Cクラスの担任、ミリア
歳は二十代半ばだろう。かなりの美人で、大人の雰囲気を漂わせている。
「初めまして、皆さん。ワタシがこのクラスを担当するミリア・ピースマーキスよ。よろしくお願いしまわわわわわ!」
と、教壇に向かいながら挨拶をしていた教官は、段差につまずいてどしんと転んだ。
「だ、大丈夫ですか?」
「え、ええ。もちろんよ! 魔法学園の教官は、この程度で痛がったりしません——ああ、スカートが破けてるっ! 高かったのにっ!」
「…………」
泣きそうな顔で叫ぶミリア教官。
しかし彼女は気を取り直したように立ち上がり、教壇に立つと、こほんと咳払いして話を再開する。
「ええっと、まずは出席を取りますね」
「見れば、揃っているのはわかると思いますが」
「うっ……」
サラに冷たい声で言われて言葉を詰まらせるミリア。
「そ、そうね……では、皆さん自己紹介を……」
「必要を感じません。ここは魔法の技術を習得する場であって、友達を作る場ではありません。早急に授業に入っていただけますか」
「ううっ……」
更に冷たい声で言われて、更に言葉を詰まらせるミリア。
と、そこへムーノが口を開く。
「ほんとブライトフレイム家のお嬢様は偉そうだな」
「なんですって?」
「なにがあったのか知らないけど、あんたもCクラスなんだからよ。Cクラスの教官のやり方に従うべきなんじゃねえの?」
「私はっ、本来ならこんなところにいるべきじゃないの……! お友達ごっこなんかしてる余裕はないのよっ!」
「オレだって、自分だけは別世界の人間ですよみたいな顔してる貴族と仲良くなんかしたくねえな」
「なんですって!」
ガタッ、と立ち上がるサラ。ムーノも椅子を蹴立てて立ち上がる。
「ちょっと、ムーノっ」
「さ、サラさんも落ち着いて」
レントとディーネが二人を止めようとする。
が、それより早く、
「ふふふ二人とも、喧嘩はだめよぉおお!」
バババン! と、教室の中央に小さな雷が発生した。
火と風の二属性を扱えないと使えない雷撃系魔法『ライトニングフラッシュ』だ。
雷の直撃によって、机が一個丸焦げになる。
さすがは王立魔法学園の教官である。ちょっと抜けているように見えても、魔法の実力はたしかなもののようだった。
「…………」
「…………」
サラとムーノは無言で席に座りなおす。
生徒を静まらせるために教室内で魔法をぶっ放すミリアに恐怖を覚えたのかもしれない。
しかし、当のミリアは笑みを浮かべて、
「よかった。みんな、同じクラスの仲間なんだから仲良くしてね。それでは授業を始るわよ」
次回は授業回!
夜更新予定です!





