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プロローグ
なかなか投稿出来てませんが、楽しんでもらえたら嬉しいです。
最後に僕が見たのは、トラックの運転手の顔だった。
焦燥。
顔を歪めて苦悶の表情を浮かべる。
否。
僕の右目が本当に最後に見たのは、両親の顔だったかもしれない。
遠のく記憶を手繰り寄せながら、必死で母の手を握った気がする。
ただただ聞こえてくるのは、トラックの甲高いクラクションのみ。
その瞬間。
僕は―――――櫟井雄馬は命を落とした。
――――――――かと思われた。
側に居た誰かがすぐに救急車を呼んでくれたらしい。
その後両親は即死した事実を聞かされた気がする。
一方僕は右目を完全に失い、手術担当医は僕にある示談を持ちかけた。
それは、義眼を入れるかどうか。
別に僕は義眼だとしても見えていればそれでよかった。
ただ問題だったのは、それが真っ赤な義眼だったという点。
のちに僕は恐ろしい真実を知ることになる。
この世のどこかに存在する赤い義眼。『赤の世界樹』。
それはあらゆるものの過去、現在、未来を断片的に見通せる恐るべき力を持ったものだった。