アマンダとジェシカ
「お姉様、今日お茶会へ行かれるのですよね。私もご一緒いたしますわ」
目元を歪めたアマンダの声には嫌味な響きが滲んでいる。
(ああ、こうやって私のことを見張っていたのね。
でも…)
「あら、アマンダ。それはとても喜ばしいわ。」
ごくりと唾を飲み込んで、微笑みを浮かべる。
予想外の反応だったのだろう。アマンダは目を見開くと数度瞬きをして、訝しむように目を細めた。
(まずい。あまりにも素直すぎて逆に疑われたのかしら)
「それでどちらへ行かれますの?」
「ゴルドン男爵家のジェシカ様に招待されましたわ」
噂好きのジェシカは素行不良のアマンダを噂の的にしているため、二人の仲は険悪で顔を突き合わせるたびに火花を散らしている。
(さぁ、アマンダは私の監視のためにジェシカの確執をなきものとするのかしら)
「ゴルドン男爵家のジェシカ様?あの下品な方とは交流なさらない方がよろしいんじゃありませんこと?顔の色もよろしくありませんし、お断りされたらいかがですか?」
ジェシカの名を口にするのも嫌なのか、口の端をヒクヒクとさせている。
「体調に問題はありませんし、お茶会には予定通り伺いますわ。アマンダも同行するのならそろそろ準備したほうがよろしくてよ。
あぁ、あの方情報通でらっしゃって、どこからかこないだのお茶会のドレスのことを褒めてくださってたわ。今回もお茶会の時の話とか出るのかしら」
(お茶会では私のドレスの評判はよく、逆にアマンダの無作法が話題になってたわ。
私が倒れたことを差し引いてもアマンダのマイナス印象のが強いはずだから、今回のお茶会で話題に登ったらアマンダにとっては居た堪れないはずだわ)
「そ、そうね。今日は予定が入っていたのを忘れてたわ。どうせ男爵ごときのお茶会ですもの大した人も来ないでしょう。下品な方同士せいぜい楽しんできたらよいですわ」
アマンダは荒々しくドアを開けて足早に部屋を出ていった。
*
「まさか、マリーナ様にお越しいただけるとは思いませんでしたわ。本日はお越しいただきありがとうございます」
ジェシカ様が私の背後に目をやり、納得したように小さく頷く。
(まるで今朝のアマンダと私のやり取りを見てきたようね。
私が公爵家で虐げられていることを知っているの?)
「こちらこそお誘いただきありがとうございます。ジェシカ様のお話し聞けるのとてもたのしみにしておりましたの」
アマンダのこと、エディ=Oさんのこと、聞かせていただくわ。
マリーナは握りしめた拳に力を込め自分自身を鼓舞した。