英雄
―英雄は還らない
ただ我らの胸で生き続ける―
そうやって都合よく作られた異常な程綺麗な石碑。
その前に立ち尽くす少年少女8人。
ある者は泣き、ある者は地面に膝をつく。ある者は憤り土を蹴る。
またある者はただ立ち尽くし、背を向け座り込む者もいれば、受け止められず笑う者もいる。
双子の男女が、一番先頭に立っていた。同時に口を開く。
「「行こう。」」視線が集まる。
「待ち受ける未来が、たとえどんなに悲しくても」
「私たちは生きなきゃいけない」
「生きて、私たちが消えたこの世界の行方を届ける」
「それが、私達が生きた証し。光多く照らす所では影が強まるのもまた然り」
「私達がいたことで誰かが笑顔になるのなら。」
「無限の中から、一人でも救えたとしたのなら。」
「「私たちは十分、英雄じゃないか?」」
一人、また一人と立ち上がる。
「思い出そう、日々を。共に歌ったあの時をまた、選ぼう。」
「誇ろう。ひと時でも私たちがこの空の下に集い、生きたことを。」
「「私達が消えることで、平和が訪れるのなら、何と安いものだろう。」」
「「「「全ては、愛する人と国の為に。」」」」
「「「「全ては、未来を託す子供達の為に。」」」」
いつも通りの言葉を唱え、英雄達は一人ずつ、去ってゆく。
重すぎる歯車を背負った子供達を見送る影はなかった。
どこまでも、どこまでも続く地平線に遠く響く、英雄達の唄。
ああ、十字の炎と弔いの足音が紅い大地に広がってゆく。