22 帰宅
バルドルと初めて会ってから、三十日が過ぎた。
この三十日ほどの間、私はハク(馬の名前。出会った時は、灰色の毛だったけど、水で綺麗にしたら白い毛だったから)の寝床で寝て、朝からシャーロット様のお墓の前でバルドルと会う。そして、彼の国について話し合ったりする。(バルドルは、経済のことを良く知っていたからとても面白い話しができたし、国の決算帳簿まで見せてくれた。だけど、部外者である私にそんなもの見せても良かったのかな?)
そして、午後からは山の中を冒険したり、ハクと遊んだりした。
あ、そうそう食事に関しては、果物を食べたり鹿や熊、猪なんかを狩って焼いて食べてました。で、水はハクと出会った水場のものを飲んでいました。
ま、そんなこんなであっという間に予定していた日数が過ぎてしまいました。私としてはとても有意義な時間だった。面白い発見をしたし。
で、今は領都の屋敷に帰っているところです。というかもう領都までは、帰ってきました。バルドルには、昨日のうちに帰ることを伝えています。あ、ついでにハクに乗って帰っている途中で鹿がいたのでお土産に狩っておきました。
ていうか私この三十日間で、とても乗馬が上手くなりました。それも、鞍なしでの乗馬が。お陰で体幹が鍛えられ、体がより一層引き締まったように感じます。
ま、そんな感じで、ハクに乗って、ハクの寝床から領都まで二時間かからずに来れました。(他の馬だったら三時間かかります)
というか何気に私初めて町の様子を見たかも。へえー、意外と賑わいが合って面白そうじゃん。
ま、もうすぐで屋敷に着くから、とりあえず屋敷に向かうけど。また今度、町に出られるように言ってみようかな。
「すいません」
私は、とりあえず屋敷の門の前にいた衛兵に話しかけた。
「なんだ、クソガキ」
何この人。とっても口悪いんですけど。ま、私は何も思わないけど。
「ここ通っていいですか」
「クソガキが通っていいわけないだろ。どっか行け」
「でも、通らないと」
「ダメだ」
なかなか通してもらえないし、どうしようかな。でも、クソガキって呼ばれるの初めてだな。ま、この格好だし、そう言われるのも仕方ないように思うけど。
「なんで、通してくれないんですか」
「ここは、アクシス公爵様のお屋敷だ。お前みたいなクソガキが入っていい場所じゃない」
そんなこと分かってますー。
「私は、その屋敷に用があるんですが」
ま、用と言うよりその屋敷の住人だけどね。
「――どうした」
私と衛兵がもめていると、屋敷の中から、違う男が出てきました。
「隊長。いやあ、このクソガキがここを通せってうるさいんですよ」
衛兵の隊長さんでしたか。
にしても、あなたの方がよっぽどうるさいんですが。
「どうしたんだい、お嬢ちゃん。何か、このお屋敷に用かな」
隊長さんが、しゃがんで話しかけてきました。
「お屋敷に入りたいの」
「なんで?」
なんでってそりゃ、
「家だから」
「――! お嬢ちゃん、何て名前なの」
「ユリシア」
「!」
隊長さんは、私の名前を聞いて驚いていた。一方の口の悪い衛兵には、明らかに「?」が浮かんでいた。
「本当ですか」
「うん」
とりあえず頷いておく。
「し、失礼しました、お嬢様」
「お嬢様?」
衛兵は私のことを隊長さんが、お嬢様と呼んだ理由が分からないみたいだった。
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