1 転生
――ある夏の暑い日。
東京某所。
この日、〇〇大学の経済学部周辺の道路で、人身事故が起こることとなった。
この事故で、〇〇大学の卒業生であり、特別講師であった、立花瑠璃、二十五歳が亡くなった。彼女は〇〇大学経済学部を首席で卒業した、天才であった。
※※※
「――!」
私は勢いよく目を開けた。知らないうちに、知らないベットで寝ている事に気が付く。いや、『わたし』は知っている。でも、
「あれ、ここはどこだっけ?」
『わたし』は、『わたし』の体を感じ取っているし、『わたし』は『わたし』だということもわかる。
でも私という存在が分からなくなる。
なんというか、一つの『わたし』を認識するともう一方の私が分からなくなるようなそんな感じ。わけがわからない。まるで二人の『わたし』がいるみたい。
何か覚えていることがあるはず。
私は『わたし』を思い出す。
『わたし』は私の記憶を思い出す。
私が思い出すのは、この世界で生まれて、五年間生きた『わたし』の記憶。
『わたし』が思い出すのは、地球という星で二十五年間生きて、結局自動車に引かれて死んだ私の記憶。
「なぜ、私は二人いるの? なぜ『わたし』は生きているの?」
疑問ばかりが増えていく。何の回答も得られないまま。
「――――痛!」
一瞬の頭痛が私を襲い頭を押さえた。そして、次の瞬間。
私と『わたし』の記憶が混じり合い一斉にフラッシュバックしてきた。まるで今その事象が起こったみたように、鮮明に。
脳の細胞一つ一つが、入ってくる情報の処理をフルスピードで、行っていく。
いつの間にか体が熱を持ち、意識を保っておくことが難しくなってくる。
――そして、私は意識を手放した。
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