レント、サラを助ける
ヒロインと遭遇!
「ん?」
ふとレントは足を止めた。
魔法学園まであと少しといったところ。
その路地裏に人の姿を見つけたのだ。
その人が魔法学園の制服を着ていた。
見覚えのある生徒だ。
「あれは……」
入学試験のときすごい成績だった赤髪の少女。
確かサラとかいう名前だった。
一方、彼女と向き合っているのは、黒いフードで顔を隠した、いかにも怪しげな人物が三人。
サラが三人に向かって告げる。
「諦めなさい。そんな怪しい格好で王都をうろつくなんて、捕縛してと言ってるようなものよ」
どうやら、サラが黒フードたちを見とがめたらしい。
声をかけたら黒フードたちが逃げ出したので、それを追いかけて、追い詰めたところ……といった感じだろう。
「チッ……」
黒フードの一人が小さく舌打ちした。
そして、なんの予備動作もなく魔法を放った。
闇属性・第七位階魔法、ダークフレア。
「っ……ファイアウォール!」
サラはとっさに炎の壁で防ぐ。
しかし黒フードが放った闇色の魔法は触れた瞬間に彼女の魔法を消失させた。
「なっ……!」
サラは驚きに目を見開く。
まさか自分の魔法が破られるとは思っていなかったようだ。
確かに今のファイアウォールはすごい魔力量だった。
しかし、炎属性の第二位階魔法では闇属性魔法とは相性が悪すぎる。
「ダークアブソーブ……!」
べつの黒フードがさらに魔法を繰り出す。
物質を消失させる闇属性魔法だ。
黒フードはサラをこの場で消す気だ!
レントはとっさに駆け出す。
闇色の球体は地面や周囲の壁を取り込み消失させながらサラに迫る。
「な、なにっ……!?」
彼女は初めて見た魔法に驚いたみたいな様子で、その場から動けないでいた。
「伏せて!」
レントはそんな彼女の前に躍り出る。
「ライトショット!」
光属性・第七位階魔法を放つ。
闇色の球体に激突した光の弾丸が弾け、眩い光が路地裏に満ちる。
「ぐっ……!」
あまりの眩しさに目を伏せるレント。
やがて——目を開けたときには黒フードたちの姿は消えていた。
「ふう……」
レントは息をつき、サラに振り返る。
「あの、大丈夫だった?」
「……すごい」
レントが差し出した手を取ることもなく、唖然とした表情でサラは呟いた。
「なに今の魔法……私の魔法が効かないなんて……しかもその魔法を打ち破るなんて」
「あのー」
「っ!」
レントが再度呼びかけると、サラはハッとして彼を見る。
それからなぜかすごい怒ったような表情で彼を睨み、自分で立ち上がると、走って路地裏を立ち去ってしまった。
「……えーと」
レントは差し出した手を持っていく場がなくなって立ち尽くす。
けっきょくあの黒フードは何者だったんだろう。
あと、サラはどうしてなにも言わずに立ち去ってしまったのだろう。
そんなことを思うが、すぐに思い出す。
「やばい! 入学式!」
レントも慌てて路地裏を飛び出す。
きっと彼女も入学式に遅れると思って急いだのだ。
レントはそう考える。
基本的にお人好しなのだった。
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