出撃!パンプキンマン
白昼堂々、幼稚園バスがジャックされる!
しかも犯人は、コウモリの意匠をプロテクターに落とし込んだデザインを身に付けて、青黒いマントを翻しながら高笑いをあげていた。その長身な者とは
ミスター・ブラッドサッカー!!
といっても、吸血行為はしない。
主に、自慢のマントと背中と両腕とに内蔵されたグライダーの翼を操った、空中戦が得意である。完全に顔を覆ったマスクから発せられてゆく声は、嗄れたものであるせいか、その中身はお年を召した者と思われる。
「久しぶりの娑婆の空気は、実に美味いわい。そして、久しぶりの市民の怯えるその顔は、実にたまらん!―――よって、儂が飽きるまで市内を何周か走ってもらうぞ」
ずいぶん身勝手な要求である。
乗っ取られている幼稚園バスを、その後方から追いかけるかのように複数のパトカーと、さらに空中からは警察のヘリコプターが追跡していた。
そんなときだった。
「鳥だ!」
「飛行機だ!」
「いいや。あれは空飛ぶカボチャ、パンプキンマンだ!」
「パンプキンマンが現れたぞ!」
「パンプキンマンだ!」
「こちら213号機、パンプキンマンが出動したもようです。どうぞ!」
などなどの市民らの声援や警察官の無線の交じる中を、空を切って飛んで現れてきたそのオレンジ色の閃光は、パンプキンマンだったのである!
両拳を突き出して、幼稚園バスの後ろ窓に狙いを定めて、迷いなく一直線に突っ込むなりに、豪快に音を立てて窓ガラスを破壊して突入。そして、受け身をとって転がり、片膝を突いて颯爽と立ち上がった。それから、唖然呆然と立ちすくむミスター・ブラッドサッカーと向き合うと、力強く右手を突き出して指差したのだ。
「ミスター・ブラッドサッカーよ、久しぶりだな」
「誰かと思えば、パンプキンマンだったか。実に久しぶりだな。久しぶりだ。だから、久しぶりに暴れてやるのだ」
「そんなことは、この私が許さん!」
「ええい! お前が許さんとか誰彼が許さんとか、関係ないわい。儂も他の連中もお前も含めて、暴れ回れるのは年に一度だけだろ。だからこうしているのだ!」
「暴れ回れるだと!? 人聞きの悪い!」
ちょっと動揺するパンプキンマン。
「私は、世のため人のために活動しているまでだ」
「ほほう」