4 勉強
あの後、リリアの持ってきた食事を取って、医者に体を見てもらった
特に悪いところもなくて、健康体そのものと言われていて、リリアもイリスもほっとしているのがちらっと見て取れた。そんなに心配してくれていたのね二人とも。
で、現在、私はベットにいた。
「ねえ、イリス、動いてはダメなの」
「はい、お嬢様。まだ何かあるかわかりませんので。いきなり倒れられては困りますし」
「でも医者は、大丈夫だって」
「しかし、その後で、『何が原因なのかわからないからあと、二、三日は、絶対安静にしなさい』ともおっしゃられていました」
そうなのだ。医者は、悪いところも見付けれず、原因もわからないからと言って私に『絶対安静』を言い渡したのである。まあ、当の私は大体、理由がわかっているのだけど。多分、前世の記憶を一気に取り戻したことで五歳の私の脳の処理能力の限界を超えてしまって、意識が保てなかった、というのが私の見解。
「あ~ひま~。イリス何かすることないかしら」
「そうですね。・・・それではお勉強などされてはいかがですか」
「そうね。勉強をしましょうか」
まあでも私、一応大学を首席卒業した記憶を持っているから、今更勉強することなんてないと思う・・・
と思っていた時もありました。はっきり言って、文字が一切わかりません。この世界、日本とは言語が違うものらしい。
ユリシアとして、五年間この言語の中で生活していたから、言語を理解する事が自然に出来ていて、それを前世の記憶を取り戻した後は、勝手に脳内変換してこの世界の言語から、日本語に訳していたみたいです。
逆に話すときは、日本語を話しているように思っていたのですが、声に出ているのはこの世界の言語みたいです。
ちなみに、前世の記憶を取り戻した後の私の人格は、ユリシアと瑠璃が半分半分で混ざったのではなく、ユリシア三割、瑠璃七割ぐらいの比率で混ざっています。つまり瑠璃としての人格が大きい分、自分を瑠璃として認識してしまうことが多いわけです。理由は、瑠璃としての方が長く生きていたというのと、ユリシアという人格がまだ完全に出来上がっていなかったからでしょう。
まあ、それはともかく、
ユリシアは、この世界の言語を喋れるのですが、文字の練習などは、していなかったようで、文字が分からないという状態になってしまったというわけです。ええ。
「これは、『に』と読みます。一度読んでみましょう、『に』」
「『に』」
めっちゃ恥ずかしい。イリスは頑張って私に文字を教えようとしてくれているのだけど、大学を首席卒業するほどの知識をもち、人格も完成されている私からすれば、恥ずかしい以外言うことがないのである。
これは、早く文字を覚えないと、精神的につらいものがある。
「はい。よくできました」
あー、違うことしたい。そうだ。
「イリス、これ終わったら、この国の歴史について教えてよ」
「はい、分かりました。ですが、私はそこまでこの国の歴史について詳しくありませんので、書庫で歴史の本を探してまいりますね」
「分かったわ」
私が思いついたのは、歴史である。歴史については、日本での知識が一切通用しないもの。まだ、計算などは使うことができるが、歴史なんてその土地で変わってくるものだ。しかもここは異世界。世界史で少しは昔の他国の動きについて習っていたが、そんなものが、役立つはずもない。
その後、イリスに歴史の本を読んでもらい、この国の歴史について少し情報を得ることができた。
まずこの国の名前は、タリア王国という。まあ、それはユリシアとして聞いていたので、知っていた。で、この国の始まりは四百年ほど前で、現国王は、二十一代目だということらしい。
他にもいろいろと教えてくれたけど、重要なことは、それぐらいでした。
イリスは、五歳にもわかるように、ゆっくり丁寧に解説を入れてくるおかげで、全く進まなかった。ゆっくり丁寧なのが悪いという訳ではないのだけど、実際文明のレベルが一つ、二つ上の世界の、大学を首席卒業した程の理解度を持つ私としては、もう少し省いてくれてもよかった。というかそのほうが聞きやすかった。
それにしてもイリス、もしかして、とっても頭がよくない。だって、何も知らないところから、一通り歴史の本を読んだだけで、大体のことを理解しているっぽいし。ま、私も同じことできるけど。それに比べる人もいないし。
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