 タルタルに関してはどれもよくある食材だからトゥルンの街でも簡単に手に入るし、燻製(くんせい)にしたソーセージなら日持ちもするだろうから、どちらもあの遺跡に持って行けそうだ。


 はは……アイツ、絶対に喜ぶだろうな……。


「お? なんだよ、思い出し笑いなんかしやがって」

「ははーん……さては、女のことでも考えてやがったな?」


 おっと、どうやらベルのことを考えていたせいで、いつの間にか顔が緩んでいたみたいだ。

 だけど……はは、彼女ではなくて邪神(・・)なんだけどな。


 それからエールも食事も進み、一時間程度経過した。


「それでよー……俺達も、いい加減ゴブリン討伐にも飽きてきてよー……」


 酔っぱらった[重戦士]……“ヤン”がくだを巻き始めた。


「そうそう……まあ、それなりにいい金にはなるんだけどな。アイツ等弱いし」

「ねー……あと、アイツ等って女性を(さら)っては種族問わず苗床にするでしょ? 私達も何度もその現場に遭遇したけど、本当に気分が悪いわ……」


[剣士]と[魔法使い]……“ペドル”と“マフレナ”が顔を見合わせながら溜息を吐いた。


「そういえばギルドの掲示板を見て思ったが、この辺りは本当にゴブリンが多いんだな」

「おうよ。まあ、この辺りっていうよりブラヴィア王国全体にゴブリン共が生息してやがるからなあ……」

「せめてワイルドブルみたいに食えればいいんだけどな……」


 一応、ゴブリンは魔獣扱いにはなっているが、それでもただの魔獣などより悪知恵は働くし、集団で襲ってくるから厄介だ。

 何より、さっきもマフレナが言ったが、種族問わず女を捕まえては苗床にするなど、繁殖力が極めて高い。


 もしエストライヒ王国でゴブリンを発見したら、それこそギルド総出で根絶やしにいくくらいだ。


「ハア……しゃあねえ、明日もゴブリン共を皆殺しにするかあ……」

「それに、明日のクエストは結構ゴブリンの集落の規模もデカイようだし、気を引き締めないと」

「ねー……あーあ、また苗床にされた可哀想な女の人達、結構いるんだろうなあ……」


 そんな三人のぼやきが増えてきたところで、この日はお開きとなった。

お読みいただき、ありがとうございました!


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