山賊の生き方
「お嬢! お帰りなさい!」
家に帰ったら、おっさんにお帰りなさいと言われました。
美形の執事に言われたい。
「うん。ただいま。他の奴がいないみたいだけど、どうしたの?」
仕方なくただいまと返して、気になった事を言います。
「へい! あっしとレイル以外は親分と一緒に旅に出やした!」
「はあ!?」
はあ!?
「お前も十六だからお前の道を行くがいい。このペンダントを持ってメディア王国のアストール家を頼れ、だそうです!」
だそうですじゃないですね。逃げましたねあの父は。
「はぁ……逃げ足が早いのも悪党らしいといえばらしいですけど」
そう言って私はペンダントを受けとりました。
高そうな青い宝石のペンダントでした。
「それとお嬢! 食料や水も親分が残していきました!」
旅をする準備は万全なわけですか。
「おーい! レイル! お嬢が帰ってきたぞ!」
はい。ずっと気になってました。呼び捨てする仲になったんですか?
「あ、お帰りなさい。お嬢様」
お嬢様。実にいい。じゃなくて!
何があった!?
「えーと。レイル君は私と来るんですか? にげないんですか?」
山賊団事実上解散っぽい流れだし。何でここにいるんですか?
山賊から逃げて、一人で町に戻って冒険者の地位がズタボロになるリスクがあるから山賊団に私は誘ったんですけど。
その山賊団が解散したと伝えて帰ればいいのに。
「はい! お嬢様と兄貴についていきます!」
友達を殺した私達に対する忠誠心がやばい! 本当に私がいない間に何があったの!?
「というわけでお嬢! メディア王国に向かいましょう!」
何がというわけか知りませんが……しょうがないですね。ハーレムを作るという漠然とした中身のない目的を決意しただけですし、他人に流されますか。
「伝令。お嬢は計画通りにここから逆方向のメディア王国に進路をとりました」
「そうか。それじゃあ俺達は始めるか」
「はい。しかし大丈夫ですかね? お嬢は」
「基本馬鹿で間違った常識をわざと教えたりもしたが大丈夫だろう。ランドルもいるし」
「不安です」
「大丈夫さ。大丈夫だと思えば大抵は大丈夫になる。それに、あそこはあいつを助けてくれるだろうさ。あそこに行くと俺は殺されるけどな。俺は行かずにあいつだけで行ったほうがいい」
「そうですね……自分も殺されるでしょうし」
「ああ。こっちは俺達の略奪という名の蜜月を壊し、冒険者をけしかけた町を略奪するだけさ。こちらが死なない程度にな」
「はい。しかし自分もアルフ隊長も山賊らしくなってしまいましたね」
「隊長はよせ。昔の話だ」
「失礼しました」
「……話はこれまでだ。行くぞ! お前ら!」
「「「へい! 親分!」」」