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新たな街、リトミル

ご覧いただき、ありがとうございます!

「ふう……もうすぐ、だな」


 トゥルンの街を出てから二週間、俺は“エストライヒ王国”と“ブラヴィア公国”の国境付近まで来ている。

 というのも、ベルの“七つの封印”の一つが、これから向かうブラヴィア公国にあるのだ。


「それにしても、トゥルンの街から一番近い封印場所ですらブラヴィア公国だからな……」


 大陸の地図を開き、俺は思わず肩を落とす。

 ベルに教えてもらった“七つの封印”は世界中に散らばっており、最寄りのブラヴィア公国をはじめ、“ケント王国”、“ラングバルド王国”、“カロリング王国”、“ヴァリャーグ帝国”、果ては東の“テュルク帝国”に“(おん)皇国”と分かれていた。


「だが、ブラヴィア公国をはじめとした五つの国についてはまだ理解できるが、何故テュルク帝国や温皇国が封印場所なんだ?」


 そう呟き、俺は首を傾げる。

 というのも、ベルの説明では神族は人族の信仰心を糧としているとのことだったが、五つの国では“テトラグ教”を国教としている一方で、テュルク帝国では“ゾディアック教”、温皇国では“朱里(しゅり)教”だ。


「ウーン……まあ、神族なのだから敬う神様が違っていても問題はない……のか?」


 まあ、この辺りは美味いものを持って行った時にでも聞いてみるか。


「そのためにも、ブラヴィア王国ではしっかり金を稼がないとな……」


 一応、これまでに蓄えに加えてエレナからもらった餞別があるから、向こう一か月は問題なさそうだが、俺はこれから世界中を回らないといけない。

 特にテュルク帝国や温皇国へ行くとなると、海路での長旅になるからなあ……。


 などと考えていると。


「あれか……」


 街道の先に、石造りの砦と大きな門が見える。どうやら国境にたどり着いたようだ。


「ふむ……冒険者か」

「ええ」


 俺はギルドから発行されている冒険者のプレートを見せる。

 ギルドは世界中に根を張る組合のようなもので、そこに所属している冒険者は身分が保証されている。

 例えばこうやって他の国に移ることも、冒険者なら可能となる。


「よし、通れ」


 無事に検問も終わり、俺はいよいよブラヴィア王国に足を踏み入れた。


 ◇


「さて……せっかくブラヴィア王国に来たんだ。ギルドを確認したら宿を探して、美味いモンでも食いに行くか」


 ブラヴィア王国の国境近くにある交易都市、“リトミル”の街に到着した俺は、まずはこの街のギルドを探すと。


「お、ここか」


 街の中央にある周囲と比べて二回りほど大きな建物。

 入口には、ギルドのマークの入った看板が掲げられている。


 俺は入口の扉を開いて中へと入ると、冒険者達で賑わっていた。

 ふむ……トゥルンの街のギルドと比べると、ここのほうが規模は少し大きいな。


 そのままクエストが貼りつけてある掲示板へと向かい、[斥候]の俺に向いているクエストはないかと物色してみる。


 だが。


「……トゥルンのギルドのように、遺跡や魔獣の調査依頼が見当たらない……」


 そういえば、トゥルンのギルドで遺跡調査などがクエスト多く出るようになったのは、俺が“ドラグロア”を追放されてからだったかもしれない。


「そういうことかよ……」


 そのことに思い至った俺は、ポツリ、と呟いた。

 要は、[斥候]である俺が冒険者としてソロでも活動できるように、ギルドが配慮してくれていたってこと、か……。


「ハア……またあの街に戻ったら、その時はギルドマスターとミアの奴に何か礼をしないとな……」


 そんな俺の鈍さに溜息を吐きつつ、ギルドのしてくれた配慮に俺は胸が熱くなった……が、まずそれは置いといて……どうやって金を稼ぐか、だな……。


 どうやらこの辺りにはゴブリン(・・・・)が数多く生息しているらしく、ゴブリン討伐に関するクエストが多い。

 ……まあ、ゴブリンならそれほど強くないし、ゴブリン集落の規模次第だがソロでも問題なさそうだな。


 一応クエストの目星をつける、今日のところはギルドを出ようとすると。


「オイ、見かけねえ顔だな」


 この街の冒険者に声をかけられて振り返る。

 ふむ……見る限り、[重戦士]に[剣士]、それに[魔法使い]か。魔獣討伐を目的としたパーティー構成だな。

 だが……その強面(こわもて)な雰囲気から、これは新顔の俺にちょっかいをかけにきた、ってところか。


「ああ……俺はエストライヒ王国からこの街に来たばかりでな」

「へえ……見たところ、アンタ[斥候]か?」


 剣士の男が、俺の姿をまじまじと眺めながら尋ねた。


「そうだが……」

「そうなのね! だったら、私達と一緒にパーティー組まない?」


 [魔法使い]の女の突然の誘いに、俺は思わず目を丸くする。

 いや、確かにこの三人組の構成を考えれば、俺みたいな[斥候]を加えること自体は理にかなってるが……何分(なにぶん)、こうやってパーティーに勧誘されることが久しぶりだったため、面食らってしまった。


 だが。


「……せっかく誘ってくれたのにすまないが、実はこの国の首都、“プラグ”を目指している途中でな」


 そう……封印は首都プラグにあり、長期滞在するにしてもプラグにしようと考えていた。

 なのでこの街には一、二週間程度しか滞在する予定はない。


「そうなのかよ……残念だな……」

「本当にすまないな……」


 三人組は、肩を落として離れて行った。

 ウーン……悪いことをしたな……。


 その後、俺はギルドを出て安宿を見つけ、そこで部屋を借りた。

 素泊まりとはいえ、一泊当たり銅貨五枚ならかなり安い。おかげで節約もできそうだ。


「よし。それじゃ、景気づけに何か食いに行くか」


 宿を出て、俺は入る店を探す。

 美食家(グルメ)にとって、数ある店の中から美味い店を探し当てることこそが醍醐味なのだ。


「お、ここは美味そうな予感がするぞ」


 漆喰で綺麗に塗られた外壁の少し立派な店を眺め、俺は(あご)に手を当てながら考える。

 俺の経験上、こういう店は美味いはずだ。


「ここにするか」


 俺は店のドアに手をかけ、開こうとする。


「ああ、その店はやめといたほうがいいぜ」


 聞き覚えのあった声がしたので振り返ると。


「へへ、また会ったな」


 ギルドで俺をパーティーに誘った、あの三人組の冒険者達だった。

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