たっちゃんの青い手ぶくろ
あさのごはんをたべて、お外であそぼうとして、ぼくは気づいた。手ぶくろがない。
おかあさんが青いけいとでつくってくれた、手ぶくろ。かたいっぽうだけ、ない。
きのう、ゆきあそびしたときはあったのに。
「おかあさん、手ぶくろがない」
「たっちゃんの青い手ぶくろ、きょうは見てないよ。きのうどこかにわすれた?」
ぼくは、ポケットの中をもういちどさがした。手ぶくろはない。
ぼくは、ジャンバーをかけてあったところをさがした。手ぶくろはない。
ぼくは、ぼくのへやと、テレビのへやと、だいどころをさがした。手ぶくろはない。
ねこのミューが、ぼくの足にすりすりした。
「ミュー、ぼくの青い手ぶくろ、どこにあるかしってる?」
ミューはしっぽをひとふりしてから、ぼくを見た。
「たっちゃんの青い手ぶくろ、おうちの中にはないよ」
ミューがそういった気がした。
ぼくは、ジャンバーをきて、マフラーをして、ながぐつをはいて、青い手ぶくろをかたいっぽうして、げんかんから外へでた。
犬ごやのやねに、ゆきがつもっていた。
「ペロ、ぼくの青い手ぶくろ、どこにあるかしってる?」
子犬のペロは犬ごやからでてきて、わんと小さくほえて、ぼくを見た。
「たっちゃんの青い手ぶくろ、ここにはないよ」
しっぽをふりながら、ペロがそういった気がした。
ぼくは、おにわにいった。
だれかがゆきをふんずけたあとをあるくと、ながぐつがキュッとかビチャとか、おとがする。
おにわの木に、スズメがいた。
「スズメさん、ぼくの青い手ぶくろ、どこにあるかしってる?」
スズメは、ぼくを見て、ぷくってまるくなった。
「たっちゃんの青い手ぶくろ、おにわにはないよ」
スズメがそういった気がした。
ぼくは、おにわのよこのはたけまで、あるいた。サクッ、サクッ、ビチャ。
冬のはたけは何もないから、はたけではしりまわっても、いいんだ。
はたけはまっ白で、キラキラしていた。まぶしくて、目をつぶりたくなる。
ぼくがきのうあるいたあとが、ぐるぐるっていっぱいついていた。
ゆきだまをころがしたところも、ちょっとへこんで、ずっとつづいてる。
木の上からカラスがとんできて、ぼくのまえにおりて、ちょんちょんとはねた。
「カラスさん、ぼくの青い手ぶくろ、どこにあるかしってる?」
カラスは、ぼくを見てカァとないた。
「たっちゃんの青い手ぶくろ、このあたりにはないよ」
なんとなくカラスがそういった気がした。
ぼくは、ゆきだるまをころがしてへこんだところの上を、ぐるぐるとあるいた。
へこんでいないゆきの上をあるいたら、シャクッシャクッっておとがした。
おもしろかったので、きのうゆきだるまでへこんだあとを見ながら、シャクッシャクッとあるいた。
ずっといったら、ゆきだるまがあった。
ぼくがきのうつくったゆきだるま、目とはなと口は、ゆきだまをはりつけたんだ。
ぼくのケッサクだ。とってもじょうずにつくったのを、ケッサクっていうんだって。
ゆきだるま、きのうはまんまるだったのに、きょうはちょっととけて、あたまがかたむいていた。
「ゆきだるまさん、ぼくの青い手ぶくろ、どこにあるかしってる?」
「たっちゃんの青い手ぶくろ、ここにあるよ。
ぼくのあたまの上」
なんとなくゆきだるまがそういった気がした。
ゆきだるまのあたまの上には、なにもない。せっかく、ゆきだるまがおしえてくれたのに。
ぼくは、ゆきだるまのうしろにいった。
ぼくの青い手ぶくろが、ゆきの上にあった。
そっか。あたまの上においたのが、おちたんだ。
きのう、ぼくはゆきだるまに目とはなと口をつけて、何かもっとあるといいなっておもったんだ。
ぼうしのかわりに、ぼくの青い手ぶくろをゆきだるまの上にのっけたら、カンペキだった。
ぼくは、ゆきだるまに手ぶくろをかしてあげたのを、おもいだした。
「ゆきだるまさん、ぼうしをかえしてね」
ぼくは青い手ぶくろをはめた。
ゆきだるまさんのぼうしは、どうしよう。
「お日さまがあったかいから、もういらない。ありがとう」
ゆきだるまさんがそういった気がした。
「たっちゃーーん、おやつですよーーー」
おかあさんの大きなこえがきこえた。
「はーい」
ぼくも、おかあさんにきこえるように、大きなこえでへんじをした。
「ゆきだるまさん、またね」
ぼくはゆきだるまさんに手をふって、おうちにむかってはしった。シャクッシャクッ、シャクッシャクッ。
おやつは、あまいシロップのホットケーキだった。