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#1 プロローグ

▼プロローグ

 桜舞う小高い丘に続く小道を、次々と高校生が通り過ぎてゆく。空を見上げると、降りそそいで来る桃色の対比が美しい。

 特にこの日は特別なので、そう感じる気持ちが強いのかもしれない。

 そう、今日のこの日は高校の入学式。

 青春と言う一ページに、これから埋めて行く大事な思い出となるだろう岐点。今までの中学生と言う小さい世界から、更に広い世界を体験出来る。

 そんな、ちょっと大人になって行く実感をヒシヒシと感じるのは、身に纏っているブレザーの制服のせいも有るのかも知れない。

 そんな緊張と、喜びに浸っているのは、小道の脇に一人佇む少年……いや失礼、少女。名前は、一之瀬いちのせかおる、十六歳である。

 少女は、ガードレールの側のかなり昔から有るであろう大きな木にもたれ掛かり、誰かを待っている模様。

 そこに、

「おーい。薫〜!待たせたな。わりぃわりぃ!」

 えらく元気の良い、弾んだ声をした色黒の青年が、柔らかそうな黒髪をなびかせながらやってきた。そして、目の前で止まった。

「何たってこいつがさあ、寝坊するもんだからぁ……ははは」

 言いながら手を頭に持って行く仕種は、まだまだ少年のものである。

「……何言ってるんだか?お前、自分の事を言ってるんじゃない……人の所為にするのはみっともないぞ!」

 こちらは、『キリッ』とした瞳をした色白の気品溢れる青年。時折見せる微笑が、穏やかな人柄を感じささせる。

 実はこの二人は兄弟。それも双子。まあ、双子と言っても二卵性なので、似てなくってもおかしくはないのであるが。ここまで似てないってのも珍しいかもしれない。

 まあ、どちらが兄で、どちらが弟かは、お約束とされるもので……つまりは、後からやって来た物静かな青年が兄である。

名前は片桐かたぎりろう、十七歳。

 そして、もう一人の色黒の青年が、弟の片桐かたぎり金太きんた。聞いた所、どうやら、彼等の祖父が彼等が産まれる前に、男の子だったら『金太郎』と名付けようと頑固にも決めていたらしい。しかし、蓋を開けてみると、中から生まれ堕ちたのは、双子。そこで、強引に『金太』と、『朗』に名前を分けたのである。

 当時は、先に産まれた子を、兄。後に産まれた子を弟と考えられていたために、実際そうなった。しかし、この後すぐ医学がこの事をひっくり返した事は言うまでもない。

「金太先輩?そんなバレバレな事言ってもだめですよ。本当の事なんかお見通しですから!」

 朗と薫は目を合わせて笑う。

 そんな二人に金太は『ムッ』としている。

 こんな感じで、いつも三人は楽しく過ごしている。朝の清清しい光の中、今、学校へとゆっくり歩み始めた。これからの、青春の一ベージを刻むために。


 ここでちょっと話を前後して、薫と二人の兄弟の馴れ初めについて語ろう。

 時は、去年の十月。

 薫がまだ、中学三年生の頃の話である。

 これから受験まっただ中から、合格と言う『バラ色の人生』への切符を手に入れようと頑張っている最中のハズの頃の事。

 この時期になると、大分肌寒く感じる。しかし、そんな事をものともしないという感じで多くの落葉樹は色とりどりに紅葉を楽しんでいた。

 ここ、薫の母校『セントカタリナ女学校』でも例外ではなく、銀杏並木を歩くと辺り一面黄金色に……更に飴色の蝶が舞い降りては、行き来する者達の頭や、肩に止まって行く。

 そんな中、どうやら三人の少女がやって来るようだ。

 しかしこの三人、何だか『イマイチ』覇気が感じられない。まだまだ、食べ盛り、育ち盛り、元気盛りだと言うのに……

 そして、一人の少女がため息まじりに声を漏らした。

「ねえ、余りにも平凡だね。いくら受験生だって言っても、やっぱ、息抜きだって必要だと思うのよ……只でさえこう、女の子ばっかりの学校で息もつまりそうだっていうのに……」

