夏は好きですか
私は嫌いだ。
少なくとも好きではない。
なんせ、暑いのがダメ。
汗をかこうと思って汗をかくぶんには構わないが、天候で、照りつけるジワジワとした暑さ、いや熱さでダバダバ汗をかくのはかなり苦手だ。
予定外の汗、というやつだ。
それなりに夏大好き!という方に巡り合う。
私が夏が嫌いだからと言って、その人が嫌いになるほど狭い度量ではないつもりだが。
で、その人と夏の会話になる。
どこが好きなんですか?と。
大体の答えが、海、川、山、祭り、花火、プール、とそれはとても活動的なお話が飛んでくるわけだ。
まあ、確かに楽しいでしょうね。
しかし、気づいてみてください。
貴方、それ、夏の間、毎日行くの?
私は日常生活として、どうなの?と問いたい。
例えばとっても暑い日、学校からでも、会社からでも帰ってみることを想像してみてほしい。
◇◇◇
今日も連続猛暑日を更新した。
外に出れば汗、汗、汗。
早く帰ってシャワーを浴びたい。
なんとか時間を調整して、珍しく夕方に家に着いた。
この時間は誰もいない。
ただいま。
誰もいないとわかっていながらも、一言、部屋に向かって伝える。
ドアを開けた途端、もわっとこもった熱気が
私の顔に当たり、鼻に当たり、鼻腔を通る。
防犯のために窓は締め切っていることが災いした熱気。
ここまでこもるのか。
ある意味、外とは違う空気の質に顔をしかめる。
そして、匂い。
玄関、カーペット、洗濯物、リビング、台所。
様々な匂いが、鼻から肺の間で踊る。
夏独特の匂い。
うわっ、洗い物、途中なんだ。
すでに腰が引けているが、渋々台所に向かう。
ないはずなのに、なんだか粘りのありそうな食器をどうにかしようと、ため息をつきながらふとみると、ダイニングテーブルの上に黒い物体が飛んでいる。
ハエだ。
出しっ放しだった菓子パン。
ハエに問う。
お前はこのパンのどこを口にしたんだ?
お気に入りだったのに、このパンはもう食べられない。
またため息が出る。
捨てようとゴミ箱を開けると新しい、そして不快な匂いが出迎えてくれる。
発酵。
腐敗。
そんなキーワードが頭をよぎる中、早々にパンを捨てて蓋を閉める。
もう少し、涼しくなってからにしよう。
何故かいつもより大きく聞こえる足音を聞きながら、ソファに寝そべり、エアコンのリモコンを探す。
座った途端に感じる、肌とソファの生地の温かみ。
革製ならきっとベタつく。
布でよかった、と貧乏くさい言い訳を頭に浮かべながら、スイッチを押した。
ムワーッ。
使い古したエアコンから生暖かい風が、また違う匂いを引き連れて顔に当たる。
もう少し我慢すれば、涼しい風がくる。
エアコンが熱気を察知し、羽が上向きになった。
期待した涼しい風は、私ではなく、部屋の温度を下げることを優先したようだ。
もう何もしたくない。
何度目かのため息をつく。
◇◇◇
いかがだろうか。
気をつければいいのだが、大体毎日こんな感じだ。
これでも、「夏の日常生活」と「夏のイベント」が釣り合うのだろうか。
私は釣り合わない。
すごい勢いで「夏の日常生活」に軍配が上がらだろう。
これから夏が始まって行く。
本来なら梅雨明けにでも書けばいいのだろうが、私はこの時期からもう憂鬱だ。
話が変わるが、こんな話がある。
絶対に渋滞する目的地に行かなければならない。
渋滞は何キロもあり、5、6時間は覚悟しなければならない。
そんな時、1、2時間で終わればいいのに、と思って向かうより、8時間くらいかかるんじゃなーい?と思って向かう方が、実際には4時間くらい終わっても、ストレスは少ないのだそうだ。
夏が好きではない方々、これを読んで、構えてみてはいかがだろうか。
いかがだろうか。