到着
途中で食料が尽きましたので、適当にやってきたカモを追い剥ぎしつつ、やって来ましたメディア王国。
その途中で気になったレイル君の一言。
「有り金全部置いてけって素敵な言葉ですね!」
彼はどうしたんだろう。機会があれば聞きます。美形なので大抵は許します。
「お嬢! 着きましたぜ! どうしやす!?」
「とりあえず、頼れって言われた所を頼ろうと思います。仮にも父親ですからね。頼ったら死ぬっていうフラグは立たないでしょう」
「死亡フラグって奴ですね!」
ちょっと待って。
「レイル君は死亡フラグって知ってるの?」
「はい! 異界から召喚された勇者の事を書いた本に書かれてました!」
へえ。その本は探そう。
本はこの世界だと高価だから盗んで読んだ後に売ろう。
「ふーん。その本は後で探しますか。それでアストール家でしたっけ?」
「そうっすね! そこら辺の奴に話を聞きやすか! おいお前!」
そう言ってランドルがこちらに歩いてきたお姉さんを呼び止めました。
「は、はいなんですか?」
怯えています。ですよね。いきなりオッサンに話しかけられたら怖いですよね。
「突然すみません。アストールという家名をご存じないですか?」
レイル君がにこやかに言います。ナイスフォローですね。オッサンからの美少年。ギャップですね。
「アストール様方のお屋敷ですか?」
アストール家って貴族なのかな?
「おそらくそうです」
「それならこの通りを、まっすぐ行って二番目の交差点を右に曲がった所に大きな屋敷が見えますからそこですよ」
笑顔でランドルを見ずにレイル君に道を教えてくれたお姉さんでした。
「何の用事か知りませんがそちらの方々はお気をつけて」
私とランドルをチラッと見てお姉さんは言いました。
何ですかそのセリフは。
私は何故に貴族と山賊の父が繋がりがあったか気になってるというのに。
「行きやすか!」
あっもう。少し考えさせて下さい。
アストール家の前まで来てみました。
大きいお屋敷です。ザ、貴族! ですね。
「誰かいねーか!!」
おい! ランドルおい! 怖いもの知らずか!
「はーい。なんですか。もしやと思いますが私の家に何か用ですかあ?」
後ろから話かけられました。
紫の髪をゆるふわロングにし、黒いドレスに身を包んだ垂れ目の可愛い女性が立っていました。
「うおっ! びっくりさせやがって!」
そうですね。後ろからでしたので私もびっくりしました。気配も感じませんでしたし。
「あらあら。ごめんなさいー。それで? 私の家に何の用ですかあ?」
にこやかに謝りつつ、聞いてきます。
「お嬢様。ペンダントを」
分かってますよレイル君
「あ、うん。父がこのペンダントを持ってここを頼れと言いまして」
私は懐からペンダントを取り出して女性に見せます。
「あれあれ? これはイルシア叔母様の……父親の名前は何ですかあ?」
「アルフです。アルフ=オーレットです」
「あら! そちらの二人はお連れのかた?」
「そうです」
「では、とりあえず中にお入りになって! お姉様に会わせますから!」
おー。とりあえず貴族の屋敷の前で叫ぶオッサンが貴族に対する失礼な行いで殺されるって事件が起きなくてよかったです。
客室に案内されました。
「死ねえ!」
「げはっ!!」
ランドルがドロップキックされました。
男装の麗人に。
「フレーネ! 汚物を私に見せるんじゃない!」
「ごめんなさーい。部屋に閉じ込めておきまーす」
そう言って気絶したランドルをフレーネと呼ばれた紫の髪の女性が運んで行きました。
肩に背負って。
力持ちすぎないですか? あの人?
「ふう。失礼した。そちらの銀髪の君も男だろう? 退席してくれたまえ。私は男嫌いなんだ。君と少し喋るぶんには我慢出来るけどね」
何で男装してんの!? 初見で中性的だからレイル君の性別わかりづらくない!? 分かるの!? 女性人口が圧倒的に少ないって言われてる冒険者って職業だから男だなって私は最初は判断したけれど!?
突っ込んじゃ駄目ですかね。
「はい。分かりました。お嬢様。兄貴の様子をみてきます」
「……いってらっしゃい」
二人きりにしてほしくないけど仕方ない。
退席してくれと言われましたしね。
「さてと。私はレジーナだ。君をここに案内した女性は私の妹で、名前はフレーネだ」
改めてレジーナさんを見てみます。
彼女は金髪ですね。金髪で、蒼の色をベースに銀をあしらえた貴族の男の礼服に黒いスラックスを履いています。
顔は目がキリッとしてて、美人過ぎて逆に冷徹な印象を受けるクールタイプ美女ですね。
ドロップキックを初対面の人にかましてたので、決して中身はクールな人ではないと思いますけど。
「すまんが改めてペンダントを見せてくれないか?」
「どうぞ」
言われた通りに見せます。
「本物だな……ふむ。簡単に言うと君は私の従姉妹だ」
ほう。いとこですか。
「君のお母様は私の叔母だ」
これは貴族令嬢ルートきた?
「歓迎しよう。好きなだけこの家にいてくれて構わない。君の話を聞きたいし、君の父親の話も聞きたい。君の連れの汚物には部屋にこもってもらえれば我慢しよう」
ランドルひどい言われよう。
「ありがとうございます。私は貴族になんですか?」
「君の親の階級は既に剥奪されているな。君は元貴族だったが正しいだろう。貴族になりたいのか?」
山賊より貴族になりたいと思うのは当然ですよね。貴族の方がハーレム作りやすいですし。
「ええ。真っ当に生きたいんです。汚いことばかりこの人生では見てきたので……」
「……そうか。どの仕事も汚い部分はあるが……貴族になる方法は無いこともない。君が望むなら手伝おう。君は妹だからな」
「ありがとうございます。山賊よりは貴族になりたいので」
そこまで言われては山賊だって事も話しましょう。
「……山賊? すまないが話すことが多そうだな」
「そうですね。私も母の事を聞きたいです」
「そうだな。話そう。食事でもしながらね」