3 お母様
あの後、お母様がリリアと、昔は私の乳母としてお世話してくれて、今は私の侍女として働いてくれているイリスを引き連れてこられました。
「お母様、おはようございます」
お母様が、とても心配そうな目で私を見ておられたので、微笑んで朝の挨拶をしてみました。
「ユリシア、心配したのよ。可愛い、可愛い 、ユリシア」
お母様が私のところまで、来られて軽く私を抱いてくださりました。
お母様は私のことを心配してくださっていたのだと思うと、照れくさい気持ちとうれしい気持ちが胸いっぱいに広がりました。
あ、ちなみにユリシアというのは私の名前です。私の本名はユリシア・ティオ・アクシス。この国タリア王国の公爵家であり現宰相を務めるジンバド・ティオ・アクシスの長女です。で、お母様の名前は、ヒルリア・ウル・アクシス。
はっきり言って、私と似ていません。ホント、親子なのか疑わしく思うほど似てないです。私は白銀色の髪に真紅の瞳を持っているのですが、お母様は、金髪に黄色い瞳という容姿です。
お父様の方とは、何となくですけど、面影が似ているように思います。けれどお母様との共通点を見付けろと言われれば、じっくりと探さなければ見付けれません。本当にそれぐらい似てないです。
実は私、お父様が他の女の人との間に産んだ子なのではないかと思ったのですよ。だって本用にお母様の血を引いているのか疑わしくなるようなぐらい似てないですし。しかもこの国一夫多妻制がokなのですよ。そう思うと、他の女の人との子供じゃないかって疑わしく思うのですよ。でも少し疑問なのが、ヒルリアお母様しか、お母様しかいないということなのですけど。
そういうことを丁度、ユリシアと瑠璃の人格が混ざる前の日に思っていたのですよ。
あ、もしかして、私がそのことを考えたせいで、前世の記憶を取り戻したのかもしれないですね。ま、考えすぎでしょ。・・・・・・考えすぎだよね。
まあ、そんな思いがあったので、お母様が私のことを心配してくださったことは、私にとって、とてもうれしいことだったのですよ。
「お母様、ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」
心配かけたからには、謝っておかないとね。
「謝ることなんて何もないのよ。・・・・・・ただし、自分の体調の管理はしっかりとしなさいよ」
「はい、分かりました。これからは気をつけることにします」
お母様、いつもと比べて、少し怖い。なんだか言葉に棘があるような・・・・・・。
「そう。――ならよかったわ」
戻った。よかった。やっぱりさっきは怒っていたのだろうな。
「それにしても、残念ね」
「残念?」
何かあったっけ?うーん今一思い出せない。
「ユリシア、忘れちゃったの」
「はい、何かありましたか」
やっぱり思い出せない、これは二人の人格が混ざった障害かもね。
「パーティよ、パーティ。王宮で、貴族の子供たちのお披露目パーティがあったのよ。ユリシアも参加するはずだった」
「あ!」
「覚えていなかったようね」
そうだ。確か私が寝る前の日から八日後、つまり三日前、王宮で、五歳を迎えた貴族の子供たちを招いた、王族主催のお披露目パーティがあった。確かに私自身胸を踊らせていた記憶がある。
「せっかくのパーティだったんのにもったいないことをしたわね」
「はい、私の楽しみにしていたのですけど、行けなくて残念です。ところで、お母様は、行かれなかったのですか」
アクシス領から王宮のある王とまでは、馬車で四日ほどかかる。つまり、今こちらにお母様がいるということは、パーティに参加されなかったことになる。
「ええもちろんよ。ユリシアが心配なのだもの。まあ、ジンバドは相当、ユリシアのこと心配していて、最悪パーティを欠席しそうだっから、私から言って無理やり出席させたけど、私は陛下の方に手紙を出して、欠席させていただいたわ」
「お父様・・・・・・」
お父様は、さすがに欠席したらまずいでしょ。それを出席させたお母様、さすがです。
「とりあえずユリシアは体調を回復させなさい。十日も何も食べていなかったから、お腹減っているでしょうから」
あ、お母様に言われて、思い出したかのように、空腹感が体全体を襲ってきた。
「確かに、何か口にしたいです」
「リリア、ユリシアに消化の良い食事を持ってきてあげなさい」
「かしこまりました」
お母様がリリアに命じると、リリアは、即座に部屋を出て行った。
「さて、私も行くとするわ。早く回復させなさいよ。――後はお願いね、イリス」
「かしこまりました。奥様」
イリスがお母様に向かって頭を下げると、私の方をちらっと見てから、お母様は踵を返して、部屋を出ていかれました。
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※主人公ですが、弟がいます。弟に関してですが、もう少し話が進んでからでないと登場しません。
次の投稿は2月1日の予定です。