小さな英雄達の話
うっすらと目を開けると、馬が目が合う。
覚醒していく頭を振る。久しい、夢を見た。
「元気かなあ、あいつら。」思わず声が出てしまう。
年を取らないこの体で、“あの日”から数十年が経った。今でも目を閉じるだけで思い出せる、あの頃。
戦場を駆け、戦場で散ることを共に誓った仲間達。
民のために、国のために、未来のために、俺達はとても大切なものを失った。
それでも、全てを信じて、何のためらいもなく集まった8人。
毎日毎日、本当に大変だったけど、みんなでいれば何もかも、大丈夫だと、思えた。
みんなで酒を酌み交わしたこと、仲間を失って泣いたこと、喧嘩したこと。
全て大切な、もう二度と戻ることのない輝き。
“あの日”汚い大人達にずっとずっと騙されていたことを知った。
知った時にはもう俺達が生きる意味も存在価値も、なくなってしまった。
何の力も持たない子供のまま、時を止めた俺達に居場所なんてなかった。
時は移ろい、時代は変わってゆく。その流れから外れてしまった俺達。
“あの日”俺達を捨てた大人は幸せそうに子供や孫に囲まれて、死んでいった。
俺達が命を削り、血を流し涙を飲んだおかげで手に入った平和によって。
“あきらめろ。所詮おまえらは作られた英雄なんだから。今までご苦労だったな。
可哀想になあ、英雄たちよ?”
アキラメロ、アキラメロ、アキラメロアキラメロアキラメロアキラメロアキラメロアキラメロアキラメ
もう何度、その言葉を繰り返したろう?
その度に、何度、心をおられただろう?
まだ、みんな生きているだろうか。一日の仕事に取り掛かり、ふと思う。
俺達は確かに人の領域を声、時が止まった。
でも、刺されれば、打たれれば、死ぬ。ただ不老なのであって、不死ではないのだ。
だから、死んだものもいるかもしれない。
「うらやましいな。」つぶやいてみた。馬がぶひんと答えた。