9 お誕生日パーティ
イリスと模擬戦をした翌日から、毎朝屋敷の庭をランニングすることに決めました。イリスに模擬戦で勝つためには、圧倒的に体力が足りていないと感じたからです。
ランニングをした後は、朝食をとってリリアと勉強、昼食をはさんでイリスと剣術をするというのが私のルーチンワークとなりました。雨の日は、剣術はお休みで、礼儀作法の練習です。
こう見えて私、大貴族の令嬢ですからそれなりの作法は必要とされるので。はあ、面倒。
勉強の方は、やっぱり楽。あまり難しいこともないし。リリアも少しずつ勉強の難しさを上げてきてはいるのだけど、私としてはまだまだ簡単だと思うようなレベルなのよね。もうちょっと骨のある勉強をしたいわ。
剣術はやっぱりイリスに勝てない。少しずつ強くなっていると感じてるのだけど、そのたびにイリスも強くなって勝てないのよ。
まあ、そんなこんなで、一年ほどが過ぎ現在私は、馬車に揺られています。私の正面には、お母様が座っておられます。
理由は、お隣の領地で開かれる貴族令嬢のお誕生日パーティに招待されたからです。(実際に招待されたのは、お母様だけだけど、令嬢が私と同い年ということもあってお母様が一緒に来るようにと言われたの)
お隣の領地は、イフリート伯爵家が治めています。イフリート伯爵領はアクシス公爵領から見て東側に位置しているのですが、二つの領の間には大きな山脈が横たわっています。
山脈はあるけれど、アクシス公爵家とイフリート伯爵家の仲は昔から良くてお母様もイフリート伯爵夫人とは、お友達なんだそうな。
今回は、そんな感じの理由で招待されたらしい。
ちなみに、イフリート伯爵家令嬢のカレン・ラン・イフリートと私は面識がありません。まず屋敷からほとんど出してもらえないし、パーティも初めてだしね。
お母様は、昨年もこのお誕生日パーティに行かれていたみたいで、彼女とは面識があるらしい。とってもいい令嬢だったそうです。
そんなことを考えているうちにイフリート伯爵家の屋敷に到着していました。
私とお母様は、馬車を降りて、屋敷の中に入っていきます。イフリート伯爵家の屋敷は私のところの屋敷より少しこじんまりとした印象があるけれど、趣深いものがあって私は好きだった。
で、今日のパーティはガーデンパーティで、お庭の方へ向かいました。
パーティの会場にはもう何人か今日のパーティに招待された人が来ていて、にぎわっていました。
「ユリシア、まずはイフリート伯爵にご挨拶に行きましょう」
「はい。お母様」
私はお母さんの後についていきました。
お母様の向かう先には数人の男の人たちに囲まれた一人の男性がいました。
その男の人はお母様が近づいてくることを見ると周りにいた人たちに会釈し、逆に近づいてこられました。
「イフリート伯爵、今日はお招きいただきありがとうございます」
「アクシス公爵夫人、今日はわざわざ娘の誕生日パーティに来てくださりありがとうございます」
イフリート伯爵は、そこまで言うとお母様の後ろにいた私の方に視線を向けてきた。
「ところで、アクシス夫人後ろにおられる少女は一体……」
「この子は、娘のユリシアよ。あなたの娘と同じ六歳なのよ。ちょうどいい機会だと思ったから、今日は連れてきたのよ」
「そうでしたか」
イフリート伯爵は、私のことを品定めするような目で私を見てきた。
「ユリシア、こちらがモルト・ラン・イフリート伯爵。よく懇意にしてもらっているわ。ユリシアも自己紹介なさい」
「はい。初めましてイフリート伯爵。ユリシア・ティオ・アクシスです。よろしくお願いします」
私は一歩前に出てからカーテシーをした。しっかりと出来ているかしら。礼儀作法の練習をするとき以外あまりしてないし……
「よろしく、ユリシア嬢」
「はい」
良かった。しっかりできていたみたい。
「そういえば、ユリシア嬢は王宮で開かれた五歳のお祝いパーティに出ていませんでしたが、何かあったのですか」
「あの時は、この子が体調を崩しっちゃったのよ」
「それは、残念でしたね」
はい、本当に残念でした。
「ユリシア嬢」
イフリート伯爵がこちらを見てきました。
「カレンには、友達と呼べる友達がいません、なのでユリシア嬢はカレンの友達になってやってほしい」
「はい、分かりました」
私も友達いないからね。同い年だし友達になりたいです。
「さて、もうすぐ始まります。今日は楽しんでいってください」
「そうさせてもらうわ」
私とお母様のもとからイフリート伯爵が離れていった。
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