表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
知恵と義眼と好奇心  作者: 吉城カイト
19/86

第十八話 僕と一つの申請書


 僕が探求部に入ることを決めた次の日。


 慧悟(けいご)は僕に一枚の紙を手渡してきた。いわゆる部活の申請書というやつだ。


 普通ならば皆は四月から部活に入ることを決めて活動しているのだが、僕が探求部に入ることを決めた時期としては既に二ヶ月が経過している。


 別に四月の頭に入らなければならないという規則はなく、いつ入部しても良いらしいが、その代わりにこうした手続きみたいなものがあるらしい。


 僕は既に誰もいなくなった教室で一人、この用紙とにらみあっていた。


 朝に慧悟から渡されたというのに、放課後になった今もかけずにいた。


 本当に僕が部活に参加してもいいのだろうか。うまく他人と関係を築けるだろうか。


 クラスメイトともまともに会話できない人間が課外活動に参加できるというのだろうか。


 そんなマイナス思考だけが頭の中をを巡り、先程から何度もシャーペンを握ったり離したりしている。


「うーん、どうすればいいんだ……」


 やっぱり慧悟には悪いが、この話はなかったことにしてもらおうか。


 そもそも今回の件は僕の義眼に一端があったのだ。それがなくなった今、慧悟や才条(さいじょう)さんとこれ以上の関係性を持っていいのだろうか。


 再び『赤の世界樹』が発動した時だけ、慧悟に相談することにしよう。


「ん、まだいたのか。早く帰れよ」


 誰かがガラッと教室のドアを開けて入ってきた。ってなんだ、担任の藤崎(ふじさき)先生か。


 しばらく先生は天井を見ていたかと思うと、思い出したかのように言った。


櫟井(いちい)、お前確か部活の申請書持っていったよな?」


「え、ああそうですが」


 僕が、じゃなくて慧悟がなんだけど。


「ちゃんと書いたら俺んとこ持ってこいよ」


 藤崎先生はニヤリと笑って僕の顔を見た。


「いや、あの、やっぱりやめようかと」


「いいか? 誰かとの関係性を保っておくのは難しいかもしれないが、それは大切なことだぞ。一歩でいいから踏み出してみろよ」


 僕の声とかぶって喋ったせいか、僕の言葉は伝わらなかったようだ。


 そして教えをさとしたと言わんばかりに一人でうんうんと頷いて教室から出ていった。


 ………。


 やっぱり出さないといけないのかなぁ……。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