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結婚相手について

結婚が決まってからはあわただしく毎日が過ぎていった。忙しく過ぎていく毎日で結婚への不安や憂鬱など覚える暇などなかった。唐突に決まった結婚にすぐ下の弟フィンは驚き「なんでそんな大事なことを勝手に決めるんだと」不貞腐れ、一番下のまだ12歳になったばかりの弟フィルは嫌だとぐずった。結婚の話を聞いた長女アリスはまだ小さい子供たちを連れて駆け付け準備を手伝ってくれた。アリミアもコンサートを切り上げアリアが王都に行く前までに帰ってくると連絡がきた。

「やっぱりあたしは愛されているのだ」とこの改めて(きょう)(だい)との過ごす日々で感じることがでる。その愛を返さなければならない。結婚相手に関することは事前にアリアにほとんど伝えられなかった。アリミアは「そんなのおかしい」と父に直談判したようだが、父は決して多くを語らなった。「この結婚はわがカタパルフォフ家の運命を担うのだ」と父は家族に言った。しかし、それだけでアリアには十分だった。父が私のために私を「期待」して持ってきてくれた縁談である。だからこそ、愛する家族のために「期待」添わなければならない。

王都に向かう当日「どうか幸せになりなさい」母が優しく微笑んでくれた。一夫一妻制のカタリス王国で5人の子供を産んだ母は穏やかで優しい目をしていた。アリアはこの目が大好きだった。アリアの住む領地から王都までは馬車で3日はかかる距離だ。家族全員で向かうことはできない。普段は父(最近は仕事を覚えるためフィンもだが)が王都と領地を往復し領主としての仕事をこなしていたため、アリアも王都ヘは片手で数えるほどしか行ったことがない。今回は父が付添人としてついてきてくれることになっているため、家族とはここでお別れとなる。

「ありがとう。お母さま。私「期待」に応えますわ。必ず」アリアは優しく微笑み返し

そう答えた。優しい家族たちに見送られアリアは実家を出発した。




「お前の結婚相手である。ダリス・インフィード様は紅の瞳を持つ魔法使いであり、王宮からの期待も厚いお方だ。お前の穏やかな気質はきっとあの方の癒しとなる」父は馬車の中でそう語った。

「紅」それは最高峰の魔力を持つ者の証である。この世には「魔法」や「魔力」が存在する。しかし、すべての人間が「魔法」を使えるわけではなく、「魔力」をもつ人間は魔法使いと呼ばれる特別な存在だけ。この国の人々ならば誰もが知っている伝説「深紅の魔女」の力が人間に宿ったのが魔力の起源とも言われている。カタリス王国の繁栄には「魔法使い」の存在は不可欠であり、私たちの生活には彼らによって作られる魔法具の存在が欠かせない。だから「魔法使い」は尊敬され手厚く優遇される。それがこの世界の共通認識である。かくゆうアリアも子供のころは「魔法使い」が出てくる冒険小説や恋物語に憧れ、屋敷の図書館にこもり本を読みふけっては妄想…もとい想像の翼を広げていた。

魔力は瞳に宿り、魔力を持つ人間の目は美しく輝く。その中でも「紅」を宿す瞳は特に珍しく現在その目を持つ人間は「ダリス・インフィード」ただ一人であるという。

 「なぜ、そのような素晴らしい方と私の結婚が決まったのでしょうか」

そんなすごい人物と田舎の伯爵家であり地味で目立たないアリアの結婚が決まったのか…それはだれしもが思う疑問である。アリアは決して不美人なわけではない。ただ、上の二人の姉があまりにも美しすぎたのだ。アリアの存在が霞むぐらいに。そんな美しい姉たちに囲まれて育ったアリアは自分の顔はごくごく普通もしくはそれ以下だと考えている。周囲もアリアをほめるは優しいだとか穏やかそうだとかいった。本当に「美しい」人が近くにいるのだから何をいっても嘘になる。だからアリアは今まで一度も容姿をほめられたことがない。だからこそ不思議なのだ。とくに秀でたものがない自分が「紅」の魔法使いの妻となることが。



「ダリス様は8年ほど前に魔力を見出され、もうすぐ20となる。お前とは同い年で、王宮に召され4年ばかりだ。だからこそ、生活を支えてやる存在が必要なのだ。そして、その瞳に宿る魔力を後世に残さなければならない」

どこか含みを持たせる言い方の父答えを聞いてアリアはどこか「あぁ・・」と納得した。おそらく彼にはないのだ。人脈も後ろ盾もだからこそアリアが必要なのだと。

両親のどちらかが「魔力」持ちであれば必ずではないが子に受け継がれる可能性が高い。だからカタリス王国長い歴史の中で「侯爵」以上の爵位をもつ貴族のほとんどは「魔法使い」の家系であり、現在この国の中枢を担う「魔法使い」は有力な貴族たちばかりである。そんな世界に「紅」をもつダリスが突如現れたのだ。父は「見出された」といった。つまり、彼は今時珍しい「平民」の家庭から生まれた「魔力持ち」だということだ。まれに、魔力もちでない両親からそのような子が生まれることがあるというが…まさかそれが「紅」だとは。「魔力」が強いもの同士は子をなすことができないという。強すぎる力に子の体が耐えられないからだ。伯爵家であるカタパルフォフ家は先の戦争で活躍し爵位を与えられ歴史はかなり浅い。そしてもちろん「魔力」もちの家系ではない。だからこそ「好都合」なのだ。アリアがダリスの妻となることで彼は「貴族」とのつながりを持つことができる。そしてカタパルフォフ家は王宮とのつながりを得ることができる。お互いに利点しかない結婚なのだ。しかし、父はどうやってこんな「大物」との結婚話をとりつけてきたのか…「侯爵」以上の貴族でも「魔力」を持たずに生まれた女性はいただろうに…「期待」の意味に納得したアリアはさらに気を引き締めた。

『頑張らなくては。これから国の柱となるダリス様を支えるために、そしてカタパルフォフ家のためにも』アリアにとって一生に一度の大仕事なのだから。


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