第十一話 僕と彼女と再会と
終礼を知らせるチャイムが鳴る。
すぐさま慧悟は僕の机に飛んできた。
「ほらすぐ行くぞ」
自分のことでもないのにどうしてこうまで積極的になれるのだろうか。僕には絶対できそうにないな。
慧悟があまりにも急かすため、僕は慌てて自分の荷物を鞄に放り込んだ。
「今日は部活無いの?」
教室を出て歩きながら聞いてみた。すると、慧悟は呆れた表情で僕の顔を見てくる。まるでコイツなに言ってんだとでも言いたげな感じだ。
「ホントになに言ってんの? 今日はお前の案件が部活になるんだろうが」
「………あ」
こういうところだ。慧悟は友達のためならば一度決めたことは絶対に通す。
自分のことさえも後回しにしてしまう。
自己犠牲の精神とはちょっと違うんだろうけど、それに似た何か、彼の信念を持っているように思う。 中学の頃はもっといろいろ突っ走って、いい意味で周りを巻き込んでいたんだけど。どこか変わってしまったようだ。
講義棟を抜けて渡り廊下を渡ると、課外棟へと向かう。
課外棟には多くの実験室や文化系の部活動で利用する教室が並んでいる。
コンピュータ部、美術部、書道部、将棋部、などなど。
今までこっちの棟に来たことがなかったためか、この学校にこんなに多彩な部活があることを知らなかった。というよりはこれくらいあるのが普通なのかも。
「すまんな。我が部活は一番奥にあるんで」
「え? ああ」
違うことを考えていたせいで、生返事になってしまった。
もう少し歩いた先に探求部はあった。いや、ここって確か……。
「指導室じゃん」
「もとな」
ええっと、どういうことなんだろうか。
「まあ話すと長くなるから手短に言うと、ウチの部長が交渉して使わせて貰ってるわけだ。あの人一応学年主席だから」
なるほど、成績優秀な人ならば学校も多少の無茶を聞いてくれるわけか。
「んじゃ、入るか」
慧悟はそう言ってドアを開けた。
迷いやためらいはもうなかった。一刻でも早く彼女を見つける手がかりが欲しい。
「こんちはー。あれ、恵佳はまだ来てないのか」
部屋の中には机と椅子がセットで五つ。それと大きめの長机が一つあり、その上には古い型のパソコンが置かれていた。
そして慧悟が行ったとおり、初瀬川さんはまだいなくて。代わりにいたのは。
「ああ慧悟くんですか。本日の案件の準備を」
椅子に座っていた彼女と目が合う。
「へ、変質者さん!? どうしてここに!?」
そう。
この部室にいたのは探求部の部長にして、ストーカー騒動で出会った彼女だった。