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#12 時よ永遠に……

▼時よ永遠に……


ここは、『聖女』の泉。生まれて間もない頃の森の外れ。

 時同じくして『聖女』と、『魔王』が住む砦。

「『リザード』。貴方はね、ゼロのままいなければならない存在なの。でもね、それが大変酷な事は承知している……でもこの先、必要になって来る力であるはずなの」

『聖女』がそう語った。

「そうだぞ。お前の手に全ての時の流れが決まってしまう…その力が必要な時どうすれば良いか判断する能力が必要だ」

『魔王』が語った。

「お父さん、お母さん、ゼロの力って一体なんなの?」

 幼い『リザード』は問いかける。

「それは、私達には創造出来ない力……そして貴方自身が体験し、感じてくる物。私達には教えてあげる事は出来ない」

『聖女』は告げた。

「お母さんも知らない力?そんなのボクには分からないや」

「大丈夫だ。お前の思う通りに生きてみよ……さすれば自ら道は開かれるであろう」

と、『魔王』が語る。

 まだ子供だった『リザード』の心の中に有る光景。それが溢れだしこの場にいる者達は共にそれを感じ取っていた。

「自ら分かる事なんてこの程度だった。ゼロは正でも、負でも無い力……そんなもの何処にも無い……消えて無くなってしまえば良い……とさえ思った。だから、無がゼロの力だと悟った」

 頭を抱えて小さな『リザード』は、その場に崩れるかのように座り込んだ。

「『リザード』お前の気持ちは分からんでもない……たった一人で手本となるものもいないで……そして長い時聞を生きて来た者として、どうすれば良いかを考え続けて来た苦しい状態を、今さらオレ達がどうにかしてやる事なんて出来ない」

 金太は話し始めた。

「だけど、オレだったらゼロという力を調和の力として使うな。正と負が、互いに交わる力として!」

 金太は思った事をそのまま助言として『リザード』に語った。

「金太にしてはまともな事を言うな。そうだな……調和として使う力は、正の力としても負として伴う力としても、同じ事。特別な存在になる事は無い」

 朗が、答える。

「調和の力?」

「そう。お前は、妖魔達に情けをかけた。その結果、力は妖魔を助けるために働いた。つまり、これを負の力とする。そして人間達を正の力として、心のどこかで哀れんでいた。つまりこの二つの力を調和に導く力をゼロの力とすれば良いというわけだ」

 と、朗は具体的な例を上げる。

「……今からでも遅くはないと思うわ『リザード』……君がそう願うなら、まだまだこの話は終わらない。始まりとなる!」

 薫は立ち上がりそう確信を持って言った。

「始まり……」

『リザード』は抱え込んだ頭をもたげた。

「私達も手伝います……この世に人聞と妖魔の調和した世界を作るために!」

 セリエが言い放った。

「我も、及ばせながらお力をお貸し致しますぞ」

 バルバスが答える。そして、バルバスの懐にいるルーティーは事の次第を飲み込み、その言葉に頷く。

「右に同じ!そう言う事なら僕も力を貸してあげる」

 レオナールが拳を振り上げて立ち上がり答える。

「『リザード』様……私も志を共にしたいと思います!」

 ティアラも微笑みながら答える。

「ほら……みんなが、手伝ってくれるだろう?『リザード』お前のやり方が、間違ったやり方であったと反省出来るなら、きっと助け手も増える……つまり、お前の望んでいる正の力を発せられる。もちろんその間に起こる嫌な事が負の力であったとしても、きっと一歩前進出来る!」

 すばやく朗がまとめた。

「みなさん……ありがとう」

 一言そう呟くと『リザード』は、壁伝いに手をつき、身体を起こしてそして立ち上がり、金太達の方を振り返った。

「…そうと分かったら、『ミルトン』の王女様達を連れ出さなければ。で、二人は何処にいるんだ?」

 金太は、そう『リザード』に問いかける。

「あの二人は、隣の寝室に匿っています。負の我も、さすがに手を出す事が出来なかった……正の我が要の人質として連れて来たのですから」

 隣の寝室へと金太達を案内する『リザード』。何時の問にか、部屋の中は昼聞のように明るくなっていて蝋燭の火も必要無くなっていた。

「ここです」

 扉を開く『リザード』。

 中には、様々な本が積み上げられていた。そしてその本を退屈しのぎでもしているかのように、読んでいる王女様二人は寝室のべッドの上に座っていた。その二人を金太越しに見た時薫は唖然とした。

「久美子!裕美!」

 どうしてこの場所にいるのかとも思える程、二人は久美子と裕美に似ていた。

「誰?」

 問いかけられた時、虹色の光が薫の身体から放出していた。それに驚いた薫は、

「金太先輩!朗先輩!」

 目の前にいる二人に呼び掛けた。

 そこには同じように虹色の光に包まれた金太と朗の姿があった。

「はっ!」

 一瞬のスパークに目をこらした薫が見たものは暗幕の掛かった一室に、金太と朗が、占い師の格好をしている姿だった。

「ろ……朗……先輩」

 テーブルの前の水晶に手を翳している朗。その後ろに立っている、金太。

「き……金太……先輩」

 庫れる身体に力を込めて薫は唇を動かした。

「戻って来たな?」

 朗が一息つく姿勢を取る。

「…ああ。にしても、今回は長かったな……」

 ぎこちなく腰に手を掛けて捻る動作をする金太。

「あれで、私達の役目は終わったって事なの?」

 薫はイマイチ納得が出来なかった。

「きっとあれ以上、首を突っ込む事は許されないんだろう……気まぐれな神が見せた幻影に過ぎない」

「まあ、もっとも、答えはそこにあったのだし……気付いた時点で、オレ達は無用な存在だったからな」

『コキコキ』と金太の首の骨が鳴っている。

「でも、ちゃんと最後まで見たかったな」

 薫はやはり、納得できないかのようである。

「ダメだよ、それは。あの話は、始まりを見付けたんだ。つまり、オレ達はスタート地点を見つけ出すスパイスだったんだよ。終わりはきっとない」

 朗は静かに微笑んだ。その真意に気付いた薫は、

「そうですね……」

 と、思いを馳せながら答える。

「さてと、改めてなのですが、占いは如何致しますか?」

 と金太が問いかける。

「そうですね……身近に起こる事。この学校を受験したいのですが受かるか受からないかを占って頂けますか?」

 その言葉に、金太と朗は顔を見合わせる。

 そして、

「わが校へようこそ!!」

 三人の笑い声が教室中に響き渡っていた。

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