レント、ディーネと出会う
ヒロイン二人目!
魔法学園に到着した。
正門を入ったところの前庭には、貴族や大商人の馬車が停められ、着飾った新入生たちがお供を連れてぞろぞろと歩いている。
レントはその脇を抜けて入学式の会場へ向かう。
田舎の貧乏男爵の息子を気にする者は誰もいなかった。
それどころか、
「きゃあ、ルイン様よ!」
「素敵! なんてお美しい!」
「私を見て笑ったわ!」
「違うわよ私よ!」
ちょうど到着した馬車から現れた新入生に、貴族の令嬢がワッと群がっていき、レントは突き飛ばされてしまう。
「ちょっと! 邪魔よ!」
「ご、ごめん……」
すごい剣幕の女子生徒に、文句を言う隙もなかった。
ルインというのは、たしかマナカン王国の王子だ。
四属性魔法全てを自在に使いこなす天才で、王位継承権は五位ながら、国民の人気は一番という。
美しいと評判の王妃の血を受け継ぎ、ものすごい美形とのことで、特に女性の人気が高いそうだ。
ちなみにレントも四属性の魔法を全部使うことができるが、魔力ゼロの自分が使うものなのできっと大したことはない。王子が使う魔法は、現代の魔法戦でも通用する、しっかりとしたものなのだろう、とレントは考える。
そんな王子をちょっと見てみたい気もしたが、取り囲む女子が多すぎてまったく姿はうかがえない。
レントは諦めて入学式会場に向かった。
入学式会場は、普段は訓練場として使われている中庭だった。
すでに多くの生徒が並んでいる。
正面には仮設のステージと、その奥に布を被せられた大きなものが建っていた。
あれはなんだろうなとレントが眺めていると、案内役らしい教官が声をかけてきた。
「君は新入生かな。どうかした?」
「あ、はい。あの、布を被っているのはなんですか?」
「ああ、あれはルナ・リバロ校長の石像だ。先日、あの方が新たに魔法術式を生み出した功績が認められてね。上位魔法使いのさらに上、最高位魔法使いの位を国王から授かったんだ。その記念として石像が作られたのさ。入学式の最後に、あの石像も披露される予定だ」
ルナ・リバロの名前は田舎者のレントでも知っている。
魔法によって長寿を獲得し、すでに百歳を超えるにも関わらず現役の魔法使い。
現代の魔導の最高峰と言われ、魔法学の新たな道を次々と切り拓いている。
石像が作られるのも当然だろう。
「そろそろ入学式が始まるぞ。そろそろ列に並びたまえ。君の所属と名前は?」
案内役の教官に言われ、レントは答える。
「あ、はい。俺はCクラスの——」
と名前を言うより早く、なんなら『Cクラス』の『ク』のあたりで教官の態度が激変した。
「Cクラスならあっちだあっち。なにボヤボヤしてるんだ。さっさと並べほら」
とレントの背中をバシバシ叩いて、まるでここから追い出そうとでもしてるみたいな態度だ。
「痛っ、痛いって、わかりましたよ……」
レントは教官から逃げるように、言われた場所に向かう。
しかしすぐに迷ってしまった。
教官が示したのは中庭の外れだったのだが、そっちには魔法の訓練で使うらしい道具が置いてあるだけで、並べるようなスペースが見当たらない。
「あれ、どこに行けばいいんだ?」
「あ、あの……」
レントが困っていると、声をかけてくる生徒がいた。
薄い水色の髪の小柄な少女だ。
大人しそうな顔を、困ったような表情にしている。
「あの、Cクラスの方ですか?」
「うん、そう。君も?」
「そ、そうです。よかったー。どこに行ったらいいのかわからなくて……」
「……奇遇だね。俺もなんだ」
「え……」
言葉に詰まってしばし見つめ合い、二人はどちらともなく笑い出す。
「えっと、僕はレント。レント・ファーラント。君は?」
「わ、わたしはディーネです。よろしくお願いしますっ」
としっかりと頭を下げるディーネ。
自己紹介は済んだが、どこに行けばいいのかは相変わらずわからない。
そこへ。
「なに、あの教官の態度は。気に入らないわね」
また一人生徒がやってきた。
「あ、君は」
さっき路地裏で黒フードと対峙していたサラだった。
「さっきはどうも。えっと、君もCクラス?」
意外だった。彼女の魔力の総合値はたしか一万を超えていた。そんな生徒はほとんどいなかったはずだ。
なのにどうしてCクラスに……。
「っ……!」
サラはレントに気づくと、びっくりしたように目を丸くして、そのまま顔を逸らしてしまった。
「えーと」
なんだかわからないが嫌われてしまったのだろうか。
ともかく、Cクラスの生徒がここに集められているのは間違いないようだ。
しかし他のクラスの生徒がスペースを与えられてきちんと整列しているのに対して、なんていい加減な扱いだろう。
レントが困っていると、
「邪魔だ。どけよ、Cクラスの雑魚ども!」
そんな声をかけられた。
見れば、いかにも貴族という服装の男子生徒がニヤニヤしながら立っていた。
本日はここまで!
続きは明日更新予定です。
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