11 山賊1
前半ユリシア視点で、後半は三人称視点です。
あれから、一年が経った。
カレンの誕生日パーティーの後、何度かカレンとは、手紙のやり取りをしている。
カレンとは、良い友人になることができて、とても嬉しい。彼女は、私からしてもとてもしっかりしているように思う。まあ、手紙では、お母様のことを良く聞いて来ていたから、何かお母様に思い入れがあるのだろう。
そうそう、この間、またカレンの誕生日パーティーに参加してきた。やっぱりカレンの誕生日パーティーは、楽しかった。
あ、ついでに私も7歳になった。
と言っても特に私の生活に変化はない。
朝起きて、ランニングして、朝食。それから、勉強し、午後からイリスと剣術の稽古をする。うん、変わってない。
あ、剣術は、イリスと普通に打ち合えるようになった。まあ、私の本気と、イリスの普通とだけど。それぐらいだからまあ、イリスには、勝てない。
で、最近感じているのだけど、私の生活って、貴族のしかも公爵家の娘の生活じゃないよね。しいて言うなら騎士の子供がするような生活じゃあないのかしら。まあ、騎士の子供がどんな生活をしているのか知らないけどね。
閑話休題
で、実際カレンにも聞いてみたけれど、勉強はしているけど、剣術なんてしていないらしい。というか剣さえ持ったことがないらしい。
はい、私の生活ってどうなっているのだか。ま、私は、剣術が楽しいと感じているし、好きだからいいのだけど。
あ、そうだ。また今度カレンにも剣術やってもらうことにしよう。うん、そうしよう。
で、です。今、私は、書庫で本を読んでいます。たまには、休息も必要だからってイリスに、言われたのよ。
だから、今日は剣術の稽古は、お休み。ま、少し面白そうなことがあるのだけれどね。
それは置いておくとして、たまには、ゆっくりするのもいいわね。
「お嬢様、紅茶をお持ちしました」
「ありがとう」
一人の侍女が、お茶を持ってきてくれました。
私は、彼女からカップを受け取って口に近づけました。
「ふー」
カップをソーサラーに戻して、また本を読む。
「あれ?」
そこで、私は体の違和感を感じた。なんだかいきなり目が霞み、眠気が襲ってきた。
「なんだかくらくらする」
そして、私は目を閉じた。
※※※
「よし、かかった。かかった」
ユリシアにお茶を出した待女は、ユリシアが眠ったことを確認して微笑んだ。
「それにしても、即効性なのに、少しの間普通にしていたから、効いていないのかと思って焦っちゃったじゃない」
女性は、持っていた縄でユリシアの手足を縛り、麻の袋をかぶせた。
「はい、依頼完了。 意外と呆気なかったな。
ま、やりやすいことに変わりないから、いいのだけど」
この女にとって、睡眠薬を飲ませるまでが手間であり、屋敷からの脱出は、朝飯前なのだった。
※※※
――アクシス公爵領東部に位置する山脈のとある洞窟。
「ははは、よくやってくれた、女。見事にさらってきてくれるとはなー」
野太い声が洞窟に響いた。
「あんなこと、私にかかれば朝飯前よ。それより
も、報酬は、しっかりとくれるのでしょうね」
「ああ、こいつを人質に、貴族様から金を巻き上げ、後で奴隷市にでも出品すれば、二度美味しいからな」
「さすが、お頭。頭が、いいっすね」
「そうだろ」
男の声が洞窟にこだました。
男達は、今さっき女が攫ってきた貴族の令嬢が入った袋を取り囲んで、勝利の宴を開いていた。
その中に混ざる一人の女……いや、二人の女。
「へー。そんなこと考えていたんだ。確かに頭いいね」
「そうだろ…………え!?」
山賊の頭領は、聞こえてくるはずのない少女の声に目を丸くした。
「お前どうやって」
あろうことかとかいるはずのない少女は、男達の宴の席で、男達に混じって座っているのだ。
山賊の中で、いち早く行動をしたのは、その少女を攫った女だった。
「お前は寝ていたはずだ」
女は、武器を構えて言った。
「あ、うん。寝てたよ。でも貴方が飲ませようとした睡眠薬のせいではなく、自発的だけどね」
少女ーーユリシアは、気の抜けた眠そうな声で言った。
「そんな……お茶を飲んでいなかったというのか」
「あ、それね、私の侍女って基本的に二人だけなのよ。その二人以外私にお茶を淹れることは、ないのよ。だから貴方のことは、注意して見ていたのよ。そして、貴方の出したあのお茶。あのお茶を飲んだ時、私の舌から僅かな、刺激を感じたから、飲んだように見せて一口も飲まなかったのよ」
「そんな!」
女は、驚いたように声を荒げた。
ご感想、ご意見お待ちしています。
※間違い等がありましたら、報告していただけると嬉しいです。
次回更新は、3月21日19時です。




