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それは祭りの最中に

 

 どうやら異世界に転生してたみたいです。

 その手の本は読んでたんですけどね。赤ん坊の頃から転生した事が分かるタイプじゃなくて、ある程度に年をとってから突然に分かるタイプだったんですね。私の場合。

「祭りじゃー!!」

 しかも祭りの最中に気づいたわけなんですよ。二重にビックリですよね。いきなり昔の私の記憶が全部はいってきましたし。

 いやー転生したら貴族のお嬢様だったみたいな本は前世でけっこう読んでたんですけどね。

「お嬢!! 一人倒れやした! どうしやす? 指示をくだせえ!」

 山賊のお嬢さまはちょっと……

「相手は冒険者パーティーのようだ。決して一人で闘おうとせずに相手に連携をとらせないように、常に多対一の状況をつくって相手をしてやんな!」

 とりあえず指示を出します。あ、今は冒険者血祭りパーティーの真っ最中です。

「おお! 了解しやした! よっしゃあ! 野郎共! お嬢に冒険者の悲鳴と絶望を捧げようじゃないか!」

「「「「うおおおおー!!」」」」

 悲鳴と絶望はいりませんからね。剥ぎ取る予定の装備。後はお金と売れそうな物以外。ああ。イケメンの男や女だったら奴隷市に売らないと。

 おっと。今世の記憶のせいで山賊脳です。考え方が悪人です。前世の私は日本の公務員だったのですが。

 今は山賊なのでその考えでいいですけどね。 

「お嬢! 一人仕留めやした! 強かったんで、手加減せずに全力で殺しました!」

「よくやった」

 捕らえて売り飛ばす考えを捨てるほどの強さですか。これは確実に連携されたら負けますね。

「お嬢! また一人仕留めやした! 残り二人っす! お嬢の指示のお蔭ですね!」

 あれ? あっさりと仕留められましたね。どうしてでしょう?

「二人目は弱かったのか?」

「そうっすね!」

 山賊の親分である父が、出掛けてる最中の出来事だったので私は焦ってましたね。さらに急に記憶が戻った事もあって簡単な指示しかだせませんでしたが、なんとかなりそうです。

 まだ十六歳ですからね私。多目に見てもらいましょう。前世の年齢はノーカウントで。

「お嬢! 残った二人が降参して武器を投げ捨てました! どうしやす!?」

「拘束して連れてこい」

 終わったようですね。私が戦闘せずに終わってよかったです。

「こちらの被害は一人だけか?」

「へい! 先走った一人が重症です!」

「そうか。後で様子を見に行こう」

 山賊の怪我を治す処置は、傷に酒をかけるというだけですからね。前世の記憶が戻った事ですし、少しはましな処置をしてあげようと思います。

「さっさと歩け!」

 冒険者が来たみたいです。

「助けてください!」

「どうか命だけは!」

 一人は赤い髪をした高そうな鎧を纏ったさえない青年ですね。もう一人は中性的で、透き通るような銀髪をした美少年です。こちらの装備はお手頃の定番軽装ですね。

 銀髪とか赤髪とか異世界って感じがしますね。あ、今の私も青い髪でしたね。まあ、それはともかく質問タイムです。これからの命に関わるので。

「一つ聞こう。お前たちはどうしてこの洞窟に来た? この洞窟は見つかりにくい場所にあるのだがな」

 この洞窟は今まで冒険者に襲われる事がなかったんですけど、今日に限って襲撃にあいました。

 そのせいでビックリしすぎて前世の記憶も思いだしちゃいましたし。

 ビックリして前世の記憶を思い出したのかは分かりませんが。

「お、お前がこの山賊の親玉なのか!?」

「質問に答えろ」

 聞かれた事にすぐに答えないのはイライラしますけどね。

「ふん。君みたいな小娘が親分なんてね。おい。レイル。どうやらあのまま闘っていれば僕達が勝てたな。親分が小娘じゃ大した事がない山賊団だ」

「ガストン! ちゃんと状況を見てよ!」

 そうですよ。君たちは手を縄で縛られてるんですからね。偉そうにしてるのは正気かどうかを疑いますよ。後、すでに負けて降参してますからねあなたたち。殺しあいに、もしもなんてないんですよ。