 実はこの学校、都内でも有名な、エスカレーター式のお嬢様学校である。

 そして、この銀杏並木はその名物。

 その、銀杏並木から覗く事ができる放課後の運動場は、何処を見渡しても女の子ばかり。

「裕美もそう思う?私もさあ、何かこう違うんだよなぁ……なんて思うんだよね。確かに、今を頑張って入試に挑んでこの学校を後にして、共学の高校に入れば良いのかもしれないな……なんて思うんだけど、でも、今のこの瞬間って言う楽しみがないじゃない?私はこの瞬間を楽しみたいんだなって思うんだよね!」

 そうそう、一つ付け加えておきますが、この学校、エスカレーターと言っても小、中学生の間だけである。

「そこでさ、一つ提案が有るの!来週の月曜日に学校さぼってさぁ、城東高校の文化祭に行こう!」

 と、久美子は話を続ける。

 いきなりのこの発言に、裕美と、そして薫の目が発言者の久美子に注がれた。

「久美子!ちょっと本気?男子高だよ?バレたらヤバイって……確かに、来年度から共学になるらしいけど……今年は、女の子は入れてくれないよ!?」

 思わず薫は言いよどむ。

 それをすかさず久美子は制する。

「薫のお莫迦!シスターに聴かれたらよけいにヤバイでしょ!」

 そう言われて、薫は初めて周りを見渡し、誰もいない事を確かめると、『ホッ』と肩をなで下ろす。

 そんな薫をよそに、会話は続けられる。

「いいんじゃない?面白そう!行こう行こう!男子高最後の記念になるじゃない?ねえ、薫〜!」

 どうやら、裕美は賛成のようである。

「……でもっ……私なら男装してもしなくっても男の子に見えるとは思うけど……」

 薫は後の二人を見る。

「どう見積もったって、あなた達は見えないよ……男の子に!」

 そう、まずは久美子と呼ばれるこの利かん気な少女は、一見167の『タッパ』と、『ボーイッシュ』な髪型で、後ろから見た限りでは男の子に見えなくはない。

 しかし、『パッチリ』とした目もとと、愛らしい口元は、まるでフランス人形のようである。また、裕美にいたっては何処から見ても可愛らしい『ホワホワ』した感じの背の低い少女なのだ。今更だけど、良くこんなにタイブが違う三人で仲良くやれるもんだと思える程。

 そう言う、薫はと言うと、運動部が勧誘に来るくらい運動能力が抜群で、175の『タッパ』を持った男顔負けの少女。髪の毛も『ボーイッシュ』に刈り上げており、一見、細身である体は、実の所骨格もしっかりして、少し筋肉質。多分男の子だと言っても誰も疑うことは無いであろう。その上、ハスキーな声は、変声期の男の子特有なもののようで有る。

 以前は、こんな自分を一時期凄く恨んだりもしたけれど、今では結構気に入っていたりする薫であった。

「ブーッ!何よ薫ったら〜!やってみなくっちゃわかんないじゃないよ〜っ!まあ、とにかく、有言実行と行こうじゃありませんか?……と、いうことで、月曜日の十時に、城東高校の名物と言われている『金卵の池』って所で待ち合わせ!判った?」

 と、結局久美子が一方的に結論を出してしまったのである。

 まあ、遅かれ早かれ、こういう事になる事は十分覚悟をしていた薫ではあった。今の今まで久美子の意志を曲げる事など適ったことなどなかったのであるのだから。

 まあ、でもこういう所を憎めないのだから、久美子とはつくづく『カリスマ』的な人物であるのだなと思う薫である。

 しかし、あのお堅い城東高校が、何故今更共学になるのであるのか?そんな疑問を残しながら、薫達は『セントカタリナ女学校』を後にしたのであった。

途中、一部残酷表現がある作品です。

大丈夫な方のみご愛読頂ければ嬉しいです。

内容はRPGファンタジー。

主人公3人が成長していくお話。

宜しければ、ご覧下さいませ。

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