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少年少女捜査隊  作者: たにもとりく
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第二章~夢乃谷高校、折紙学人~

「気を付け!礼!お願いします!」

 1年6組の委員長として授業開始の挨拶をするのは、大阪府立夢乃谷高校、通称夢高に通う、折紙学人(おりがみがくと16歳。持ち味の優しさと包容力で男子のみならず、女子からも人望が厚い。学人はいつも学年トップクラスの成績を収める優等生だ。

 学人は普通の人にはない、特別な秘密がある。それは少年少女捜査隊の一員であるということ。本部から受けた命令を正確に遂行するエリート隊員の一人なのだ。

「気を付け、礼、さようなら」

授業が終わり、生徒はのんびりと部活動へ向かう。中にはいつまでも教室に残ってなかなか部活に行かない生徒もいる。急いで帰宅する生徒もちらほら見られる。

「学人、お前、今日部活は?」

急ぎ足で帰る学人にバスケ部の主将、飯川亮が問いかける。

「すみません、今日は用事があるので帰らせていただきます。」

先輩の返事を待たずに、学人は走って帰ってしまった。


「まもなく、神戸、神戸です。」

 ジャージに着替えた学人は晴れた神戸の空を見上げ大きく息を吸った。スマホを片手に歩くその姿はどこにでもいるごく普通の青年だった。駅前の花壇に腰を下ろし、今日の任務を確認する。

 駅から1キロくらい離れた路地裏に自動販売機があった。さらに奥には作業着を着た二人の若者が缶コーヒーを片手に煙草を加えている。学人はやっと見つけたかのように自動販売機に走り込み、急いでジュースを買おうとした。しかし、学人は投入するはずの100円玉を自販機の下に落としてしまった。学人は必死に100円玉を拾おうとする。二人の若者は見向きもせず、ただただ黙って煙草を加えている。

 1分も経たないうちに、スーツを着た一人の中年のサラリーマンとおぼしき男が現れた。なにがあったのか、非常に動揺している。その男は学人に気づかなかったのだろうか。猛スピードで作業着の男たちに駆け寄り、なにやらカバンから茶封筒のようなものを取り出した。作業着の男一人が奪うように封筒を取り上げ中を確認する。そのとき学人は見逃さなかった。それが札束であることを。すかさず学人はあらかじめ握っていた100円玉を持って自販機の前に立ち、何食わぬ顔でコーラを購入した。そして待ちきれなかったかのように装い自販機からコーラを取り出した。学人はまたもやそのときコーラを落としてしまった。コーラを拾ったのと同時にスマホも取り出し、コーラのふたを開けるのと同時にスマホで動画撮影を開始した。薬物を売買した作業着の男二人と、サラリーマンの顔と現場を動画に収め、満足そうにコーラを飲みながらその場を離れた。

 もちろん、100円玉をわざと落としたのは言うまでもないが、コーラのペットボトルの蓋を開ける音にかぶせてシャッター音がばれないように、わざとコーラを落としたのである。花壇でサラリーマンが現れるのを待っていたのも戦略の一つ。運動部の学人が中年のサラリーマンより先回りするのは容易なこと。ジャージを着てきたのは走っていて不自然にならないようにするため。学人は撮影した動画を警察庁本部に送付し、任務を終えた。

 少年少女だからこそできない捜査活動があると、学人は心得ている。何事も完璧にこなす学人は全国の隊員の中でもトップクラスの腕前で事件解決に大きく貢献してきた。

 

 学人が家に着くともう時計の針は8時を回っていた。学校が終わった4時から4時間に及ぶ任務により学人の体は疲労を極めていた。そんな学人の疲れを癒すのが、彼女の存在である。学人は携帯の通知を何度も確認する。しかし、今日はまだ、彼女からのLINEは来ていなかった。

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