 それにしてもガストンですか。山賊っぽい名前でちょっと笑えますね。こちらは覚える気がなかったんですが。

 銀髪の美少年はレイルですね。覚えました。

「小娘。僕は実は貴族でな。名声を得るために山賊退治の依頼を受けたんだ。金ならいくらでもやるからさっさと僕らを解放しろ」

 依頼とか気になりますね。後でレイル君に話してもらいましょう。

「おい。ランドル。やれ」

 冒険者を無視して、さっきから私にやたら叫んでた山賊の幹部に話しかけます。黒いバンダナをしたおっさんで、ランドルって名前です。

「へい! どっちっすか!」

 いや赤い髪のほうに決まってるでしょ。

「赤だ。赤は分かるな?」

「はは。分かるに決まってんじゃねえすか」

 心配なんで聞いちゃいましたよ……

「了解しやした! おらよ!」

 そうしてランドルはガストンの首をはねましたとさ。

「えっ? ガストン!! うわあああああ!!」

 レイル君は叫ばなくていいのに……君は殺さないから。

 うーん。首をはねて血がドバドバでてても特に気持ち悪くなりませんね。

 前世では無理だったっていう記憶が戻ったんですけど。

 今の世界の山賊生活の記憶で無理を克服したようですね。

 あ、記憶の整理をしてるせいで判断力が鈍ってました。ついすぐに指示してしまいました。ガストンの高そうな鎧が血まみれです。

 反省します。

 いや。これはランドルのせいですね!

 ランドルがやったんですから!

「せいっ!」

「お嬢! なんであっしを蹴るんすか!!」






「落ち着いたか?」

「……はい」

 ショックで茫然自失してたレイル君がなんとか持ち直したので話しかけました。しかしレイル君は目の保養になりますね。美少年最高です。質問には答えてもらいますけど。

「質問に答えろ。依頼とはなんだ? 冒険者ギルドに私達の退治依頼でもあるのか?」

 異世界のファンタジーでおなじみの冒険者ギルドはこの世界でもあるんですよね。山賊は討伐依頼にされたりするんですよ。討伐される側ですよ。

「はい……頻繁にここら辺で行方不明者が多発しているので……上級の冒険者が山賊の貴女たちがいる事を突き止めて、中級の冒険者に山賊退治を経験させる為に貼り出されました」

 ふむふむ。油断していたとしても普通は私達が負けるイメージなんですけどね。私のイメージでは一人の中級冒険者に対して四人のランドルが必要になる感じです。

 私達の山賊団は私を含めて今は十五人しかいないので四人の中級冒険者とかアウトだったんですけど。

「お前たちは中級冒険者だったのか?」

「いえ……中級冒険者は一人だけでした……Dランクの冒険者の方でした。最初に殺されました……」

 中級の冒険者はCランクとDランクに分けられてます。油断してないCだったら被害が凄かったかもしれないですね。

「僕と二番目に殺された男はガストンの友達で。中級の冒険者の山賊退治についていって名声を上げてくるとかガストンが言い出したので心配になって同行したんです。僕達はEランクの冒険者です」

 そんなパーティーじゃ連携もとれないですね。ラッキーでした。

「ガストン自身が言っていたが、ガストンは貴族だったのか?」

「はい。名門の貴族の三男坊でして、名声を得ることに必死みたいでした」

 三男では家に居場所がないですよね。跡継ぎは長男だろうし。名を上げて大金を自分の手で稼ごうと必死だったのでしょうね。そんな三男坊に解放金を支払う貴族はいないでしょうし、殺しても大丈夫なタイプでしたね。

「だいたい分かった」

 とりあえず今の私に必要な情報は手に入りました。少し分からない事もありますし、危険が去ったわけではないので安心は出来ませんが。

 父が帰ってきたら相談ですね。後は町に行かないと。

「僕を殺すんですか?」

 そんな怯えなくても。ガストンを目の前で殺したのがショックだったみたいですね。

「どうする? 私達の仲間になるというのもあるぞ」

「仲間ですか?」

 イケメンなので仲間にしたいです。切実です。

「しばらく考えさせてくれませんか……」

 考えさせるとしましょうか。私の思ってる限り選択肢はあまりないと思いますけどね。

「ランドル。幹部が生活している部屋に案内しろ。手の縄は解いてやれ。武器は返すなよ」

 優しさを見せてみました。

「へい! 了解しやした」

 そう言って二人を部屋に向かわせました。

 それにしても洞窟に木材で部屋をつくって居住しているこの山賊団はたくましいですね。

 なんで職人ではなく山賊をやってるのか疑問です。

 こんな事を思うのは前世の記憶を思い出したからですね。今の私の性格と知識ではそんな事は思わなかったでしょう。

 父が帰ってくる前にこのごちゃごちゃな今の頭をちゃんと整理しましょうか……



















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