レントの魔法、炸裂する
ゴォ! とまるでドラゴンが羽ばたいたような砂埃が巻き上がり、風魔法はシフルのすぐ横を吹き抜けていく。
そのあまりの勢いに、シフルの髪が数本切れて、はらりと落ちた。
融合した風魔法はさらに勢いを増し、うねりをあげながら立ち並ぶ生徒たちの上空を通過し、正面のステージを越え、布を被せられた校長の石像に激突した。
どがあああああああん!!!!
強烈な音が中庭に響き渡る。
「な、なんだ!?」
「魔族の襲撃か? テロか?」
「うわああ! 石像が!」
巨大な石像が布を被ったまま倒れて、地面に激突した。
どごん、がらん、がらがらがら……と、あからさまに粉々になっている音が響く。
「お、おい、どうするんだ、あれ……」
蒼白な顔で呟くシフル。
「知らないわよ」
呆れた顔でため息をはくサラ。
「わ、わたしのせい、ですよね……ご、ごめんなさい!」
その場に土下座する勢いで頭を下げるディーネ。
「いや、悪いのは君じゃない」
しかしレントは、ディーネにそう告げると、シフルに向かって言う。
「おい、危ないじゃないか!」
「あ、はあ?」
「なんであんな強力な魔法を放ったんだ! へぼいウィンドブラストに見せかけて、あんな強烈な破壊力を仕込んでおくなんて!」
レントは、石像を破壊したのは、シフルの魔法だと思っている。
王立魔法学園の校長の石像だ。魔法防御のための障壁が施されていないはずはない。
そして、自分が放った魔法には、魔法障壁を突破できるほどの威力は持たせる時間がなかった。
しかも、施されている魔法障壁は現代魔法のものだろう。それを突破できたのなら、原因はシフルが放った現代魔法に決まっている。
レントはそう考えている。
しかし——。
「ば、バカを言うな! それはこっちのセリフだ! お前こそ僕を殺す気か! もうちょっとズレていたら当たっていたぞ!」
「ふざけないでよ。とっさに放ったあんな弱いウィンドショットで死ぬはずないじゃないか」
もちろん、なんの防御もしなければ危ないかもしれない。
だが、レントが放ったのは時代遅れの古代魔法だ。そんなもの、現代魔法の防御を使えば、簡単に防げるに決まっている。
しかしシフルは目を見開いて怒鳴ってくる。
「あ、あ、あれがウィンドショットだと!? ふざけるな! あんな強力なウィンドショットがあってたまるか! どう考えてもウィンドカノンだろ!」
ウィンドカノンはウィンドショットよりも強力な風の塊を撃ち出す魔法だ。主に城の攻略などの戦争時や大型モンスター退治などに使用される魔法で、対人戦闘で使うようなものではない。
「当てつけか! 当てつけだな! 当てつけに決まってる! Cクラスのくせに僕をバカにして! お前、名前は!?」
「だから俺はファーラント家——」
「うるさい黙れ! Cクラスの落ちこぼれの名前なんか憶えてやるもんか! バーカバーカ!」
自分で訊いておきながらレントの言葉を遮って、シフルは逃げるように立ち去っていった。
次は20時くらい更新予定です!