第十三話 僕と重なるスクリーン
「くっそ……。どっちに行ったんだ?」
「……」
校門を抜けてずっと走り続けたせいで息切れして、慧悟に応えることができない。
「おい、しっかりしろよ雄馬。人の命がかかってんだぞ!」
わかってる、そう言おうとしたが、やはり声に出なかった。
「とりあえず部長よりも先に例の路地に向かった方がいいか? つっても、どこをどう帰ってんのかわからないしな……。途中で会う可能性に賭けるのもリスキーすぎるか」
「……そう、だね……」
切り替えなくては。いつまでも休んでいるわけにはいかない。慧悟がさっき言った通り、人の命がかかっているのだから。
それに僕が彼女に関わってしまったせいで、こんな運命が決まってしまったのだから。
「絶対に、助けよう!」
なんとか声を絞り出して、顔を上げた。
「その目は大事だぜ」
慧悟が何かをぼそっとつぶやいたのだが、息切れが少しまだ続いていたせいでよく聞き取れなかった。
「急ぐぞ!」
そう言って再び僕らは走り出した。
**
それから休むことなく走り続けて例の路地へとたどり着いた。
だがそこには彼女の姿はなかった。それどころか、他の人の気配もなかった。
「おい、本当にここであってんのか?」
慧悟は周辺をきょろきょろと見渡しながら聞いてくる。
「たぶん、まだ先の未来なんだと思うんだけど……」
場所は確かにここだ。だけど、今ではないとしたら、違うのは時間だろう。
「そうか」
慧悟はそう言うと、ふっと息をついて路肩に座り始めた。
まだ時間に余裕があると考えているのか、少し緊張感が抜けているように感じた。
確かに僕が先ほど視た光景は未来のことを映していたが、それがいつ起こるのかまではわからない。だけどここ一週間で何度も同じ光景を視たのは初めてだった。
それが意味するのはなんだろうか。
あくまで推測だけど、僕が考えた答えは『スクリーンが重なれば重なるほど、その出来事が起こるのが近い』ということだ。
「おいっ! 部長来たぞ!」
慧悟が指さした方を壁から顔を出してのぞき込む。
確かに肉まんを片手にほおばりながら歩いてくる彼女の姿があった。
どうやら遅かったのは、寄り道をしていたらしかった……。