6 地獄耳
よろしくお願いします。
あれから30分がたち、やっとリリアのお説教が終わった。とりあえず、長かった。私の中では、気の遠くなるような時間、お説教されていた感じだ。
あーだるい。
しかも、しかもだよ。
私がリリアにお説教されている途中でイリスが書庫にやってきたのだけど私がお説教されているのを見たら、軽く微笑んで壁ぎわで、私がお説教されているのを傍観していたんだよ。
まあ、下手にリリアの方に加勢されて、お説教が長引くよりは、ましと言わざるを得ないけどね。
そして今は、屋敷のベランダでお茶をしています。あ、お茶というのは、もちろん紅茶ですよ。一応私も貴族の令嬢ですし。
「ねえ、イリス、少しこちらに来てくれないかしら」
私は、リリアが少し離れたところにいることを確認してからイリスを呼びました。あんまり聞かせたくない内容だからね。
「ねえ、イリス。リリアって怒らせるとあんなに怖いの?」
「それについては、わかりかねます。リリアが怒っているところを見るのは、初めてだったので」
イリスは知らなかったのね。まあ、いいわ。
「とりあえず、リリアは怒らせない。心に決めたわ」
「そうですね」
「ーー何か私にご用ですか」
「げ、リリア」
いつの間に近づいたのでしょう。わかりません。さっきまで少し離れたところにいたはずなのに。
にしても、小声でイリスとは会話していたはずなのに聴こえていたんですか。
「げ、とはなんですか。げ、とは」
「いいえ、なんでもないです」
リリアは、怒らせてはダメ。リリアは怒らせてはダメ……
っていうか立場変わってない?私が一応リリアの雇い主で、リリアは私付きの待女のはずなのだけど……
「まあ、いいです。何かあればお呼びくださいね」
「ええ、わかっているわ」
ふう、何とか、怒らせずに済んだ。にしても……
「リリアの地獄耳」
「何かおっしゃりましたか」
「いいえ、何も」
決定ー! リリアは、地獄耳。……はあ、無駄なことは、出来るだけ言わないでおこう。絶対聞かれる。
とりあえず、私は、お茶を一口、口に含んだ。
「あ、そうそう、お嬢様。私は本気のお説教はあんなものではございませんので」
「ぶー。げほ、げほ」
リリア、何、最後に爆弾発言してくれてるの。危うくお茶をこぼしてしまうところだったじゃない。
まあ、今の言葉を聞いて私の中でまとまったことが一つある。それは……絶対にリリアは怒らせないということ。今回のでも私、相当精神的にきているし、これ以上となると体が持つかわからないし。
まあ、とりあえずこの話は、ここまでにするとして、書庫から持って来た帳簿でも見てみましょうか。
「お嬢様、先程から気になっていたのですが、お嬢様が書庫から持ってこられた、その本は一体なんなのでしょうか」
「帳簿よ。アクシス公爵領の帳簿」
「帳簿ですか」
「そうよ、リリア。まあ、十年ぐらい前のものだけど」
私は適当なページを開いた。
うーん。ひどい。パッと見ただけだけど、書式形式がところどころで違っているから見にくい。
まあ、それでもお金の管理は、しっかりとしている見たい。こういう場合、不正とかしていそうな気もしていたけど。
「お嬢様、帳簿なんて見て面白いですか?」
「ええ、面白いわ。帳簿には、お金の流れが載っているし、それを見れば何かがあったか読み取ったりできるもの」
帳簿というものは、本当に面白い。収支の結果からその時の経済の様子を考えてみることができる。
今の世の中お金が関わらない物事なんてないと言ってもいい程だし。
だから、この領で何が起こったというのが丸分かりなの。
ただ、この帳簿は、見にくいから大変なのだけど……
「まあ、とりあえず帳簿は面白いのよ」
「そ、そうですか」
リリア、なんで引くの?
私、何かしたかしら?
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